考古学者がモロッコの海岸で、保存状態の良い85個の古代人の足跡を偶然に発見しました。この足跡は約9万年前にできたものとされています。アフリカ北部と地中海南部では最古の人類の足跡となっており、世界的にも珍しいものです。
ウェブサイト「ライブ・サイエンス」によると、南ブルターニュ大学(フランス)のムウセフ・セドラティ准教授(沿岸力学・地形学)が率いる多国籍研究チームが、2022年にモロッコのララシュの海岸で合計85個もの足跡を発見しました。
セドラティ氏はチームメンバーと巨石の研究のために海岸を探索していた際、最初の足跡を発見しました。セドラティ氏は最初はそれが足跡だとは思わなかったそうです。その後、多くの足跡を見つけました。
この海岸は、北アフリカと地中海南部では、このような古代人類の足跡がある唯一の場所です。研究者らが分析した結果、少なくとも5人の初期の現生人類のグループが、合計85個の足跡を残していました。
セドラティ氏は説明しました。
「私たちは現場で足跡の長さと深さを測定しました。 足の圧力と足跡の大きさから、おおよその年齢を割り出すことができました。これらの足跡を残したのは子供、青年、大人でした」
研究者たちは、光刺激ルミネッセンスという、砂の主要成分である石英微粒の年代を基にこれらの足跡の歴史を判断する技術で調査しました。
その結果、約9万年前に多くの世代にわたるホモ・サピエンスがこのビーチを歩き、これらの足跡を作り出したことが明らかになりました。
研究者たちは、これらの足跡がよく保存されているのは、ビーチの地形や潮水がそのまま流れ込むことができるなど、さまざまな要因によるものだとしています。
報告書には「これらの足跡が現代まで保存されていた理由は、特定の自然条件が組み合わさった結果であり、まず、足跡が残された場所は、荒れた天気や強い波の影響を受けにくい海岸の一部だった」
「足跡が残された後、海水が蒸発して塩の層が形成され、これが足跡を固めて保存する過程を始めた。さらに、この場所の地層は、海から陸にかけての微妙な傾斜と、異なる種類の砂層が交互に積み重なる特徴を持っていた。この砂は主に石英から成り、生物由来の粒子も含まれており、石灰質やケイ素のセメントで部分的に固められていた」とされている。
しかし、氷河期の人々がビーチで何をしていたのか、まだ不明で、将来、さらなる分析が行われれば、謎が解明されるかもしれません。ただし、「岩だらけの海岸の崩壊が進行しており、その上に保存されている足跡も含めて、最終的には崩壊する可能性がある」ため、チームは迅速に行動する必要があると報告書には書かれています。
「私たちは、このグループの人たちがそこで何をしていたのか、彼らの歴史をすべて知りたいのです」とセドラティ氏は語りました。
この研究結果は、1月23日付の「Scientific Reports」に掲載されました。
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