香港の洪水は「通告なしのダム放水だった」 公式発表の「食い違い」から明らかに

2023/09/11
更新: 2023/09/11

今月7日深夜から8日にかけて、広東省深センと香港は記録的な集中豪雨により機能不全に陥った。この日の夜(8日未明)、深セン当局は突然ダム放水をした。

香港を襲った洪水は「深センのダム放水が原因」と指摘する声が多く上がるなか、香港政府の通告などからして、深セン当局は先にダムの水門を開けてから、その後で「放水通告」を出していた疑いが持ち上がっている。

放水開始後に「あわてて通告」したのか

「深センにあるダムの放水開始時間」について、二つの公式発表に「食い違い」があることがわかった。

深センの官製メディア「深圳晚報」は8日の午前0時08分の時点で、「(7分後の)午前0時15分にダム放水を開始する」との速報を出している。

これに対し、香港政府が刊行する政府年報「政府新聞處」は7日の23時44分に、その16分後の「8日午前0時に(ダム放水を)開始する」と報じている。

画像(左)は深センの官製メディア「深圳晚報」の報道。画像(右)は香港政府が刊行する政府年報「政府新聞處」の報道。

 

香港当局の発表(午前0時に放水開始)が確かなものであれば、深セン側が「7分後にダム放水する」と予告した時点(午前0時8分)で放水は開始されており、すでに8分が経過していることになる。つまり深セン側は、またしても先に「予告なしのダム放水」を行い、その後で「(事実ではない)放水開始時刻を通告した」ことになるのだ。

それが、はじめから用意された「虚偽の開始時刻」だったのか、双方の間に何らかの連絡ミスがあり、話の辻褄を合わせるために深セン側が「あわてて後から通告した」のかは、現時点では分からない。

なお「またしても」というのは、その言葉通り、先月(8月2日~3日)黒竜江省など中国東北部を襲った洪水も同じように、事前に計画された「通告なしのダム放水」によるものであることが、流出した政府の内部文書によって明らかになっているからである。

また、2021年7月に「千年に一度の大雨」と中国当局が主張する、河南省鄭州市を襲った大規模な水害も、同じく当局のダム放水によるものとされており、鄭州市へ事前の通知はなかった。

鄭州市内を一気に襲った洪水のため、幹線道路のトンネルが完全に水没。車に乗っていた多くの人が、脱出する暇もなく、凄惨な状況のなかで犠牲となっている。

「真夜中のニュース速報」など誰が見る?

深セン側、香港側がそれぞれ主張する時刻の「15分の時間差」について、その事実関係は、まだ明らかになっていない。

「深センのダム放水」について、深セン当局は「8日の午前0時15分から放水する、と事前に通知している」と主張している。確かに、この日の深センの官製メディア「深圳晚報」の公式アカウントはこのことに関する「ニュース速報」を出していた。その発表時刻は0時08分である。

つまり、深セン当局の言葉によれば、予告される放流開始時間の7分前に「ニュース速報」が出されたことになる。(実際は、その8分前(午前0時)に放水が始まっているのかもしれないが、ひとまず置く)

香港市民にすれば「たった7分で、何の準備ができるというのか」「そんなメディアの公式アカウントが出す真夜中の速報など、誰が気づくんだ?」といった、別の意味での非難が殺到するのも無理はない。

香港メディアによると、香港政府はかつて「深センのダムを放流する場合、(香港)政府はその3時間前に警報を出す」と香港市民に約束していたという。しかし、今回の場合、香港政府のダム放流通知は7日の23時44分、放流開始のわずか16分前に出されたのだ。

これでは、1階店舗の商品を2階へ上げたり、自家用車を高台へ移動させるなどの対応は全くとれないことになる。そのため香港市民は何の準備もできず、命に危険がおよぶ洪水の直撃を受けることになった。

香港政府は洪水の後、「香港の洪水は豪雨によるもので、深センのダム放流とは何の関係もない」と中国政府を擁護する主張をしている。しかし、この「言い訳」を信じる香港市民は少ないようだ。

香港メディアの取材に対し、香港新界の住民は「地元の新界で、私が洪水を見たのは生まれて初めてだ。この洪水が深センから来たのは明白だ」と証言している。

(深センを襲った洪水の様子)

(香港政府の政府年報「政府新聞處」の報道。「8日の0時0分に、深センのダム放水を開始」と伝える。報道時刻は、7日の23時44分。(スクリーンショット))

 

深センの官製メディア「深圳晚報」の報道。こちらは「9月8日、0時15分に深センのダム放水が開始」と伝えている。報道時刻は、0時8分である。(スクリーンショット)

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。