米国のチャック・シューマー上院院内総務は16日、医療用麻薬フェンタニルを米国に持ち込む役割を果たしているとして、中国に対して新たな制裁を科す超党派の修正案を国防権限法に盛り込むよう働きかけると述べた。
フェンタニルはヘロインの約50倍強力と言われるオピオイドの一種。司法省によると、2022年に過剰摂取で死亡した米国人は約11万人に上るとされ、フェンタニルの流入が大きな社会問題となっている。
シューマー氏は記者会見で、現在米国内に出回っているフェンタニルの多くは、中国政府の全面的な承認と了解の下、中国の生産拠点からもたらされていると指摘。こうした問題に対処するため、2024年国防権限法(NDAA)の年次国防予算に修正案を加えることを支持し、米国内でのフェンタニルの蔓延を国家非常事態と宣言し、中国共産党政権に制裁を科すと述べた。
米国におけるフェンタニルの蔓延は、近年、民主・共和両党の懸念事項となっている。今年初旬には、民主党のシェロッド・ブラウン上院議員と共和党のティム・スコット上院議員が「フェンタニル撲滅・麻薬抑止法案(FEND)」を提出しており、今回の制裁措置もこの法案に基づくものだという。
フェンタニル密輸における中国の役割
米中経済・安全保障問題検討委員会(USCC)は2021年に発表した報告書の中で「米国に流入する違法なフェンタニルおよび関連物質の主な供給源は中国」と指摘した。その多くがメキシコで合成され、米国に密輸されている。
報告書はまた、この分野における中国共産党政権の協力は「限定的」と強調。中国規制当局はフェンタニル原料の製造場所への立ち入り検査を妨害し、違法業者の隠蔽工作を可能にしていると述べた。
米ブルッキングス研究所のバンダ・ブラウン氏によると、中国政権は「地政学的な関係に関連付けて麻薬対策の協力の有無を判断している」という。
「米中関係が悪化するにつれ、中国の対米協力意欲は低下した。2020年以降、米国の麻薬撲滅活動に対する中国の協力は大幅に低下した。2022年8月、中国は米国とのすべての対麻薬・法執行協力を停止すると公式に発表した」と述べた。
司法省は6月、フェンタニルの原料となる化学物質を違法に取引したなどとして中国企業4社と中国人の社員ら8人を起訴したと発表した。フェンタニルの原料を米国に持ち込む違法取引では、中国企業と中国人が起訴されるのは初めてとなった。
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