台湾の退役青年が徒歩で島内を一周中 中共の脅威に備え「台湾人の結束」を呼びかける

2023/08/30
更新: 2023/08/30

ここ1カ月の間に「完全武装」した軍服姿の青年が、台湾のあちこちに現れている。彼らの目的は、徒歩で台湾島を一周して、中国共産党からの脅威について警鐘を鳴らすとともに、台湾人の結束を呼びかけることだという。

退役軍人の蔡宗霖さん(22歳)も、その一人だ。手にする小銃はプラスチック製のレプリカだが、迷彩服に身を包み、24キロ近い重装備を背負っている。

その背中には「日の丸」もあった

蔡宗霖さんの背中には、旗竿の「台湾国旗」と、「島を一周しています。人々の敵と戦う意識を高めたい」と書かれた黄色い看板が掲げられている。

さらによく見ると、彼の背嚢に縫い付けられた台湾国旗のとなりには、日本の「日の丸」がある。彼は、日本国旗をともに背負って、台湾を歩いているのだ。

蔡さんは、先月8日に台中市を出発。8月26日現在、すでに900キロ以上を歩いてきた。

メディアの取材に対し、蔡さんは「台湾を戦争の惨禍から守りたい」「独裁国家に膝を屈して得られた『平和』など、長続きしない」「すでに香港や新疆、ウクライナなどの先例がある。私たちは、自分たちが何をすべきかは明白だ。もうこれ以上(中共に)分断されるわけにはいかない」と語った。
 

徒歩で台湾島一周を目指す退役軍人の蔡宗霖さん。その背中には「日の丸」もあった。(NTD新唐人テレビの報道番組よりスクリーンショット)

台湾社会に浸透する、中共の「認知戦

近年、中国共産党は台湾に対する文化的・軍事的威嚇を強めるとともに、さまざまな浸透工作による「認知戦」などを通じて、台湾社会を分断しようとしている。蔡さんは自身の行動をもって、中共の分断工作に陥らぬよう、台湾民衆に一層の「結束」を呼びかけている。

たった一人で台湾島一周を目指す蔡さんであるが。その道中は「決して孤独ではない」という。

時折、心優しい市民が、励ましの声をかけてくれる。また炎天下を歩く彼に、冷たい飲み物を差し入れする人もいるという。市民の黄さんは「国を思う若者は、本当に素晴らしい」と語り、黙々と歩く蔡さんを、微笑ましい眼差しで見送った。

「これは旅行じゃないし、遊びでもない。台湾全土に私のメッセージを広めたいのです」。蔡宗霖さんは自身の決意を、そう語った。

なお、動画中の中国語(台湾国語)では「退役軍人」と言っているが、22歳の蔡宗霖さんは、職業軍人として台湾軍に長年勤めた人ではなく、「義務兵役を終えたばかりの青年」であることが動画の内容から判断できる。

 台湾では従来、18歳以上の男子に4カ月の兵役を義務づけてきたが、2022年12月より、兵役の期間を1年に延長している。台湾の蔡英文総統は同年12月27日、国家安全会議を招集してこの決定を行った。

蔡英文総統は、その会議後の記者会見で、兵役期間延長の理由を次のように述べている。

「4カ月の兵役では、今の軍備の必要性に対処できない。台湾が自衛力を強化してこそ、中国が早まったことをする可能性は小さくなる」

「台湾有事」とは、ひとえに中国が台湾に攻撃してくることを指すもので、その逆はない。蔡総統の言うように「中国が早まったことをする可能性」を抑制するための「備え」や「心構え」をもつこと、言い換えれば「中国に戦争をさせないための戦い」は始まっている。

 

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。