中共愛国集団に攻撃され「反共戦士」になった英国人ピアニスト=ロンドン

2024/01/30
更新: 2024/01/30

今月19日に、英ロンドンにあるセント・パンクラス駅で起きたある「騒動」は、ここ最近、世界的な話題になっている。

その騒動は、駅のストリートピアノでの演奏を聴いていた中国人の集団が、突然「撮影するな!」と騒ぎ出したことから始まる。英国人のピアニストが「ここは中国ではない。自由な英国だ」と言って彼らの要求を拒むと、中国人たちは共産党仕込みの「凶暴性」を露にしてきたため、ピアニストが警察を呼ぶ事態に至った、というものである。

ピアニストにとっては、とんだ災難であった。しかし騒動から1週間後、見事な「反共戦士」に変身して戻ってきたのは、その時のピアニストであるブレンダン・カバナー(Brendan Kavanagh)氏であった。

くまのプーさん」を手に再登場

「くまのプーさん」の写真とぬいぐるみを手に、この場所に戻ってきたカバナー氏は、中国共産党の全体主義を糾弾し、香港と台湾への支持を表明する「反・中共スピーチ」を行った。

「言論の自由の勝利だ」

「数日前までは、くまのプーさんが中国で誰を暗喩しているのか、私は知らなかった。中国で、それが禁じられていることに驚いた」

カバナー氏は、その現場で撮った写真を自身のSNSに添えて「今日は、ピアノの周囲に中国共産党はいないよ」「そばにあるピアノは、自由の象徴になっている」と書いた。

(カバナー氏によるスピーチ。中国共産党の全体主義を糾弾し、香港と台湾への支持を表明した)

これに先立ち、カバナー氏は「中共に反撃するために、8964とプリントされた『くまのプーさん』のTシャツを注文するよ」とSNSで明かしていた。

カバナー氏の変身ぶりをめぐって、ネット上では「小粉紅たちは、ただのピアニストを、わざわざ反共戦士にしてしまった」「ついに反共神獣を持ち出したか。お見事!」といった称賛が殺到している。

「8964」とは、1989年6月4日の六四天安門事件を暗示するもので、中共にとっては見たくもない禁忌の数字である。また、コメントにあった「反共神獣」は、習近平を揶揄するあだ名の「くまのプーさん」を指すとみられる。

一躍「反・中共の基地」になったピアノ

騒動の際に、カバナー氏が弾いていたピアノは英ポップスの巨匠エルトン・ジョン氏が寄贈したもので、昨年12月には女性歌手アリシア・キーズさんも演奏した。

騒動を受けてから、例のストリートピアノは一時「メンテナンス」を理由に使用禁止となっていた。しかし解禁された今、このピアノはたちまち有名な「反・中共の基地」となっている。

現場には、自分で演奏や歌唱をするほか、わざわざ中共への抗議スローガンを掲げにやってくる華人も少なくない。

そして多くの人が、この「自由の象徴」であるピアノで、香港民主化デモのテーマソング「香港に栄光あれ願栄光帰香港)」を演奏している。

2024年1月24日、セント・パンクラス駅で、反中共スローガン「END CCP」を掲げる華人男性(SNSより)

(ピアノにかけられた「時代革命」は、香港民主化デモで用いられたスローガン)

(「64」の入ったTシャツに「くまのプーさん」など、反中共グッズを持った市民がピアノを弾く様子)

(香港民主化デモのテーマソング「香港に栄光あれ(願栄光帰香港)」を演奏する人)

「動画を消せ」騒動の顛末

話題のピアニスト、ブレンダン・カバナー氏は、英国のほか世界各地のストリートピアノで演奏を披露し、その様子をユーチューブ(YouTube)で配信することを生業としている。

今月19日、カバナー氏は、セント・パンクラス駅構内にある公共ピアノで即興演奏をしてオンラインのライブ配信をしていた。そこに突然現れた、身なりの派手な中国人一行が、撮影の静止を求めた。その要求に対し、カバナー氏が拒むと、中国人たちは興奮して激しい口調となり、ついに警察が介入する事態となった。

中国人の一行は、首からは血の色のような深紅のスカーフを下げ、手には中国の国旗をもっている。そろえた身なりからして「何かの同じ目的」のために、ここに来ていたらしい。

はじめ一行は、ピアノ演奏を堪能していたように見えた。ところが、演奏が終わるとカバナー氏に話しかけ「撮影をやめてほしい。映すことは肖像権侵害になる」として撮影の中止と、映像の削除を要求したのだ。カバナー氏は、これを拒否した。

双方は論争となった。カバナー氏は「英国は自由の国であり、公共の場での撮影や演技は自由だ」「ここは英国だ。共産主義中国ではない」とした上で、「カメラに映りたくなければ、あなたたちが立ち去るべきだ」と主張した。

これに対し、中国人男性は「中国の法律では、無断で撮影することは違法だ。このなかには、非常に安全を優先すべき人物がいる」と強弁した。

また、別の中国人男性は、中国国旗を指すカバナー氏に対し「女性に触るな」「聞き返すな」「(中国について)学べ」「差別するな」などと、実に身勝手で粗暴な発言をしていた。

駆けつけた英ロンドン警察は「公共スペースでの撮影は可能である」と判断した。英国の国内法によれば、公共の空間で映り込んだ対象を商業目的に使用しなければ、本人の許可を得る必要はない。

(ガバナー氏に対し、粗暴な言葉で映像の削除を要求する「赤い中国人の一行」)

その一部始終を捉えたカバナー氏の動画は、ネットで大注目され、800万回以上再生されている。フォロワー数も激増した。

いっぽう、ここで「赤い中国人の一行」がみせた粗暴な行動は、多くの華人ネットユーザーの怒りを引き起こした。

また、ネットユーザーによる調査により、一行のメンバーのなかには、駐英中国(中共)大使館のイベントに頻繁に出入する人物、孔子学院に所属する人物、統一戦線の工作員など、中共の党組織に深く関係する人間が多くふくまれていることが判明している。

ところで、この中国人一行が、なぜこれほど激しく映像の削除にこだわったのか。その理由について、ネット上に流れている以下のような「有力な推測」がある。

「この一行は、セント・パンクラス駅で『春晩』のための年越し祝賀シーンを、事前に、秘密裏に撮影していたのではないか。事前に録画していたことがバレないよう、秘密保持を求められているのだろう。しかしカバナー氏のライブ配信に、たまたま映ってしまった。そのことで、彼らは大騒ぎしたのだ」

「春晩(春節連歓晩会)」とは、旧暦の大晦日から元旦にかけて行われる中国中央電視台(CCTV)の番組である。中国版の「NHK紅白歌合戦」と呼ばれるものだが、その内容や演出は、多分に中国共産党を美化し、宣伝する意図があからさまである。

つまり大晦日当日の「ライブ配信」とされていた「春晩」の祝賀シーンについて、本当は「事前収録」であったことが、バレそうになったからだというのだ。

これは確かに「有力な推測」であり、その可能性は否定できない。

旧暦の大晦日といえば、今年は2月9日になる。1月19日の時点で、派手な赤いスカーフに国旗をもっていた中国人サクラの一行が「2月9日夜のロンドンからの中継」にも同じ服装で映っていたら、CCTVによる嘘とヤラセが一発でバレてしまうことになる。

英国で中国人が見せた騒動の裏には、そんな「春晩」にまつわる中共の小細工があった(のかもしれない)。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。