この頃、内モンゴル自治区の省都・フフホト市の病院では、咳や喘息を訴える患者が殺到してひどく混雑している。同様の事態は、北京など他の地域でも見られている。
中国当局はこの状況について「これは雷雨ぜんそく(喘息)という、花粉に関連した重篤な喘息発作だ」と説明している。一般に「雷雨喘息」は、雷雨の際に大気中の花粉が水分を急激に吸収し、膨張・破裂して小さく割れるときに誘発すると考えられている。
しかし民間では「本当の原因は、ほかにあるのではないか」「もっと恐ろしい病気を、当局が隠蔽しているのではないか」とする憶測がネット上で広がり、不安が高まっている。
中国官製メディア「人民日報」5日付は、最近の数日の間に、北京の病院1院だけで「雷雨喘息」の患者が6人確認されたと報じた。
「雷雨喘息(epidemic thunderstorm asthma)」とは、雷雨により花粉やカビが砕かれて、それが人体の気管支に到達して起きる喘息の発作。2020年の外国の学術報告によると、過去30年の間に、この喘息は一部の限られた地域で流行したことがあるが、中国では「まだ(流行の)記録はない」とされている。
中国メディアは「専門家の話」として「中国北部の秋の花粉のピークは、あと2~3週間続く。そのため雷雨喘息の発症ピークは、まだまだ続くだろう」と予測している。
以前であれば、中国のメディアやネットにほとんど登場することのなかった「雷雨喘息」だが、近頃では各官製メディアをはじめ、主要な中国メディアがこの現象について大々的に宣伝している。
実際のところ、中国メディアが「何かを大々的に宣伝」する場合、それが真実であるからか、ほかに存在する真実を隠蔽する目的があるのかは、かなり判別が難しい。また、全く関係がない他の事件から民衆の関心を逸らす目的で、こちらを「大々的に宣伝」する場合もある。
今月2日、雷雨に見舞われた後のフフホト市で、多くの市民が喘息を発症したことを示す動画がSNSに拡散されている。現地では「息苦しい」「心臓が痛い」「顔が真っ赤だ」などのキーワードが多く検索されていた。
「フフホト市と似た症状」はほかにも北京市、山西省、河北省、甘粛省でも起きているとネットユーザーが明かしている。近頃では新型コロナが再燃し、多くの若年層までが死亡している現状もあるなかで、この「奇病の発生」はネット上で注目を集めており、一層の不安が広がっている。
「雷雨喘息」のほか、この頃中国各地で流行っている「白肺(バイフェイ)」や「マイコプラズマ肺炎(中国語:支原体肺炎)」と診断される新型コロナの症状に酷似する感染症の病原は、いずれも「新型コロナウイルスの変異株ではないか」とする懸念が広がっている。
いっぽう、内モンゴル周辺で起きた大規模な喘息の原因は、内モンゴルにあるウラン含有炭鉱の採掘と関係があるとする「内部情報」もネット上で噂されている。それによると、危険な炭鉱で「不適切」に採掘されたため、流出した放射性物質が蒸発した後に降雨となり、核汚染をともなう被害を引き起こしたという。
そうした噂についての科学的なエビデンスは、今のところ存在しない。しかし、それだけに民間での不安や懸念は、ウイルス以上の速さで広がっているようだ。
(喘息を発症した市民で混雑する、フフホト市の病院内の様子、SNS投稿動画)
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