オピニオン 上岡龍次コラム

中国は台湾侵攻する時に核兵器を使う

2023/09/23
更新: 2024/06/13

南シナ海関係国の連携

中国が8月に新地図を公開するとインド・南シナ海関係国などが反発した。中国はこれまで九段線として一方的に領土・領海を主張したが新地図では領土・領海が拡大され台湾東部の尖閣諸島まで含まれた十段線になった。

日本も中国に反発するが一蹴されてしまう。だが中国の傲慢な態度は十段線で関係国の領土・領海を侵害し中国への反発を強めることになった。

中国は台湾への軍事的圧力を続けており台湾侵攻を見据えた空軍力の強化を意図的に見せ付けている。中国は経済の悪化で台湾侵攻のリスクが低下したと思われるが、台湾参謀本部情報部の黃文啓氏は中国の国防費は増加の一途をたどっていると主張。これは中国が台湾侵攻を諦めていない証だが中国の敵が増えすぎて対応が困難な状況になっている。

なぜ台湾侵攻をしなかった?

過去の中国は台湾侵攻の準備作戦として金門戦役(1949)・金門砲戦(1958)の前例が挙げられるが以後は台湾への軍事的恫喝で終わっている。

当時の中国は海上交通路を使った海外貿易の比重が少なく台湾侵攻をしても中国経済には打撃を与えない。だが中国が海上交通路を使った海外貿易が増加すると台湾侵攻を実行すると台湾軍が西側の台湾海峡、南側のバシー海峡、東部の黄海で中国向けの海上交通路を遮断することは明らか。だから中国は台湾に中国経済の心臓を握られているから台湾侵攻ができなかった。

そのため中国は人民解放軍の近代化をしたが準備と軍事演習で台湾を脅すことに費やしている。さらに言えば2019年に公表された中国の石油備蓄は80日分と推測されており、人民解放軍が台湾侵攻を行えば80日以内に勝利しなければ中国が敗北することになる。

仮に中国が台湾侵攻を行えば南シナ海を通る海上交通路は遮断される。このため中国は南シナ海経由の石油輸入が停止し、さらに台湾軍が太平洋からの貿易を遮断するから中国は海を奪われる。中国は2019年以後から石油備蓄を公表していないから真偽不明だが、ロシアからの石油輸入を行なうから石油備蓄は80日以上有るとしても台湾侵攻は短期決戦を強いられる。

何故なら戦争になれば24時間体制の生産・輸送・備蓄になるから工場と輸送はフル稼働。こうなると石油消費も激しくなるから南シナ海の海上交通路を失った中国は石油だけではなく食料不足も襲ってくる。さらに貿易も減少するから損害無視の攻勢で短期決戦をしなければ台湾侵攻は成功しない。これが明らかだから中国は台湾侵攻を容易には決断できない。

中国は台湾侵攻する時は核兵器を使う

仮に中国が台湾侵攻をする時は通常兵器では長期戦になるから核兵器を使った短期決戦を実行すると断言する。中国の戦略備蓄が80日前後なら台湾軍が持久戦を行なうだけで台湾軍は勝利が得られる。さらにアメリカ海軍がインド洋で中国向け貿易船を拿捕すれば内陸を使った迂回路すら遮断される。

このため中国に残された手段は核兵器しか残されていない。そして中国が核兵器を使うとすれば20キロトンクラスだと推測する。何故なら20キロトンクラスは広島・長崎で使われた規模であり標準原爆として扱われている。さらに使った実績から日本の厚生労働省の様に記録が残されているので台湾への核攻撃で破壊規模を予測することが容易になる。

標準原爆20キロトンの評価基準(松村劭 元陸将補 故人提供)

火口直径=約120m

地下破壊深度=火口直径の1~1.5倍

火の玉直径=約360m

100%致死の初期放射能(中性子+γ線)直径約2Km

爆風効果(致死、建物全壊)直径約2Km

熱効果(第3度火傷、可燃物燃焼)直径約5Km

人的損害

広島:即死者118,611、負傷者74,130

長崎:即死者 73,884、負傷者74,909

20キロトンクラスであれば地上の破壊に留まり軍港・空軍基地の瓦礫を撤去すれば短期間で再利用できる。しかも核攻撃を行っても厚生労働省のページに有る様に残留放射線は24時間以後急激に減少するから地上部隊を台湾へ上陸させることもできる。

それに対して200キロトンクラスを使うと軍港・空軍基地を土台から消し飛ばす。そうなると再利用ができないから台湾を占領できても台湾を拠点とした軍事作戦を行えない。

中国が困るのは台湾軍が都市に立て籠もり持久戦をすることだ。仮に人民解放軍が台湾に上陸できても都市で市街戦をすると一ヶ月以上の持久戦になる。

ならば中国は障害となる都市・軍港・空軍基地を20キロトンクラスで核攻撃するだろう。そのため攻撃目標となるのは台湾全土の都市・軍港・空軍基地となる。つまり習近平が決断すれば台湾人を統治するのではなく抹殺して中国人が使うことを選ぶはずだ。

中国は核兵器を使えるのか?

アメリカとソ連が核兵器で睨み合った東西冷戦でも核兵器は使われなかったが中国は台湾に核攻撃できるのか?東西冷戦の時は何方が先制攻撃すれば報復攻撃が想定された。だからアメリカとソ連は核攻撃を躊躇した。だが今の台湾は核兵器を持っていないから安心して中国は台湾を核攻撃できる。

さらに東西冷戦の時に世界は二つの陣営に強制的に分かれていたが冷戦が終わると世界は空白地帯が生まれている。その典型がウクライナであり何処の国とも軍事同盟を結んでいない空白地帯だからロシアがウクライナに侵攻した。ロシアのウクライナ侵攻を見たフィンランドとスウェーデンは空白地帯の危険性を察知してNATO加盟を急いでいる。

何故ならNATOに加盟すればロシアが加盟国に侵攻すればNATOが参戦してロシアと戦争する。さらにロシアがNATO加盟国に核攻撃を行えばNATO加盟国の核保有国がロシアに報復攻撃を行なう。だからロシアは空白地帯のウクライナに侵攻した。

つまり空白地帯の国であれば軍事侵攻と核攻撃を行なうことが可能。実際に欧米はウクライナを軍事演習するが軍隊を派遣して参戦していない。ならばウクライナの実情を見た中国は台湾侵攻で核攻撃を使う可能性が高まる。

さらに中国が台湾を核攻撃してもアメリカは中国に核兵器で報復攻撃をしない。何故ならアメリカから中国を核攻撃すると中国から核兵器で報復されるのは明らか。自分の国の戦争ではないのに自ら核戦争を行なうことはしない。それよりも世界と連携して中国に対して経済制裁で挑む道を選ぶはずだ。

何故なら中国の戦略備蓄は80日程度なのだから世界から経済制裁を受ければ中国経済が死んでしまう。それに中国が世界に核攻撃を行なうと世界の核保有国から報復攻撃を受けて中国は地図から消されてしまう。だから中国は台湾に核攻撃を行えても世界には行えない。

台湾と日本はどうする?

台湾が中国から核攻撃を受けないためには台湾が核兵器を保有するかNATOに加盟することだ。核兵器の保有は直接の保有と核保有国と核兵器シェアリングする間接的な保有が選べる。核兵器を保有すれば中国は報復攻撃を恐れて核攻撃できない。もしくは台湾がNATOに加盟すれば中国は台湾侵攻と核攻撃ができないことになる。

これは日本も同じで核兵器の保有かNATO加盟が中国からの日本侵攻と核攻撃を防ぐ手段となる。経済面と軍事面から言えば台湾と日本はNATOに加盟することが最善。何故ならNATOに加盟するだけで専守防衛を実現できる利点が有る。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。