火災リスクの軽減のための伐採

間伐は議論の的となっているが、特に山火事の管理において公共および民間の支持を得ている。

米国森林局は、選択的間伐を山火事管理10年計画の重要な要素にしている。

当局は2030年までに数百万エーカー(1エーカー約4047平方メートル)の森林地帯で間伐を実施しようとしている。

「深刻化する山火事の危機に対処するため、米国では合計5千万エーカーの森林で火災リスクを高める可燃物の除去と森林の健康維持・回復策を維持する処理が必要だと推定している」と森林局の広報担当ジョン・ウィン氏は述べた。

そのうち2千万エーカーは国有林と草原で、3千万エーカーはその他の土地だ。

ウィン氏は 「米国本土の4分の1は、深刻な山火事のリスクが中程度から非常に高い状態にある」 と語った。

同氏によれば、一部の研究は、森林火災を緩和する手段として間伐を支持する。

「米国本土の4分の1は、深刻な山火事のリスクが中程度から非常に高い状態にある」 

ジョン・ウィン 森林局の広報担当　

「森林局の調査によると、木々は過密状態によってストレスを受け、しばしば火に依存する種 [1]が消滅し、非常に燃えやすい燃料が蓄積し、大規模な森林火災の文字通りの餌となることが実証されている」

「これは機械的な間伐プロセスが森林の健康に非常に重要である理由だ。一部の密集した木立を間伐することで、野生地域は火災に対抗しやすくなる」

機械的間伐を単独に実施し、または野焼きと組み合わせて実施することで、山火事の進行方向や強度を変え、被害を軽減できるとウィン氏は主張した。

そのような「燃料処理」が「残りの炭素貯蔵の回復力を高めることにより、炭素排出を削減できる手段として」注目を集めている。

「山火事に強い森林では炭素損失のリスクが高くなる」ウィン氏は主張した。

反対側のハンソン氏は、森林火災の緩和に間伐材を活用することについて意見を求められた際、言葉を惜しまなかった。

「山火事は天候、特に高温、乾燥、風の強さの条件によって引き起こされることが圧倒的に多い。現在の科学は、密集した森林の状態が夏の極端な天候に対する緩衝作用を生み出していることを発見している」

「森林の密度が高いと、太陽光線を直接に受ける林冠の被覆率が高くなるため、涼しい日陰が多くなる。そして樹木の密度が高くなることで、火災時に炎をもたらす突風に対する防風林が形成される」

同氏は、間伐することによってその緩衝作用が損なわれると述べた。

間伐は「より高温で、より乾燥し、より風の強い状態を作り出し、炎をより早く、しばしばより激しく燃え広がらせる」「これらの結論は、数十の科学的情報源と数百の科学者によって支持されている」と博士は述べた。

長引く干ばつと、頻繁に吹き続ける強風などの異常気象が、米国の森では完璧に火災の原因になっている。

International Journal of Wildland Fireに掲載された研究によると、米国西部の州の山火事は1980年以来、さらに規模が大きくなり、さらに高温化したことがわかっている。

間伐は「より高温で、より乾燥し、より風の強い状態を作り出し、炎をより早く、しばしばより激しく燃え広がらせる」

 

チャド・ハンソン　生態学者、ジョン・ミューア・プロジェクトの共同設立者

ハンソン氏は、これらの課題に対抗するためには、むしろ木を増やす必要があると述べている。

間伐を支持する人は、数十年にわたる干ばつが森林を乾燥させたため、より多くの木を取り除く必要があるとしている。しかし、これも科学によって否定されている。

木々はその根を通じて水の流出を減少させ、土壌内の重要な地下水をバランスよく保持する。ストックホルム国際水研究所によると、熱帯乾燥地などの特定の森では、樹木が地下水を蓄え、育み、守る働きを促進しているという証拠がある。

証拠は、干ばつに見舞われる森では、木が少なくなれば、水がさらに少なくなることを示唆している。

間伐すると、物を乾かしている日光や風が多く入ってくる。低強度で比較的頻繁な山火事に適応した樹種がない限り、森林をより燃えやすくする可能性がある。

野生生物学者のモルバー氏は、すべての木の耐火性は、同じではないと指摘した。

モルバー氏は米国の森林保護に熱心だ。彼は木の種類によって火災の適応度が違うと主張している。

また同氏は、これが樹木の除去、特に伐採から利益を得ている産業によって 「誤用」 されている。山火事の規模や強度は、火災に利用できる「燃料の過剰」によるものではないと考えている。

家と命を救う

間伐は、長年にわたり山火事管理戦略の一環として導入されてきた。その効果については議論の余地がある。

生態学者ハンソン氏は、間伐が特定のアメリカの山火事を悪化させたと考えている例をまとめた。

「残念なことに、木の間伐が火災につながり、町に向かって急速に広がり、最終的には町を破壊した例が数多くある」と同氏は語った。

ハンソン氏は特に、2018年のパラダイス、2021年のグリーンビルとグリズリー・フラッツ、2020年のベリークリークとフェザーフォールズなどで起きたカリフォルニア州の山火事について言及した。

「以前に防火帯として、間伐が行われた広大な地域で、火災が急速に激しく広がり、多くの町が壊滅してしまった」

「木材の間引き（間伐）は火災を止めるのではなく、むしろ火は速く燃える。多くの場合、住宅に向かって燃え広がる」

モルバー氏もこれに同意している。彼は2000年にサウスダコタ州のブラックヒルズ地域で発生した悲惨で破壊的なジャスパーファイアを例として挙げた。

木材の間引き（間伐）は火災を止めるのではなく、むしろ火は速く燃える。多くの場合、住宅に向かって燃え広がる。

 

チャド・ハンソン　生態学者、ジョン・ミューア・プロジェクトの共同設立者

「ジャスパーの火災は、森林局によって大幅に間伐されたエリアで完全に燃えた。そしてこれはマツやスギの針葉樹エリアであり、この種の木は木材産業によって、そしておそらく、正当な火災のリスクを減少させるための間伐として期待されていた」とモルバー氏は述べた。

ハンソン氏とモルバー氏は、山火事の被害を軽減するには、より多くの木を伐採するよりも良い方法があることに同意している。

ハンソン氏は、「代わりに、我々はコミュニティが火災に対して安全であるよう、住宅の耐火性向上と、住宅から100フィート以内の植生の剪定に注力すべきだ。科学的には、これらの対策が住宅と命を救うために非常に効果的であることは明確だ」と指摘している。