ECサイト「シーイン」、元米副大統領の息子をロビー活動に

2023/07/14
更新: 2023/07/14

世界で爆発的な人気を誇る中国ファストファッションブランド「シーインSHEIN)」は、劣悪な労働環境やデザイン盗用が米議員に問題視されている。同社は昨年から米国でのロビー活動に50万ドル(約7050万円)以上を費やしている。

米国議会の公開記録によると、シーインは連邦政府および地方の立法府と行政機関へのロビー活動のために、Akin GumpとHHQから8人のロビイストを雇った。なかでも注目されるのは、ダン・クエール元副大統領の息子であるベンジャミン・クエール氏だ。

高まる批判

ブルームバーグの分析によると、シーインは米国のファストファッション市場で最大のシェアを占めるようになった。昨年、シーインの評価額は1千億ドル( 約14兆2106億円)に達し、H&MとZARAの評価額の合計を上回った。フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、今年初め、この評価額は640億ドル(約8兆9324億円)に引き下げられた。

ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、シーインは自社のアパレル販売に加え、米アマゾンの販売モデルを真似て、他の販売業者にもプラットフォームを提供する計画だと報じた。

昨年10月に発表された英国「チャンネル4」による調査報道『SHEINマシーンの裏:語られない事実』によれば、SHEINの労働者は1日18時間の労働を強要されるほか、休みも月に1回程度しか取れないうえ、失敗したら賃金不払いのペナルティを課されていたことを明らかにした。

シーインはこの報告を認め、社内調査の結果、2つのサプライヤーで「容認できない」労働条件が見つかったと述べた。

さらに、一部の米下院議員は、シーインの製品がウイグル族による強制労働で作られた新疆綿を使用していることを懸念している。シーインは強制労働の疑惑を否定し、新疆ウイグル自治区にサプライヤーはおらず、強制労働に対して「ゼロ・トレランス」であると表明した。

他に、ファストファッション事業は批判が高まっている領域である。環境保護論者や研究者たちは、安価で大量生産され、耐久性が低くすぐに流行が過ぎ去るファッションアイテムは、環境に大きなダメージを与えると指摘している。

「シーインのような外資系企業であれ、外国政府であれ、批判が高まり始めると、率先して議会が何もしないように、議会や米国政府全体が自分たちのビジネス利益に影響するようなことをしないようにしようとする」と、ロビー活動と外国の影響力を研究する米国クインシー研究所の研究者、ベン・フリーマン氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)に語った。

元副大統領の息子がロビー活動

シーインは現在8人のロビイストを雇っており、全員が米国政府での経歴を持っていそのうち5人は米国ロビイスト業界の重鎮であるAkin Gumpに所属して、3人はHHQに所属している。HHQのパートナーであるベンジャミン・クエール氏は、ブッシュ政権時代の米国副大統領ダン・クエールの息子である。 ベンジャミン・クエール氏自身もシーインのためにロビー活動を行った。

Akin Gumpの5人のロビイストは、シーインの代理として米国下院と上院の両方でロビー活動を行った。ロビー活動の課題には、「帽子・衣料品業界およびネット小売業者に影響を与える」立法・規制事項が含まれていた。

HHQのロビイストは、帽子・衣料品業界とネット小売業者に影響を与える立法・規制事項に関しても両院に働きかけた。また、そのロビー活動に「米国におけるシーインのプレゼンス、経営上の足跡、経済的影響について」話すことも含まれている。

海外ロビイングの専門家であるフリーマン氏はVOAの取材に対し、ベンジャミン・クエール氏のようなロビイストはシーインにとって非常に重要だと語った。

「全てのロビイストが同じというわけではない。ベンジャミン・クエール氏は特別で、自身が元連邦議会議員であり、かつ元副大統領の息子である。彼の名前は政界で知られている、一般的なロビイストよりも顔が広い」と同氏は指摘した。

「シーインを潰せ」

シーインがワシントンで何十万ドルもロビー活動に費やすなか、反シーインのグループが同様の行動を起こしている。

「Shut Down Shein(シャット・ダウン・シーイン)」は今年3月から表舞台に登場し始めた。同団体のウェブサイトは 「シーインの危険性と非難されるべき行動に対する認識を高めることに努める、志を同じくする個人と企業の急成長する連合」と自称している。

「シャット・ダウン・シーイン」は、シーインが米国にとって 「脅威 」である主な点として、強制労働で作られた新疆綿の使用と、米国ユーザーのデータを収集しているという疑惑を挙げている。

2018年、シーインのユーザー3900万人分のデータが盗まれた。 シーインの親会社であるZoetop社は、データ流出への適切な対処を怠り、データ流出の重大性を偽っていたとして、ニューヨーク州から190万ドル(約2億6434万円)の罰金を科された。

「シャット・ダウン・シーイン」のエグゼクティブ・ディレクターであるチャピン・フェイ氏は、VOAに対し、私たちの団体の最優先目標はシーインに強制労働による綿花を使用していないことを証明させることだと語った。「少なくともこれらの質問に答えるまで、シーインの上場手続きは勧められない」

「シャット・ダウン・シーイン」はロビー活動会社Actumを雇い、ワシントンでロビー活動を行っている。

連邦議会の記録によると、「シャット・ダウン・シーイン」は2023年第1四半期に、「外国企業規制」と「不当労働行為」に関する米国証券取引委員会へのロビー活動のため、Actumに3万ドル(約450万円)を支払った。

ロビー活動の観点から、クインシー研究所のフリーマンは、「シャット・ダウン・シーイン」に勝算はないと見ている。

「Actumはロビー活動の分野では中小企業だ。 大きな影響力を持つとは思えない。Akin Gumpやベン・クエール氏と比べれば、Actumには確かに対抗できるロビー活動力はない」と同氏は指摘した。
 

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