中国では最近、習近平国家主席が自ら「お気に入り」だった側近でさえ、次々と粛清している。同様に、中国軍内では「ロケット軍」で異例のトップ交代劇が行われた。
そのようななか、またも中国軍の高官が相次いで「調査」されるため「連行」されたという情報が入ってきた。
この場合の「調査」とは、実際に不正や汚職があったか否かを公正に調べるということではなく「目的の人物を失脚させる第一段階」の意味で使われることが多い。「連行」も同様に、警察などが使う通常の連行の意味ではなく、上記のように「調査の場へ引いていく」という特殊な意味合いを含んでいる。
米国に亡命した中国海軍司令部の元参謀(中佐)である姚誠氏は今月13日、「ロケット軍参謀長の孫金明氏、および副司令官の李伝広氏が同時に連行された」と自身のSNSを通じて明かした。海軍の上層部でも同様に、高官が失脚しているという。
このごろ、李強首相の浙江省での視察を伝える官製メディアの報道について「様子がおかしい」という指摘の声が上がっている。というのは、官製メディアの報道のなかで、李強氏に同行しているはずの同省内トップらの姿が「1人も見られない」からだ。
この不可解な現象について、時事評論家の王赫氏は「(党の)宣伝システムは蔡奇氏(党序列5位、政治局常務委員、党職が主任務)の支配下にある。蔡氏は、報道を意図的に操作することで、李強首相の地位を軽んじていると考えられる」と指摘する。
歴史学者で米国飛天大学教授の章天亮氏も「李強首相が抑えられており、その地位が不安定になっていることを示す兆候はいくつもある。習氏も自身の面子のことがなければ、秦剛外相や李尚福国防相と同じように、李強首相を解任していたかもしれない」と分析している。
王赫氏はさらに「中共党内では内部闘争が深刻化している。いまや習氏は、自身に忠実な部下とされている蔡奇氏や李強氏に対しても、完全には信用しておらず、警戒しているようだ」と指摘する。
また、例年であればとっくに日程が公開されている「三中全会(重大政策などを発表。通常は10月または11月に開催)」について、今年はまだ日程さえ公表されていない。そのようなことから「(政治の中枢である)中南海は今、混乱状態にあるのではないか」という見方が広がっている。
習氏がロケット軍司令官をはじめ、中国軍の高官を粛清する原因について、エポックタイムズが信頼できる情報筋から得た情報によると、「習氏本人は予言を非常に信じている。予言にある、クーデターや暗殺が自分の身に起きることを心底恐れている。そのため、予言のようなことが起こらないよう、先に手を打っている」という。
「習近平氏が暗殺される」。そのことを示す予言書は『推背図』や『鉄板図』など、複数あると言われている。その解釈の仕方も見る人によってやや幅があるため、統一した見解はない。
ただし習近平氏は、自身が直接関係するこれらの予言を非常に信じているばかりか、それを実際の政治に影響させているという。
例えば、習氏と見られる人物が「矢で射られている図」を見て、中国軍のなかで「その予言に該当するとみられる人物」を多く粛清したというのだ。この場合、ロケット軍司令官の李玉超氏や国防部長の李尚福氏が、それに当たる。
習近平氏にしてみれば、自分が暗殺されないため、本当に必死で「先に手を打っている」ということになるのかもしれない。
ただし、現実の政治が、そうした最高権力者がかかえる「恐怖心」に左右されているとすれば、中国はすでにダッチロール(迷走)状態に入っていると見なければならない。これは言わば、墜落寸前の飛行機にも似た、恐るべき状態である。
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