香港の大学に通う中国本土出身の女子大学生が「扇動」の罪で実刑判決を下され、刑期満了後に行方がわからなくなった。娘の身を案じて香港に渡った母親も帰国後に音信不通となり、注目を集めている。中国当局に拘束された可能性があり、海外在住の香港人は二人の即時釈放を求めて、署名活動を展開している。
音信不通となったのは、香港中文大学で博士課程を履修する曽雨璇(そ・うせん)さん。今年の6月4日、「国殤の柱」が描かれた旗を掲げようと計画したとして、扇動罪で香港警察から6か月の実刑判決を受けた。10月12日に刑期を終えて釈放された。
曽雨璇さんは香港で学業を納めていたにもかかわらず、刑期が満了すると香港政府によって中国本土に強制送還された。深セン到着後、曽雨璇さんと香港の友人たちとの連絡は途絶えた。娘の行方を追って香港に行った曾さんの母親も、10月20日に中国本土に戻った後、外部との連絡を絶った。現在に至るまで、母娘の消息はわかっていない。
10月22日、香港の抗議活動に参加し、台湾に亡命した湯偉雄氏は、ネット上で「曽雨璇の安否を案じる会」を立ち上げ、共同署名運動を開始した。国際社会に対し曽雨璇さんとその家族の安否や状況に注意を払うよう呼びかけ、「言論の自由に罪はない」と強調し、人権を侵害する中国共産党当局と香港政府を非難した。
共同署名の中で、「曽雨璇の安否を案じる会」は、曽雨璇さんの拘束と送還の理由を説明し、彼女と母親の安全に対する「極度の懸念」を表明して、曽雨璇さんの安全と自由に対し世界的に注意を呼びかけた。
声明では、法学博士課程に通う曽雨璇さんは、平和的な方法で自分の意見を表明したかっただけだと強調している。言論の自由はすべての人間の基本的権利であり、政府によって守られ、尊重されるべきものだが、曽雨璇さんは結果として不当な扱いを受けている。
声明文はまた、「中国政府と香港政府による曽雨璇氏への迫害」は基本的人権を侵害するものであると指摘。「曽雨璇の安否を案じる会」は中国共産党と香港当局に対し、「曽雨璇さんをはじめとする人権擁護者への迫害を直ちに停止するよう」要求している。
声明は「自由と正義のために闘う」という言葉で締めくくられ、ネットユーザーに救出作戦への参加を呼びかけた。
情報によると、香港中文大学で法学博士学位を取得するために学んでいた曽雨璇氏は、2023年の元旦にも、前年の7.1警官刺殺事件に関与した梁健輝氏に追悼の意を表したとして逮捕され、その後保釈されている。今年6月4日の前に、曽雨璇さんは再び逮捕された。香港警察は、6月4日に銅鑼湾の架道橋に「国殤の柱」を描いた旗を掲げようとしたとして、彼女を逮捕した。
今月12日、香港メディアの質問に対し、香港安全局は、出入国管理条例に基づき、「刑期を終え釈放された」曽雨璇さんを「香港から送還した」と発表した。
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