「またも社会報復か」 青信号で横断中の歩行者へ、猛スピードで突っ込む車=中国 湖南

2024/03/13
更新: 2024/03/13

今月8日午前、湖南省長沙市で、女(41歳)が運転する乗用車が赤信号を無視して、横断歩道をわたっていた歩行者へ猛スピードで突っ込む事件が起きた。

車は、全く減速しないノーブレーキ状態。歩行者側の信号は、もちろん青だった。運転者の過失による事故ではなく、歩行者を跳ねることも分かっていて意図的に突っ込んだとしか見えない。

横断歩道へ突っ込む「暴走車」

この事件について、当局が情報封鎖に乗り出しているため、動画はまもなく削除された。中国メディアによるニュースも報じられていないため、具体的な死傷者数や、運転していた女の動機も不明である。

ただし、複数の人を跳ねた後、この女には全く反省や後悔の色が見えず、支離滅裂な言動で、反抗的な態度を示していたことから、何らかの怨恨があって「社会報復を行った」と見られている。

海外SNSに流出した動画のなかでは、横断歩道を渡る学生の集団があった。他の車は横断歩道前で停車して待機していたが、画面の右側からやってくる白い自動車だけはスピードを全く落とさずに、猛スピードのまま横断中の学生たちへ突っ込んでいった。

別の動画では、停車した車の中から女性が現れ、女性は交通警察に向かって興奮した様子で、「私は脳をコントロールされている」などと叫んでいる。

現場にいた別の女性市民は、車を運転していた女に対し「あんた、わざとだろう。社会報復だろう。あんただって母親だろう。なぜ子供たちを轢くのか。何か恨みがあるなら、その人を狙ってよ」などと糾弾する様子も映っている。

現場の動画を見る限りでは、少なくとも学生2人が車にはねられた模様。1人は、車に引きずられて、かなり遠くまで運ばれた。もう1人は激しく衝突されて地面に倒れ込んだ。路上には大量の血痕が残されていた。

その後、2人の容態は不明だが、映像からして相当な重傷であることは間違いない。長沙市公安局は「2人は治療中で、目下のところ生命の危険はない」と発表している。しかし、それがどこまで本当であるか。「死亡」とはしていないものの、当局の発表である以上、まだ予断は許されない。

(8日午前、湖南省長沙市で、女が運転する乗用車が赤信号を無視して、横断歩道で道路横断中の歩行者へ猛スピードで突っ込む事件が起きた)

関連動画は削除され、検閲が始まった

事件当日の午後、事件を知る現地の情報筋がエポックタイムスに語ったところによると「車を運転していた女性の夫は、退役軍人事務局の官僚で、夫婦の間にトラブルがあった」という。

いっぽう、ネット上では「車を運転していた女性の夫は『中国国家煙草専売局』の役人であり、女性が夫の勤務先で夫の浮気について告発した。ところが、他の役人たちが夫をかばったため、女性は頭にきて、酒を飲んだ後にこのような社会報復を実行するに至った」との説が広く語られている。

そうした巷説の真偽を確認することはできないが、いずれにしても女は「車を暴走させて無差別に人を殺傷する」という、典型的な「社会報復」を行ったようだ。

一部の関係者によると、女は車から降りた後「私は社会に報復しようとした」と口にしていたという。

「国家煙草専売局のお偉いさんの妻が、悪意もって学生を轢いた」。この関連の動画は、一旦は中国SNSでも拡散され、注目を集めていた。ところが、間もなく関連動画は削除され、検閲が始まった模様だ。

「動画削除だって。早過ぎる。さっきまで見られたのに」「なぜ当局は、情報封鎖をするのか」と、当局の情報統制を非難する声がネット民から上がる。

その一方で、犯人に向かって「なぜ社会に復讐するのか」と問う声も少なくない。

そうした世論からか「個人的な恨みがあるのなら、あなたに苦しみをもたらした人に復讐すればいい」「一般市民を巻き込むな」「(公権力に立ち向かった)楊佳や張扣扣を見習え」といったコメントが圧倒的に多かった。

長沙市公安当局が公表した通報。「事故」とされている。

地元警察の公式発表は「事故あつかい」

長沙市公安当局が公表した「警情通報」では、これは事件ではなく「事故」とされている。

この「警情通報」によると、信号無視した車が跳ねたのは「横断歩道を渡っていた歩行者2名。2名とも病院で手当てを受け、命に別状はない。容疑者はすでに逮捕された。事故原因については調査中」というように、ただの「交通事故」であるかのように淡々と述べられている。

この公安当局の発表をめぐって、ネット上では「はねられたのが学生であったという事実を、意図的に隠している」「これは社会報復事件だ。事故ではないぞ」といった非難が殺到している。

今月1日に山東省德州市の小学校の校門近くで起きた、同様の事件に関する当局の「通報」のなかでも、轢かれたのが「小学生」であることが言及されていなかった。

この事件をめぐっては、目撃者によると「小学校の生徒約40人が車に轢かれ、このうち少なくとも7人の生徒がその場で死亡していた。容疑者の運転手も死亡した」という。

中国では、これまでにも世論が注目するような「社会報復事件」などの凶悪事件が起きるたび、これを「個別のケース」や「特定の人に対する恨みやトラブル」というふうに、動機の背景にある社会問題や政府当局の関与を意図的に隠し、事件による社会への影響を希薄化しようとしてきた。

今回の長沙市の事例も、公安当局の発表を見る限り、努めて「平静」を装うように、通常の交通事故扱いしているとも言える。

邪気が充満する現代の中国社会

中国語で、人間の健康を損ねて病気にしたり、世の中の悪い気風を助長する邪気を「戻気(リーチー、れいき)」という。この「戻気」すなわち邪気が充満しているのが、中国共産党が統治する、現代の中国社会である。

今年に入ってからも、中国では社会報復を狙ったとみられる無差別殺傷事件が相次いでいる。

旧正月の初日(2024年2月10日)から、山東省日照市莒県の洛河鎮にある「宅科村」で、銃を使ったとみられる大規模な殺人事件が起きた。この事件では、21人が死亡したとされている。

3月1日、山東省德州市にある小学校の校門近くで、自動車が猛スピードで生徒の群れに突っ込む事件が起きた。目撃者によると「約40人が車に轢かれ、このうち少なくとも7人の生徒がその場で死亡していた。容疑者の運転手も死亡した」という。

なかには、何の罪もない一般市民を巻き添えにするのではなく、政府を狙った報復事件も起きている。

「両会」期間中の3月7日、江蘇省の地方政府施設が爆破され、同日、江蘇省の公安局の建物でも大規模な火災が発生した。この爆破については「袁剣虹」と名乗る人物による「犯行声明」がネットに出回っている。

この「声明」には、自らの氏名と身分証番号を添えた上で「政府を爆破したのは私だ。私の工場や自宅を奪った返汚職官僚を処罰してほしい。自首するつもりだ」と書かれていた。

「政府を爆破した男」は、ネット上では「勇者」扱いされている。いっぽう、子供たちを狙い、一般市民を巻き添えにする凶悪な社会報復事件を起こした者たちは、「人間のクズ」と呼ばれ、唾棄されている。

江蘇省の政府爆破事件をめぐっては、次のようなコメントが寄せられて注目された。

「今後は、陳情などしなくていい。どうせ陳情しても解決できないばかりか、当局から迫害されるだけだ。今後は、直接政府庁舎を爆破すればいい。おそらくこれが、ゴロツキ政府(中共政府)が唯一理解できる『ことば』だからだ」

(3月7日、江蘇省張家港市の政府庁舎で爆発が起きた)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。
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