台湾総統選の民進党勝利 中共の選挙介入が裏目に

2024/01/14
更新: 2024/01/14

台湾の民進党頼清徳(らい せいとく)氏と蕭美琴(しょう びきん)氏が台湾の第16代総統と副総統に就任し、民進党は3期連続で政権を担うことになった。米中関係の悪化と台湾海峡情勢の緊迫化を背景に、台湾の選挙は国際社会から大きな注目を集めた。選挙結果が台湾の内政、両岸、米中関係、米台関係に与える影響について、2人の専門家が見解を述べる。

中共の選挙介入が裏目に

シドニー工科大学の副教授である馮崇義氏は1月13日に、選挙結果は台湾情勢に注目していた人々に安堵を与えたとし「これは台湾人民の賢明な選択だ」と述べた。

選挙結果は、中国共産党が最も望まないものだった。中国共産党(中共)の選挙介入の手段はエスカレートし、偽情報の流布、台湾空域で軍用機の飛行、政治家への賄賂供与など軍事的威嚇や世論操作などの常套手段に加え、今回は初めて気球も使われ、総統選投票の24時間前まで、中共の気球5機が台湾の防空識別圏に進入した。

元中国メディア関係者の蔡慎坤氏は、今回の中共の台湾総統選への介入は以前より深刻だったと指摘した。

元台湾総統の馬英九氏は、優勢な民進党に対抗するため、反対候補の一本化を図ったが、協議は決裂した。8日、ドイツメディアの取材を受けた馬英九氏は、台湾と中国の関係を意味する「両岸関係」についてはと前置きしながらも、「信用しなければならない」という発言をした。この事は国際社会と台湾の有権者に衝撃を与え、国民党の侯友宜(こう ゆうぎ)候補でさえ認めなかった。

蔡慎坤氏によれば、 中共が支持する人物は、必ず負ける。中共に好意的な政党や要人は、ほとんどの場合、有権者に捨てられると述べた。

馮崇義氏は、従来の台湾選挙で中共の動きが裏目に出ており、中共の選択肢は限られていたと分析。また大多数の台湾人は共産党政権の台湾支配を受け入れたくないのだが、中共は台湾に対する全面的な威嚇と統一戦線の継続を諦めないことに注意しなければならないと述べた。

台湾は中共の脅迫に直面

台湾選挙の前夜、ブリンケン米国務長官は1月12日午前、国務省で中共の外交を担う中央対外連絡部の劉建超部長と会談した。ワシントンは最近、中共に対し、台湾選挙を台湾海峡を不安定化させる口実に使わないよう警告した。

馮崇義氏によると、現在、米国はアジア太平洋地域で新たな戦場を開きたくないと考えている。

「台湾は現状維持の基本路線を歩むだろう。次期副総統の蕭美琴氏は最近まで駐米代表を務めており、米国との深い交流があるので、外交上の大きな失敗はない」と述べた。

同氏は世界的な第二次冷戦を視野に台湾選挙と台湾海峡の情勢を見なければならないと述べた。第二次冷戦とは、米国が主導する民主主義陣営と中国が主導する権威主義陣営との対立を指し、台湾は民主主義陣営に属し、中共の権威主義体制の拡大を封じ込める最前線ということになる。

外交と台湾国民の生活の両面から見れば、頼清徳総統の方針に問題はないが、難しいのは中共の挑戦への対処だ。

「習近平が台湾海峡で戦争を始めるという危機に対処する能力はまだ試されていない。現時点では、政治理念の視点から、民主主義世界が台湾を支持できない理由はない」

馮崇義氏は、本当に戦争が起きた場合は、米国がどこまで支援するかが重要だと説明した。 米国も大統領選挙を控えており、国内には孤立主義的な考えが蔓延している。もし台湾海峡で本当に戦争が起きたり、中共が台湾に経済封鎖を行ったりすれば、台湾の指導者たちは、台湾が安全を維持するのに十分な国際的支援を受けられるよう、政治的な知恵を絞る必要がある。

蔡慎坤氏は、今回の選挙結果は両岸関係に重大な影響を与え、台湾の「脱中国化」のペースを加速させると指摘している。これは米中関係や米台関係にも影響を与える。民進党の再選を前に、中共は戦争を起こすか起こさないか、いつ、どのように起こすかは観察すべきところだ。

同氏は、ロシア・ウクライナ戦争が膠着状態で、台湾への武力介入のコストと代償ははるかに高くなっている。中共は台湾に困らせ続ける選択をする可能性が高くなり、安易に武力を行使することはないと考えている。

民進党に若者の支持獲得を期待

選挙前、多くの若者は台湾民衆党の柯文哲(か ぶんてつ)候補への支持を表明したため、民進党と国民党は一部の票を失った。 蔡慎坤氏は、柯文哲候補は今回の選挙でダークホースとなったが、また大統領職に挑戦する可能性があり、今回の初期の第三勢力のように急速に消えるということはないと述べた。

馮崇義氏によると、民進党が政権を握って以来、若者は生活上の困難に直面している。住宅を購入する余裕もなく、賃金も住宅価格上昇に追いつかず、民進党にはこの問題を解決する有効な手段がないため、若者は民進党に不満を抱き、国民党にも希望を抱かず、「新人」の柯文哲氏に投票しているのだという。

馮崇義氏は「頼萧ペア」が政権を握った後、こうした若者の不満を解決できることを期待している。

「頼清徳氏は一般市民出身で、鉱夫の息子だから、民生問題について彼自身が体験し、いくつかの考えを持っているはずだ。台湾の若者の就職問題、住宅価格問題、企業の機会(機会とは、自社にとってプラスとなる企業外部の環境要因)問題、産業発展問題を解決することで、特に台湾の若者から民進党へのさらなる支持を得ることを望んでいる」

今回の台湾大統領選は民主主義国家の参考に

馮氏は台湾の政党間の対立において、国益よりも党利党略を優先し、民主政治自体の質に影響を与え、民主政治への信頼を失わせた事は、国際社会に対する警鐘でもあるとし、また台湾が中共の選挙介入の意図を打ち破ったことは、他の民主国家の選挙にとって、大きな励ましだとも述べた。

馮氏は台湾の選挙が秩序よく成功裏に終了したこと自体が、世界各国の次の民主選挙の参考になると考えている。

国際NGO団体フリーダム・ハウスが発表した2023年の「国別自由度ランキング」では、台湾は100点満点中94点で、アジアでは日本に次いで第2位だった。

蔡慎坤氏は、台湾の民主政治は歴史が浅いが、多くの古い民主主義国家から学び、研究する価値があると述べた。 同氏は台湾の総選挙の長所をいくつか挙げている。

1.選挙権年齢を20歳以上とすること。20歳未満は善悪の区別がつかず、政治に関する理性的な知識がさらに欠如しており、感情に支配されやすいからだ。

 2.台湾の総選挙は現在も紙投票であり、投票日に身分証明書を持って投票所に行かなければ投票できない。米国はプライバシーを理由に身分証明書を確認せず、郵送投票を推し進める。選挙には抜け穴が多い。

 3.台湾総統選の結果は、翌日以降にずれ込むことなく、投票日の夜に判明すること。

寧海中
羅雅