G20外相会合 提携して国際的な緊張に対応 グローバル・ガバナンス改革を推進

2024/02/23
更新: 2024/02/23

2月21日及び22日、ブラジル・リオデジャネイロにてG20外相会合が開催された。上川陽子外務大臣が出席した。今回の会合では、セッション1として「現在の国際的な緊張への対処におけるG20の役割」が、セッション2として「グローバル・ガバナンス改革」をテーマとし、議論が行われた。

現在の国際的な緊張への対処におけるG20の役割

上川大臣は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化、SDGsの理念や人間の尊厳を守る世界の実現に取り組む日本の姿勢を強調した。G7広島サミットやG20ニューデリー首脳宣言での国際協調の重要性、主権や領土一体性の尊重を訴え、引き続き、本年のG20議長国ブラジルをはじめ国際社会の幅広いパートナー と協力していくと述べた。日本が国際社会と連携し、食料やエネルギーの安全保障を含む国際情勢に対応する意向を示した。

大臣は、一日も早くウクライナにおける公正かつ永続的な平和を実現する必要があると強調した。さらに、日・ウクライナ経済復興推進会議を通じてウクライナの復旧・復興支援に関する協力文書に署名し、女性や子供たちの視点を取り入れた復興計画の重要性を述べた。このような取り組みを通じて、国際的議論に貢献していく意向を示した。

そして、中東情勢の緊迫化に伴う世界経済への悪影響について指摘し、ハマスによるテロ攻撃を断固非難すると共に、ガザ地区の人道状況に深刻な懸念を表明した。日本は人道支援活動が可能な環境の確保、人質の解放へと繋がる人道的停戦の速やかな実現、そして持続可能な停戦の実現を重視し、全ての当事者に国際人道法を遵守するよう呼びかけ、外交努力を続けていく方針である。また、ガザ情勢の悪化以降、日本は3千200万ドル規模の新たな緊急無償資金協力も検討していると説明した。

フーシ派による紅海・アデン湾での船舶攻撃を非難し、航行の自由の確保に必要な対応を行うことも述べた。

G20メンバーもガザの人道情勢に対する懸念を表明し、「二国家解決」の重要性を強調した。

グローバル・ガバナンス改革

参加者らは安保理を含む国連改革、多国間開発金融機関(MDBs)改革、世界貿易機関(WTO)改革等について議論した。

上川大臣は、現在国際社会が気候変動、食料、保健などの地球規模の課題に直面しており、これらの問題に効果的に対応するためにはグローバル・ガバナンス改革が急務であると述べ、ブラジルがG20議長国としてこの問題を優先課題に掲げていることに支持を示した。また、改革に取り組む際は、「人間の尊厳」に立ち返り、人間中心の国際協力を推進する必要があると強調した。

国連改革について、上川大臣は国連が多国間主義の中核であることには合意するが、国連設立から78年が経過し、現代の国際社会の課題に対応するためにはその機能強化が不可欠であると指摘した。国連総会の機能強化に関して、日本も引き続き貢献していく意向を示した。

さらに、安全保障理事会の改革が急務であり、その構成が現在の国際社会の現実を反映するためには、常任・非常任理事国の拡大が必要であると強調した。未来サミットや国連創設80周年といった重要なマイルストーンに向けて、具体的な行動を起こすべきであると述べた。

上川大臣は、途上国への融資余力を拡大するためには、既存の資本を活用し、民間資金を動員することが不可欠であると述べた。また、低所得国を支援するために国際開発協会(IDA)やアジア開発基金(ADF)の増資を成功させるべきだと指摘した。

さらに、途上国が直面する債務問題に対処することが急務であり、債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)を超えた共通枠組みによる迅速な債務再編が不可欠であると指摘した。国際的なルールやスタンダードを守り、透明かつ公正な開発金融が重要であるとして、G20メンバーを含むすべての債権国と債務国がこの認識を共有する必要があると強調した。

大臣から、ルールに基づく自由で公正な経済秩序 堅持するためには、WTO改革による多角的貿易体制の強化が不可欠であり、来週の第13回WTO閣僚会議で成果を出すことが重要であると強調した。 2024年までの完全かつ良く機能するWTOの紛争解決機能の回復について具体的な成果を出したいと表明した。また、途上国の開発課題に配慮しつつ、先進国・途上国双方に利益のある電商モラトリアムの延長、過剰漁獲の規律を定める漁業補助金協定の交渉妥結等も重要であり、G20で連携し、政治的モメンタムを与えたいという意見を示した。

AIについて、AIの発展は生産性の向上などの機会をもたらす一方、偽情報の拡散といったリスクも 生じており、国際社会としての対応が必要となっていると指摘した。 上川大臣は、この観点から、日本は昨年G7議長国としてAIのガバナンスに 関する「広島AIプロセス」を立ち上げ、国際社会のルール作りを主導していると説明した。こうした経験も踏まえ、安全、安心で、信頼できるAIの実現に向け、 G20での議論にも貢献していきたいと述べた。

 

 

 

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。