「教育は子供、家族、ひいては民族の未来に関わる。しかし中国においては、子供の健全な成長は学校教育の真の目的ではない」ーー。
そう語るのは、今月18日にエポック・タイムズの取材に応じた羅長さんである。現在、米国に在住する羅長さんは、河南省焦作市の公立中学校で長年にわたり国語教師を務めてきた。ベテランの元教師である羅長さんは「中国の学校は、中国共産党の洗脳基地だ」と強調する。
1989年の学生運動に参加したこともある羅さんは、中国共産党による洗脳教育を受けている我が子を見て、長く苦しんできた。そしてついに「これ以上、子供を畸形的な教育の犠牲にはできない」と決心し、羅さんは今年2月、妻子を連れて米国へ密航し、亡命した。
「密告の恐怖」におびえる現場の教師
数十年にわたる自身の教師生活を振り返り、羅さんは中国の教師が置かれた苦境について、このように明かす。
「教師たちは、学校が教育を重んじなければ子供たちが健全に成長できないことを理解していた。だが、教師たちの願望は政治的な赤い線によって阻まれている。中国共産党は、政治を最優先させるよう、我われ教師に求めるからだ。教師は決められた通りのことしか教えられず、もし党の要求に沿わないことを学生に言えば、すぐに密告されて処分を受けることになる」
羅さんはかつて、学校の職員会議で「教育の究極の目的は、子供たちが完全な人間になることであり、学校教育は政治を重視すべきではない」と発言したことがある。
このタブー発言で、羅さんは「思想が党の政策と矛盾しており、重大な問題がある」と批判され、公に「自己検討」を行うよう要求されたという。羅さんが受ける仕打ちを目撃した他の教師たちは、震え上がり、それ以来思っていることを言えなくなった。
羅さんによると、教師の立場が党の思想と完全に一致するよう求めており、学校で(教師は)毎週のように党の文書や動画を見るなどの「政治学習」に参加させられるという。たとえ学校が夏休み中であっても、教師たちは政治文書の学習を強いられるのだ。
生徒を包む全てが「仕組まれた洗脳ツール」
羅さんによると、中共の洗脳ツールは教科書だけではない。生徒が受ける試験や教室環境など、全てが仕組まれた「洗脳ツール」だという。
中国の小学校から高校までの全ての教科書のなかには、必ず中国共産党が指定する内容が含まれている。小学生には「捏造された英雄物語」を聞かせ、中学生になると「洗脳的な内容」を植え付ける。高校生には「中共党首の理論的な内容」を学ばせるという。
教科書のほかにも、学期ごとの試験も洗脳を強化する方法の1つになっている。試験問題の一部は記述式の「自由回答」であっても、求められる答えには押さえるべきポイントがある。つまり、テストの点数を取るためには、中共が是認するポイントに言及しなければならない。学生が、思ったことを自由に書くことは許されないのだ。
数学の授業までも、洗脳を支えるツールの1つになっている。それは学生に「数学的な考え方」を教えるのではなく、とにかく大量の問題をやらせて「時間やエネルギーを消耗させること」に目的があるという。つまり、学生の「考える時間」をなくすためにある。これが中国の学校で実際に行われている数学の授業なのだ。
教室の環境も洗脳教育に利用されている。教室に貼られたスローガンや毎週更新されるポスターには、すべて共産党指導者の肖像と革命関連の短い物語が載っている。
「中国共産党は、教育系統を利用して子供たちの心身をコントロールする。あらゆる手段によって、子供たちを共産党というマシンの歯車の一つになるよう洗脳している」と羅さんは指摘する。
本来の意味での教育を軽視した結果、中国の学生は心身ともに大きな代償を払うことになった。統計データによれば、中国で「うつ」を抱える青少年は24.6%に達しているという。今年3月20日の前後5日間だけでも、天津市では7人の学生が飛び降り自殺している。
「中国共産党こそ邪教だ」
中国共産党が、そこまでして学校教育をコントロールする理由は何か。元教師の羅長さんは、次のように言う。
「現在の中国の教育は、人間性に反した、飼い慣らしである。中国の過去数十年の教育は、全て政治的な目的によるもので、その結果、多くの過激な愛国主義者(小粉紅)をつくった。彼らは物事を論理的に判断することができず、常識もなければ善悪の区別もつかない。異なる視点を理解しようとせず、ただ盲目的に、いわゆる(党の)正しい視点を受け入れ、中国共産党の武器にされている。つまり中国共産党は、人民を経済的な搾取対象としているだけでなく、政治的な武器や弾よけにも利用しているのだ」
その上で羅長さんは「中国共産党こそ邪教だ」と訴える。
その理由は、官製メディア「人民日報」が羅列した邪教に関する12の定義、つまり「思想統制」「情報統制」「外界を邪悪視する」などの全てが、まさに中国共産党の本質として完全に当てはまるからだ、という。
中国における学校教育も、まさに子供や学生に対する「飼い慣らし」の第一歩であるとすれば、学校は教育の場ではなく「(邪教である)中国共産党の洗脳基地だ」とする羅長さんの指摘は、その現場で苦悩した経験をもつ元教師ならではの切迫感と、十分な説得力をもつと言えるだろう。
本記事の最後に、いま最もその苦悩を強いられているのは、香港の学校で教える多くの善良な教師であることを付言する。
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