中国の建国記念日の休み期間中、山東省泰安市に一人の「侠客」が現れた。
どこの誰かは知らないけれど、黒い服をまとい、黒鞘の宝剣をたずさえ、今では目にするのも珍しくなった「馬」にまたがって颯爽とゆく「侠客」。その姿は、とにかく「かっこいい」の一言に尽きる。
大昔からタイムスリップしてきたのか、と疑ってしまうほどの臨場感である。周りの民衆は、若かりし頃の唐の太宗・李世民(り せいみん)の姿でも重ね合わせたのか、崇敬の目さえ向けているようだ。
さて、そのヒーローが、これから大活躍して、さぞや世直しをしてくれると思いきや、結末はあっけないものだった。現代の警察によって、逮捕されたのである。
中国の公安警察は、ネット上で「悪の化身」にまで成り下がった存在である。いっぽう、警察を襲撃する市民を「人民の英雄」と称賛する反体制の風潮もある。
そこで「何をしでかすか分からない」「まさか、この姿で警察署を襲撃するのでは」とでも思ったのか、現地警察は慌てて、この侠客を「交通違反」の名目で逮捕した。
実際に「侠客」の何が交通違反に該当したのか、その具体的な内容は伝えられていない。要するに、何でもいいから理由をつけて、この正義のヒーローを拘束したのであろう。
関連投稿を転載した米国在住の中国人調査ジャーナリスト・趙蘭健氏は、自身の投稿に「乱世がまもなくやってくる。一人でも侠客が増えれば(中国に)正義が増す」とコメントした。
これから向かえる中国の乱世に、どんな救世の英雄が出現するか。どこを見ても暗澹たる世相ではあるが、明るい話題も少しは欲しいものだ、と庶民の誰もが思っている。
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