中国で感染拡大、4年前の悪夢再来か 米議員「中共発表を鵜呑みにするな」

2023/12/01
更新: 2023/12/01

中国本土で再び感染症が蔓延し、4年前の武漢肺炎を彷彿とさせる状況が続くなか、世界各国は注意の眼差しを向けている。中国共産党が再び隠蔽を図っているとの情報もあり、米国の議員は情報を「鵜呑みにすべきでない」と警告した。こうしたなか、出入国管理庁などは大紀元の取材に対し、検疫で特段の対応をしていないと語った。

米中で感染拡大

悲惨なコロナ禍から3年が経った今、中国国内では再び感染症が蔓延している。北京市や天津市の児童病院(小児科)には発熱した児童が昼夜を問わずに次々と来院し、中国共産党の衛生健康委員会は、感染症はインフルエンザウイルスやマイコプラズマアデノウイルスなどの「既知の病原体」が原因だと主張している。

米国でも呼吸器疾患をもたらすウイルスの流行が西部と南部にみられている。「小児肺炎のアウトブレイク」を経験したオハイオ州ウォーレン郡は今週、病原体はアデノウイルス、肺炎球菌、マイコプラズマ肺炎菌だと発表した。

米国政府のデータによると、全国の小児病院の病床の約4分の3が使用中であり、このような状況は2022年12月中旬以来見られない状況だった。

こうしたなか、米議員は中国共産党が発表した情報の信頼性に疑念を投げかけている。「恐怖の新型コロナ流行の初期段階を思い出させる」(キャシー・マクモリス・ロジャース下院議員)、「世界に混乱を引き起こすことをしないよう、圧力をかけてほしい」(モーガン・グリフィス下院議員)など、11月30日の衛生監視委員会では厳しい意見が飛び交った。

台湾、水際対策を強化

中国での感染拡大を受けて、台湾の疾病管理センターは空港と港湾での水際対策を強化している。衛生当局によると、11月26日から台北、桃園、台中、高雄の4つの国際空港で、中国からの入国者に対して自発的な検査サービスを提供し始めた。中国本土への旅行者に対し、衛生環境に注意を払い、マスクを着用し、人混みを避けるよう呼びかけた。

30日には、高齢者や子ども、免疫力の低い人は渡航を控えるよう呼びかけた。

タイの公衆衛生省も「警戒を強化している」と発表し、インドの保健機関は「高い注意を払い、呼吸器系疾患に対する国の準備措置を積極的に見直している」とした。

世界保健機関(WHO)は11月22日、中国北部で子供の「肺炎」のクラスターが発生していると発表し、中国共産党当局に疫学的、臨床的な検査結果を提出するよう要請した。いっぽう、中共当局との協議を経て「現段階の報告では既知の病原体による肺炎とみられ、中国への渡航制限は不要」との判断を示した。

中共、隠蔽再び

中国共産党上層部に近い楊青(仮名)氏は11月26日、大紀元の取材に対し、習近平が感染拡大に関する報道を抑え込むよう指示していたと語った。中共当局がいわゆる「マイコプラズマ肺炎」や「インフルエンザ」といった感染症について、外国メディアの取材を禁止しているという。

習近平は11月に米中首脳会談で「友好ムード」を演出し、複数の国に対するビザ免除を始めたばかり。「習近平は、この問題が大々的に報道されることによって、自身の外遊が失敗したとの印象を持たれるのを防ぐ意図があるのではないか」と楊青氏は述べた。

また、新型コロナウイルス(中共ウイルス)の変異株が流行しているとの報道が出ることによって、外国人の訪問者数が減少することも習近平にとっての懸念事項だという。

楊青氏によれば、中国メディアは専門家を使って情報操作する以外に、感染症に関する重要な報道を一切行っていない。

咳や発熱、喉の痛みに加え、肺が炎症で覆い尽くされる「白肺(バイフェイ)」といった症状に対し、中国人の間では「中共ウイルス」の再来ではないかと疑う声も上がっている。

「政府が再び隠蔽している」「本当は新型コロナだろう。また呼び名を変えただけだ」との意見や、「新型コロナの時と同じ。中共は外国人を入れて、感染を国外に広める気か」という声もあった。

匿名を条件に新唐人テレビの取材に応じた北京市在住の男性は「役所や企業、学校では感染者が急増している。しかし当局は人々がパニックに陥るのを恐れて、情報を公開していない」と語った。

米国のウイルス学の専門家で、米陸軍研究所のウイルス学科実験室主任も歴任した林暁旭博士は「これは、やはり新型コロナの変異株である可能性が高い」と分析している。

日本政府、状況を注視

中国での感染拡大を受けて、日本政府も状況を注視している。出入国管理庁は1日、大紀元の取材に対して、中国における呼吸器疾患が急増していることを報道等で承知しているとし、水際対策は「内外の感染状況や主要国の水際対策を踏まえながら政府全体で判断していく」と述べた。

厚生労働省は、WHOの資料をもとに、感染の原因は既知のウイルスであるとして、現段階では「検疫では特段の対応をしない」とした。いっぽう、中国に渡航した人に対し、発熱や呼吸器症状等で受診する際には渡航歴を医療従事者に伝えるようSNSを通じて呼びかけた。

冬本番を迎えるなか、日本ではインフルエンザの増加が確認されている。国立感染症研究所によると、11月26日までの1週間で報告された患者数は13万9914人で、今シーズン最多となった。また、23の道県で感染者数が警報レベルを超えた。

在中国日本大使館は11月30日、中国北部で流行する肺炎などを巡り、子どもが感染した場合は重症化する恐れがあるとして、「早急に医療機関を受診するよう勧める」との注意喚起を行った。

中国国内では原因不明の肺炎が発生しているとの情報もあるが、国立感染症研究所は、その旨の公式発表はないと報告している。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。