オピニオン 上岡龍次コラム

日本の移民政策は中国による日本侵攻を容易にする

2023/08/08
更新: 2023/08/08

多文化共生へ向けた動き

岸田首相は日本人が外国人と共生する社会を国民に求めており、海外の成功例を説明した。この成功例として挙げられたのがUAEやカタールの例で、それらの国では自国民1割でも9割の外国人と共生していると説明した。

岸田首相は、こうした外国の成功例から、日本社会は外国人との多文化共生が可能であると説明し、日本で生活する外国人が暮らしやすい地域社会を進めていく必要を国民に求めた。

だがネット上では、日本に入国した外国人が神社仏閣を破壊するニュースなどを見て、自国の宗教を優先し日本の宗教を認めない価値観から不安の声が出る。さらに川口市では難民のはずのクルド人が現地で生活する国民の生活を脅かすニュースに関心を持つ様になった。

加えて、8月3日になると岸田政権は不法滞在の子供に対して一定の条件を満たせば法相の裁量で例外的に在留を認める「在留特別許可」を付与する方針を明らかにした。

これは在留資格が無く強制送還の対象になった18歳未満の子供に対して法相の裁量で例外的に在留を認めるが、在留許可の家族への付与も検討されている。

これもネットでは本来は犯罪である不法滞在を正当化し実質的な移民政策だと批判する声が出る。

UAEの現実

岸田首相は日本の労働力不足を解決する目的で外国人労働者に期待を寄せている。そこで岸田首相は外国の成功例としてUAEやカタールに注目した。どうやら首相はUAEやカタールは自国民1割で9割の外国人と共生しているので、日本人が1割だとしても多文化共生ができるサンプルモデルと見なしているようだ。

UAEでは外国人労働者の文化・風習・価値観などの共同体は目立たない。しかしUAEは自国の文化・風習・価値観を維持したまま外国人との多文化共生している様に見えるが実際は異なる。

UAE labour law reforms fail to address abuses of workers’ rightsというサイトではUAEにおける外国人労働者の実態が以下のように報告されている。

(UAE labour law reforms fail to address abuses of workers’ rights
https://www.ituc-csi.org/uae-labour-law-reforms-fail?lang=en)

 ・アフリカからの移民労働者700人が2021年6月に拘束され国外追放され、法的支援や医療支援を受けることを拒否された。

・ドバイで調査を受けた建設労働者の50%は、賃金を期日通りに受け取っておらず、十分な残業代も支払われていないと回答した。

・労働者は、契約違反や不正行為、数千ドルの手数料、転職できないこと、国籍に基づく賃金差別などを報告している。

UAEにおける外国人労働者は奴隷であり法的支援や医療支援は無く、外国人労働者への契約違反の状態化などが報告されている。だからUAEでは外国人の文化・風習などが目立たない。それどころか共同体が生まれないように拒否されているのが現実だ。

UAEでは外国人労働者の立場は最悪で、契約違反や賃金不払いなどが横行している。さらに彼らは自分の意志で転職もできない立場であり、UAEは外国人労働者と共生しておらず多文化共生とは真逆の世界になっている。

不法滞在の子供を救済する

一方、日本には外国から入国したが不法滞在になった外国人が多い。さらに不法滞在の間に結婚し子供を産んだ家族もいる。すると不法滞在の親は日本の収容施設に収監されるか、子供が親の国へ強制送還される可能性が有る。

親は短期滞在や留学の在留資格で入国し在留期間が過ぎて不法滞在になった。次は難民認定申請を繰り返して日本に留まり結婚と出産をしたケースが多いとされる。

これらの子供は日本の学校に入学し日本語しか話せない子供が多いので強制送還しても親の国では生活が困難とされる。そこで親と引き離せば子供が生活できないことから人道的な配慮が求められた。

この流れで岸田首相は不法滞在で強制送還対象になっている子供に一定の条件を満たせば法相の裁量で例外的に在留を認める「在留特別許可」を付与する方針を明らかにした。さらに不法滞在の親への付与も検討されている方針を明らかにした。

子供は日本語しか話せず強制送還されると親の国では生活が難しい。これは人道的な視点から救済が必要だとされるが、これは不法滞在をした親の責任であり日本の問題ではない。

犯罪であるはずの不法入国・不法滞在は正当化され、外国人は入国したら日本で子供を産むと家族単位で永住ができることを意味している。このためネットでは実質的な移民政策だと批判の声が出る。

移民自治の例

日本は産まれた国ではなく父母の国籍を継ぐ血統主義を採用している。だが岸田首相は不法滞在だとしても日本で産まれた子供に「在留特別許可」を与えようとしている。さらに親にまで「在留特別許可」が与えられるなら、日本は血統主義から産まれた国の国籍を持てる出自主義への道を拓こうとしている。

今は200人以下の子供に適用されるが今後拡大される可能性が有る。そうなると外国人の中には「在留特別許可」を得るために意図的に日本に入国し子供を産む可能性が有る。

なぜなら悪用すれば子供への救済が親にまで適用されるので日本の安全保障に影響を与える可能性もでてくる。

簡単に言えば、日本に入国してから子供を産んで家族単位で「在留特別許可」を日本政府から得る。これで親は「在留特別許可」を持つから日本での就職が可能となり生活の基盤を得られる。

同時に町単位で外国人が多数派になると日本人は少数派になり外国人自治に移行する可能性が有る。多くの移民を受け入れ、国を盗られた最近の例としては、ソ連が隣国へ行った国盗りが挙げられる。

ロシアはソ連時代から隣国のジョージアとウクライナへ国民を移民として送り込んでいた。そしてソ連が崩壊し今のロシア連邦に変わる頃にジョージア北部とウクライナ東部でロシア系移民が現地民よりも多数派になった。

するとジョージア北部のロシア系移民は移民自治を求めて選挙を行なう。その後、ロシア系移民が多数派だから移民自治が成立し、さらにロシア系移民は祖国への帰属をプーチン大統領に求めた。するとプーチン大統領は自国民保護を名目にジョージアへ軍隊を派遣し、2008年のジョージア・ロシア戦争に至ることになった。

今のロシアによるウクライナ侵攻も同じでウクライナ東部のロシア系移民が移民自治を求めた。これでウクライナ人が反発したがロシア系移民は迫害を受けていると喧伝。さらにプーチン大統領はロシア系移民の保護を名目にウクライナ侵攻を行った。

この様に安易に外国人を受け入れると移民自治に至る。さらにヨーロッパ各地で不法移民が現地民の生活を脅かしていることが報告されている。最近ではフランスで移民系が暴動を起こしたことが知られている。

台湾有事ではなく日本有事の可能性が高い

岸田政権は人手不足を理由に外国人労働者の受入れを増加させる方針だ。国民は雇用を求めているが、企業側は派遣社員を使うことが知られている。

真に人手不足ならば派遣社員ではなく正社員として採用されるはずだ。このため安い賃金で働く外国人労働者を求めている可能性が有る。

最近の日本国内では日本人と外国人によるトラブルが目立ち、難民が徒党を組み現地の日本人の生活を脅かすことも報告されている。

この様な時に日本が血統主義から出自主義へ移行すると日本の安全保障へ悪影響を与える可能性が高い。今の日本は外国人が独自の共同体を作り日本人が生活を脅かされる流れができている。これは外国人自治であり日本から国盗りができることを意味する。

さらに危険なことは、日本政府は外国人が日本の土地を簡単に買える様にしていることだ。実際に沖縄から北に25km離れた屋那覇島の一部が中国人により購入されている。さらに北海道各地で中国人が土地を購入していることが知られており安全保障の観点から危険視する声も出ている。

日本の法律では外国人だとしても土地の所有権が守られるから警察だとしても容易には手が出せない。ロシアはジョージアとウクライナ東部で移民を用いた選挙に至るまで数十年を要したが、日本では土地購入と「在留特別許可」を悪用すれば外国人が家族単位で生活するだけで簡単に外国人自治が行える国盗りとしてのエリアが発生する。

これを中国から見れば難易度の高い台湾侵攻よりも難易度の低い日本侵攻を行う可能性が高い。何故なら台湾軍が防衛を固めており人民解放軍を迎撃する手段を整えている。

それに対して日本政府は中国との戦争は可能性が低いと見なし、国防をアメリカに依存している可能性が有る。

常備軍の人数は総人口の1%が限界とされているが、少子高齢化を考慮しても自衛隊総兵力は約80万人が最大であり約50万人が軍縮レベルになる。今の自衛隊総兵力は約23万人だから軍縮レベル以下の戦力。

日本政府が自衛隊を独立国家としての体裁を整えるだけの存在と見なしていれば日本は最低限の戦力で済ませられる。しかも在日米軍が展開しているので日本有事になればアメリカは日本を守るために在日米軍を使うと当時にアメリカから軍隊を派遣すると見ている。仮に日本政府が自衛隊を使って外国との戦争に備えているなら自衛隊総兵力を軍縮レベルの50万人にしているはずだ。

ならば中国は人民を日本に送り込んで中国人自治で間接的な日本侵攻が簡単に行える。さらに中国が積極的に日本侵攻を行なうのであればジョージアでロシア系移民が用いた手口を使うこともできる。

それは中国人自治を行なうが日本人から反発を受けて安全が脅かされているので中国に保護を求める手口だ。すると中国は自国民保護の名目で日本の中国人自治区に人民解放軍を派遣することができる。

この様に今の日本は中国人自治が簡単に行えるだけではなく、人民解放軍を日本に引き込めるリスクを自ら高めている。ならば侵攻が困難な台湾侵攻よりも簡単に国盗りができる日本侵攻を選ぶ可能性が高い。仮に中国が自国民保護を名目に日本に人民解放軍を派遣しても在日米軍は動くことは難しい。

なぜならアメリカも自国民保護を名目に軍隊を派遣しているから人民解放軍を止めることはできない。仮に止めるなら日本政府からの要請が必要となる。

中国が日本侵攻を実行するとすれば中国人自治に留めるか人民解放軍を派遣する積極案のどちらか。この様に中国は中国人自治だけで日本から国盗りを完了したことになるから台湾侵攻よりも日本侵攻は簡単なのだ。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。