環境、社会、コーポレートガバナンス(ESG)イニシアチブは、当初から政治的かつ党派的なものだったが、米国の約30州で、これらの取り組みを抑制するための立法措置が進められているため、ESGに対する企業の熱意が萎もうとしている。
最近の調査によると、ESGやDEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)と重複する呼称の「企業の社会的影響」チームのほとんどは5人以下のメンバーであることが多く、経営幹部からの賛同も少ないため、より多くのストレスを感じるようになっている。
コーポレート・シチズンシップ・プロフェッショナル協会が、こうしたチームに関する調査を4月に実施し149社から回答を得た。このほど、その結果が第4回年次調査として発表された。
「調査の結果、専門職が継続的な不安定さと変化を経験しているため、社会に肯定的な影響を与え、主要な利害関係者の期待に応えるために必要な、エネルギーと能力を維持できなくなっている可能性がある」と協会は述べている。
回答者の大多数は、責任は増えたがリソースは増えていないと述べ、チームが長時間労働していると答えた人が61%、燃え尽き症候群に陥っていると報告した人が50%であった。
企業の社会的責任チームは、従業員のボランティア活動を組織するなど、ESGチームやDEIチームよりも幅広い責任を持つ傾向がある。回答者の少なくとも3分の1は部門が一つになっていると述べたが、3分の1の企業はこのイニシアチブのために別の部門が発足したと述べた。
調査によると、ESGに対する経営幹部の参画度合いは44%だったが、内容についての理解はわずか39%だった。
環境の持続可能性については56%の企業が最優先事項としており、これにK-12(幼稚園から12年生まで)教育の53%、人種的正義と平等の44%、男女平等の40%が続いた。
調査によると、各企業は、これらの部門に対して測定可能な成功を要求する傾向が増え、経営幹部からの監視が強まっている。一方で、部門長の交代、離職、レイオフなど「不安定さと変化を」経験している。
チームのほぼ半数(47%)がリーダーシップからの賛同を望んでおり、67%はチームのスタッフを増やしたいと考えていた。
また、報告書は、ESGに対する最近の政治的な「反発」もあって、経営陣の意識と関心が一時的にではあるが影響を受けた可能性を指摘していた。
バック ラッシュ
ESGを推進したり反対したりする党派的な努力は微妙なものではなかった。
今月初めに、HSBCのアナリストが「米国では明らかに反ESGの感情が高まっている。私たちの見解では、これは主に政治的な流れに乗ったものであり、米国に限られた現象のようだ」と報告していた。
調査によれば、北米のファンドで、持続可能性を一義的、二次的な目標と回答した割合は37%から25%以下に減少し、44%がESGのためとする割合が昨年は低下したと報じた。
この分野における政治的圧力が連邦および州レベルで高まっている。
現在、バイデン大統領は、全国でキャンペーンツアーを行っている。「バイデノミクス」の成果を強調し、エネルギーやインフラに対する大幅な政府支出と投資が生み出す雇用を大げさに宣伝している。
ある産業に限って言えば、規制要件を満たすために、自動車メーカーは多額の投資をして、生産台数の3分の2をEVに転換することを余儀なくされるだろう。新たな雇用が創出されるかもしれないが、それには高額な代償が伴う。ある計算では、5万ドルの賃金を支払う「グリーン」な雇用を1つ創出するために700万ドルが必要だと見積もられている。
LinkedInで求人検索すると、「持続可能性」では14万1千以上、「多様性」では22万3千以上がヒットする。最近のウォール・ストリート・ジャーナルの記事では、ESGやDEI的な仕事を求める多数の新卒者とバイデノミクスとを関連付け、この分野で学位を取得する学生が増加していることにも言及している。
一方、州は、教育とビジネスの両方でDEIやESGと戦っている。多くのシンクタンクが教育からDEIを削除するための「モデル法案」を発表しており、州議会議員はそれを使用している。
国内の約半数の州では、DEIを何らかの形で抑制する法案が提出または承認されている。DEIに対する政府からの資金援助がなくなったり、学校内のDEI事務所が全面的に禁止されたりしている。
(翻訳・大室誠)
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