洪水に見舞われた地方の被災者は、依然として懸命な「自救(自力で、なんとかする)」を強いられている。地方政府から被災民への救援や補償は、皆無に等しい。
そのようななか、今月18日、河北省の被災者が、命をかけて河北省の省長の乗った車の前に飛び出し、地面に座り込み、最後には土下座までして被災民への救援を求めた。この動画がSNSに投稿され、物議を醸している。
動画のなかで、河北省廊坊市永清県の被災民らが口にした言葉は、以下のようなものである。
「私の家がなくなった。役人に言いたいことがある。役人に出てくるよう言ってくれ」
「家まで失ったんだ。車に轢かれるなんて怖くもない。いっそのこと、この車で轢いて殺してくれ」
「(あんたたち役人は)今まで何をしてたんだ。もう、ここから先へは進めないよ。この先では(被災者たちが)みんな道路で、あんたらを待っている」
「省長に聞きたい。私たちは、どうやって生きていけばいいのか。ここで土下座するよ。だから、なんとかしてくれ」
河北省の省長の車は、被災地を通りかかった時に被災民によって止められた。やがて、騒ぎを聞きつけた他の被災民らもどんどん集まってきた。彼らは省長の車を取り囲み、車の中にいたまま出てこない省長に向かって窮状を訴え、救援の手を差し伸べてくれるよう懇願して、土下座した。
動画を撮影していた村民も、大声で問い質した。
「ダム放水によって村全体が水没した。それなのに政府は無関心で、すべての政府部門と役人はずっと『音信不通』の状態だ。私たち被災民は、どうすればいいのですか?」
心のなかの怒りをかろうじて抑え、省長の車の前に出て、相次ぎ土下座する被災民。しかし、それを前にしても、省長は始終顔を見せなかった。
省長の代わりに車から降りてきたのは、省長に同行していた現地の県委書記(地元の共産党トップ)だった。県委書記は、黒い服の男数人を率いて村民たちを追い払おうとした。そのため、車を止めていた村民らとの間で、一時はもみ合いとなった。
興味深いことに、映像をよく見ると現場には交通警察がいる。この警察官は、被災民が「お偉いさん」の車の前に飛び出てストップさせるのを、なぜかこの時、阻止しようとしなかった。ただ黙って、通常の交通整理に当たっていたようだ。末端の警察官も、本来は庶民である。
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