路線バス運転手の「社会報復」か? 悲惨な事故に官製メディアは沈黙=中国 武漢

2023/09/16
更新: 2023/09/17

今月11日、湖北省武漢市で市内を運行する路線バスが、大型バスに衝突する重大事故が起きた。多数の死傷者が出たとみられるこの事故について、官製メディアの報道はなく、事故の原因もふくめてその詳細は不明である。

不可解な点が多い今回の事故について、ネット上では、路線バス運転手による「社会報復」を疑う声が広がっている。

なぜ官製メディアが報じない?

SNSに流出した関連の動画を見ると、事故現場の地面には少なくとも2人の市民が横たわっている。事故の犠牲者と見られるその体の上には、ブルーシートがかけられている。二つの「遺体」は、動画の目測で50メートル以上は離れていることから、事故の規模の大きさと、広範囲にわたることが伺われる。

また、動画の画面には、路線バスを運転していたとみられる運転手が、大きく破壊された側面の窓から車外へ上体をだらり垂らしている様子も映っている。動画では、わずかに動いたようにも見える。この時点で運転手は死亡していないかもしれないが、自分で起きることは全くできないほど重傷であるらしい。

あるネット上の情報によると「この運転手は、運転中にてんかんの発作を起こしたようだ。バス停に激突し2人を撥ねて死亡させたが、バスは一向に止まらず、さらに塀に激突。最後は、他の大型バスに正面衝突してようやく止まった」という。ただし、その証言の通りであるかは確認できていない。

事故動画を投稿した市民によると、事故を起こした路線バスは「武漢江夏903路」だという。「事故の死者は6人」というネット情報もあるが、事故に関する官製メディアの報道はなく、詳しい死傷者状況は不明である。

この頃、全国では多くのバス運転手が「何カ月も給料を支給されていない」というニュースが相次いでいる。そうしたこともあり、今回の事故原因が「長期にわたり給料が支払われない怒りから、路線バスの運転手が自暴自棄になり、社会報復をはかったのではないか」と疑う声も広がっている。

これも「社会報復」の一例か?

現地当局は情報封鎖を行っている模様。今回の事故が、運転手による「社会報復」であるどうかは分からないが、現地当局が情報封鎖によって隠蔽しようとし、中国メディアに報道されない現状からして「これは通常の交通事故ではない」という想像を巷間に引き起こしていることは間違いない。

実際「警察から、動画をネットに投稿するなと言われた」「現地メディアや(中国の)SNSでは検索しても表示されない」などの指摘が相次いでいる。

 

(現場を捉えた動画、SNS投稿動画)

近年、中国社会に充満する「邪気」はますます強く、重くなってきている。刃物を振り回す「無差別切りつけ」や、人混みに意図的に突っ込む「暴走車」など、目を覆いたくなるような悲劇や事件が次から次へと起こり、その数は日を追うごとに増している。

こうした「社会への復讐心」が肥大した結果の無差別殺人が、昨今の中国を特徴づける社会現象になっていることは、もはや否定できない事実である。

あるツイッターアカウントがまとめた不完全な統計(下に添付した図表)によると、9月11日時点で9月中に中国各地で起きた「社会報復事件」は少なくとも26件ある。それにより35人以上が死亡し、973人以上が負傷した。

8月には79件確認され、240人以上が死亡し、405人以上が負傷。
7月には106件確認され、176人以上が死亡し、132人以上が負傷。
6月には59件確認され、111人以上が死亡し、113人以上が負傷。
5月には41件確認され、91人以上が死亡し、60人以上が負傷。
4月には27件確認され、80人以上が死亡、30人以上が負傷。

「ひと月ごとに増加する犠牲者の数」を、見事なほど正確に示している図表には、どこまで伸びるのかという懸念とともに、ぞっとするような恐怖感さえ禁じ得ない。

現在は2023年9月である。この先、前月を超える「社会報復」の犠牲者数が記録されるのか。これについては、「記録更新」の予想が外れることを祈るばかりである。

(中国で起きた社会報復事件の一部をまとめた投稿)
 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。