中国のミネラルウォーター最大手の「農夫山泉(Nongfu Spring)」は、その包装に「日本的な要素が含まれる」と批判され、青天の霹靂のようなボイコットブームの渦中に立たされた。
そうした、ほとんどネット暴力ともいえる圧力にさらされ、スーパーの商品棚から一斉に撤去された「農夫山泉(Nongfu Spring)」は、このほど実に「中国風」な新包装の商品を発売した。
そもそも「農夫山泉」の商品の包装に「日本的な要素が含まれる」などの理由でバッシングしたのは、一部の小粉紅(中共の愛国主義者)たちである。
それらは「ペットボトルのラベルが、浅草寺の五重塔に似ている」「山の絵が、富士山みたいだ」など、どう見ても理不尽な「言いがかり」であった。
しかし、経済が極度に低迷し、どこかに不満のはけ口を求める中国のネット世論は、日本バッシングにかこつけて(中国の)大手企業である「農夫山泉」を叩きに叩いた。
こうした異様な光景について、一部のアナリストは「『農夫山泉』が受けた一連の災難とナショナリズムの高まりは、中国の経済悪化と関係している。これは今後、国進民退(こくしんみんたい)の政策を、より一層進めることになる」と分析する。
「国進民退」とは、中国において2000年代よりみられる「国有経済の増強と民有経済の縮小」という現象を指す。
中国国内では、政府当局による政策の恩恵が国有企業に集中する「国進民退」の傾向が2022年から顕在化してきている。
米サウスカロライナ大学エイケンビジネススクールの謝田教授は、次のように指摘した。
「個人所有企業である『農夫山泉』が(ネット民から)ボイコットされている時、中共が、その動きを止めなかったのは明らかだ。中共はいま『国進民退』の政策のもとで、私人企業を弾圧している」
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(3月20日付)は「中国経済の成長の鈍化につれて、中共政府が、ナショナリズムを重視する傾向は強まるだろう」と予測する記事を掲載している。
また、中華経済研究院の王国臣助理研究員も「(中国において)愛国民主主義の高まりが引き起こす『事件』は、今後さらに増えていくと思う」と同様の見解を示している。
「農夫山泉」の商品は、国宴飲料(国家レベルの宴会の飲み物)にも指定されている。そのため「農夫山泉」の創業者である鍾睒睒氏は、中国一の富豪になっている。
それでも、これまでの「農夫山泉」は、中共の背景が全くない個人所有企業であった。「それこそが、このたび弾圧を受けることになった目に見えない理由ではないか」と、謝田教授はいう。
謝氏はまた「経済難に直面するなかでの、中共による個人資本への弾圧は、中共内部の闘争も絡んでいるだろう」と分析した。
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