「消火栓」が見せかけだけの偽物だった! 車の衝突事故で判明=中国

2023/10/18
更新: 2023/10/18

中国は今、ニセモノだらけである。笑い話ではなく、この偽装は一体どこまで続くのかと思わずにはいられない。その現状は、枯れ木に緑ペンキを吹きつけた「緑化」のレベルをはるかに超えて「まさか、これも?」の域まで達している。

このほど、撮影場所は不明だが、華人圏のSNSに「中国の街中にある消火栓が偽物だった」ことを示す動画が拡散され、物議を醸している。いざ火事になった時、消防隊がこの「消火栓」にホースをつないでも水は出ないのである。

手で押して「倒れる消火栓?」

事件は、車を運転していた女性が、うっかり道端にある消防栓に車をぶつけてしまったことから始まる。

ドライバーの女性は、水道管が折れて水柱が噴き上がる大事を覚悟した。さらに、これから直面するであろう多額の罰金や弁償金の恐怖が頭をよぎったが、なぜか「何も起こらなかった」という。

よく見ると、消火栓はタダの飾り物で、その下には何の管もつながれていない。消火栓が埋められていた深さも、せいぜい10数センチだった。そこでようやく「この消火栓は偽物だ」と分かった。

目を疑った周囲の市民の一人が、近くにあった別の消火栓を手で押してみると、こちらも簡単に倒れた。同じく「飾り物」だったことが判明したという。 

関連動画を転載した時事評論家の李沐陽氏によると、「問題の動画は、通りがかりの市民が撮影してネットに投稿したものだった。ところがその後、事故を起こした女性宅に地元警察が訪れ、危うく騒乱挑発罪にされるところだった」という。

警察が叱責「中国のイメージを損ねるな!」

この動画がSNSで拡散されはじめると、地元警察は消火栓に車をぶつけた女性の家を訪れて、こう言った。

「おまえと動画撮影者は仲間か。事故は、仕組まれたものだったのか。外国勢力に操られているのではないのか」。つまり、動画を撮影するため、はじめから意図して事故を起こしたのではないか、と疑ったのである。

さらに警察は、えらい剣幕で「アジア大会が成功裏に終わって、我が国の偉大なる建設の成就ぶりや党の輝かしい業績を世界に大いにアピールしたばかりだ。その時に、こんな事が起きては我が国の良いイメージを損ねることになる!」と厳しく叱責した。女性は深く反省の意を示した。

さいわい今回は「騒乱挑発罪(中国語:寻衅滋事罪)」のレッテルを貼られず、口頭での警告で済んだ。しかし女性は以来、心に大きな傷を残すことになったという。

女性本人に確認したわけではないが、事故は意図的なものではなく、単なる運転ミスによるものだったのだろう。

器物破損の責任は問われたとしても、消火栓がニセモノであることは、もとより女性の責任ではないはずだ。それが発覚したことで警察に叱責されては、たまらない。にもかかわらず「中国のイメージを損ねるな!」という警察の物言いは、何か根幹が抜け落ちているというしかない。

 

 

「偽装」の裏にある政府高官の影

この「ニセモノ消火栓事件」について李沐陽氏は、以下のように指摘する。

「ニセモノの消火栓は、中国社会にはびこる偽装問題を浮き彫りにしている。これは、誰もが知るおから工事(手抜き工事)とはまた訳が違う。この消火栓のような偽装工事は非常に多く、政府も承知しており、民衆も皆それを知っているが、これを暴露することは許されない。たとえそれが意図していない不慮の事故であったとしても、こうして発覚することは許されないのだ」

「影響が小さければ、社会秩序を乱したとされる程度で済む。ところが運悪く中国社会の深い闇を突ついてしまったら、騒乱挑発罪や国家政権転覆扇動罪などの重罪に問われかねない。なぜなら、そのような大型プロジェクトの工事請負業者の背後には、必ず政府高官が後ろ盾となっているからだ」

「そのため、この問題を深く追及することが許されない」と、李沐陽氏はいう。

つまり、単なる「おから工事(手抜き工事)」であれば建築業者や不動産会社の不徳の結果であるとも言えるが、公共インフラなど大型プロジェクトの場合、その「偽装」の裏には、必ず政府高官の影が存在するからだ。

この闇の部分が、SNS上で暴露され、民衆の非難が集中すると「彼ら」は困るのである。警察が「中国のイメージを損ねるな!」と叱責したことの真意は、そこにあると見てよい。 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。