警察が市民に「監視アプリ」使用を強制 ますます牙をむく夜警国家=中国

2023/10/06
更新: 2023/10/06

近ごろ中国では、警察が路上や街角で市民を止め、携帯をいきなりチェックして、当局が指定する「詐欺防止アプリ」をインストールするようを求めている。このアプリのインストールは、もはや任意ではなく、そうせざるを得ないという「強制」に近い。

中国のスマホは「全国民を監視する道具」

中国人にとって端末機能つき携帯電話、いわゆるスマートフォン(スマホ)は、日常生活になくてはならない「必需品」とされている。

ただし、それは日本の場合とは全く異なり、使用者が主体としてスマホをもっているわけではない。

体制側である中国共産党が「スマホを使わざるを得ない社会」を作り上げた。それはまさに、民衆のスマホから全ての個人情報を窃取し、反体制の動きを監視するとともに、強権によって国民を管理する目的でスマホをもたせているのだ。

確かに中国では、流通するニセ札への対策として、買い物などでスマホによる電子決済は欠かせないだろう。しかし、それは二義的な意味であるに過ぎない。中国共産党にとって、民衆がもつスマホは「全国民を監視する道具」なのだ。

中国人がスマホを使用している限り、その行動や個人情報は、公安警察などの当局者に筒抜けになっている。それは中国に滞在する外国人についても同様で、どこへ行くにも中国の私服警官を帯同しているに等しい。

中国警察による「指定アプリのインストール強制」の動きは、黒竜江省大慶市に続き、内モンゴル自治区ウランチャブ市や、同自治区の赤峰市の街中などでも確認されている。

それらの場所で警察は、例えば「鉄道駅の出口」などで市民の動きを止め、指定アプリのインストールを要求する。警察の指示に従わない市民は「出口から出させない」というから、これは強制そのものである。

9月22日、内モンゴル自治区ウランチャブ市の鉄道駅の出口で市民が撮影した動画には、警察が鉄道駅のこの場所で待ち伏せし、駅を出ようとする市民にストップをかけて一人一人の携帯をチェックする様子が映っている。

その場で、すぐに指定アプリをダウンロードしないと「駅から出られない」という。

(鉄道駅の出口で、警察に止められた人々。すぐに指定アプリをダウンロードしないと「駅から出られない」という。)

拒否すれば困る「包囲網」を形成

ここに出てきた「詐欺防止アプリ(中国名「国家反诈中心APP」)」とは、2021年3月に中国公安部よりリリースされた不正行為の警告や報告機能を備えたソフトウェア。同アプリの宣伝広告は、ワクチン接種会場や地下鉄など、市街の至るところで見られる。

地方政府や警察当局は同アプリのインストールを強く勧めているが、もはや「勧め」の段階ではなく、実態としては「強制」そのものである。

多くの地方政府機関では、職員や従業員に同アプリの利用を強制している。一般市民に対しても、ワクチン接種会場や交通違反の取り締まり時、あるいは賃貸住宅の契約を結ぶ際などに、何らかの口実をつけて、同アプリのインストールを要求されることがある。

もっとあからさまに「このアプリをインストールしないと公共施設に入れない」というケースも増えている。なかには、個人の身分証明書を役所で申請する際に、同アプリのダウンロードを求められたという市民もいる。

つまり「このアプリを自分のスマホにインストールしないと、さまざまな不便に直面するぞ」というように、市民が拒否すれば困る「包囲網」が形成されているのだ。

同アプリは、登録時に携帯電話番号(SMS認証)や氏名、住所、身分証番号、顔認識など、各種の情報の入力が求められる。

しかも、その登録過程で個人の写真やビデオ、SMS(ショートメッセージサービス)や個人用アドレス帳など、合わせて29項目に関して、他者からのアクセス権を許可しなければならない。ほとんど無防備のまま当局の監視にさらされることになるため、ユーザーの不安を招いている。

同アプリを使用する市民によると(中国共産党の)グレートファイアウォールを迂回するソフトウェアや、テレグラムのような海外のソーシャルメディアプラットフォームにアクセスしようとすると、スマホから「警告を発してくる」という。

繰り返すが、体制側である中国共産党にとって、このアプリは「市民の携帯電話から全ての情報を把握し追跡できる、強力な監視装置」なのだ。

監視アプリ強制は「切羽詰まっている証」

このことについて、中国問題専門家でエポックタイムズのコラムニストである王赫氏は、次のように指摘する。

「自由な情報の流れを遮断するため、民衆に監視アプリのインストールを強制する。これは中国政府が、そうした非常手段を使う段階に至ったことを意味している。中共の目的は、中国民衆と外部(外国)のつながりを遮断して情報統制を行い、洗脳をすることにある。中国の民衆に監視アプリをインストールさせ、中国社会全体を巨大な監獄に変えようとしているが、これはまさに、中共の政権維持がますます困難になっていることを浮き彫りするものだ」

王赫氏の指摘する通り、中国共産党は、確かに「切羽詰まっている」。

そのことを如実に表すのが「国民に対する、監視アプリの強制」であるとすれば、中共中国というこの夜警国家の政権は、もう長くはない。国民を強力に監視しなければならないのは、それだけ現体制が「危うい」ことになるからだ。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。