中国で国家政権転覆罪に問われ服役した人権派弁護士、王全璋氏。しかし王氏一家に対する中国当局による嫌がらせは、今も続いている。米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)16日付などが報じた。
北京に住む王氏と妻、今年10歳の息子の一家3人はここ数カ月間で、地元公安による嫌がらせなどにより十数回も引っ越しを余儀なくされてきた。
4月には、当局の指示により、アパートの家主は王氏の家の電気やガスを止めたうえ、家主ら十数人が王氏の家に押し入って、家の中のものを破壊したり王氏を罵るなどした。
この場面を目撃した王氏の息子は恐怖で震えが止まらず、大声で泣いた。その結果、王氏の妻と息子は心労のあまり病に倒れた。
延々と続く「当局の執拗な嫌がらせ」
その後も、地元警察は繰り返しプレッシャーをかけてきた。王氏一家が住む家を訪ねては「この家のなかで違法ドラッグをやっている者がいる、と通報を受けた」などの口実をつけ、玄関を強行突破しようとするなどしたという。
当局による嫌がらせは王氏のみならず、王家に住居を貸した家主にも及んでいる。家主は何度も警察署に呼ばれ、そのせいで持病の高血圧が悪化し、下痢や高熱などを引き起こした。
今月14日、複数名の地元警察が再度、「不法侵入の疑いがあるとの通報を受けたため、身元確認を行う」として王氏の新居に強引に押し入った。王氏一家は2日前の12日に、北京市昌平区にある、この賃貸マンションに引っ越してきたばかりだった。
警察は、王氏一家が提示する賃貸借契約書や家主による証拠の自撮り動画があるといっても、信用しなかった。まるで、始めから無理難題を押し付けるつもりで来たようであった。
警察は「一家が合法的な居住者であるとは証明できない」として、48時間以内に家を貸した家主本人、またはその親族が家主の身分証や戸籍証明、不動産所有証を北京の王氏の住む住宅に持ってくるよう要求した。
要求通りにできなければ「強制的に追い出す」と警察は脅迫する。しかし、このマンションの家主は米国在住であり、そのような証明書類を本人が持ってくることなどできるわけがない。
家主は今月11日に「王家と結んだ賃貸契約(5年間)が有効であること」を証明するための自撮り動画を撮っていた。その動画を提示することで、その時は大事には至らなかったが、警察の目的はもともとそのような「要件」ではなく、ともかく王氏に圧力をかけることにある。案の定、すぐに次の一手がきた。
「怪しい男3人」が玄関を塞いだ
同じ日(14日)の夕方である。王氏はごみを捨てるため家を出て戻ったところ、怪しい男3人に付きまとわれ、うち1人はわざと床面に横になって、足で玄関口を塞いだ。もう1人は王氏が家に入れないよう、乱暴に阻止しようとした。
床に寝転がった若い男は「足を打たれてケガした」などとウソ泣きしている。嫌がらせも、ここまでくると役者級である。
翌日(15日)朝6時過ぎ、王氏の家の電気は突然断たれた。マンション前にも監視要員が張り付いている。王氏のツイッターによると、ほかにも警察はインターホンのレンズ部分にペンキを吹きかけるなどして中から見えなくさせたり、また配達業者に荷物を届けさせないなど、あらゆる嫌がらせを行っているという。
引っ越し後「10日間に5回、電気を断たれる」
王全璋氏の妻である李文足さんは自身のツイッターに「20日午後、扇風機が突然停止した。部屋の照明もつかない。家の外にある配電盤の扉には、またもチェーン鍵がかけられていた」「この家に引っ越してきてから10日になるが、その間5回も電気を断たれた」と明かした。
電気が止まったのは王氏の家だけで、同じ配電盤をつかう隣家は停電していない。機械の故障ではなく、誰かが意図的に王氏の家のブレーカーを落とし、配電盤の扉にチェーンを巻いたと考えられる。
「弱者の味方」を信条とする人権派弁護士
中国の人権派弁護士である「高氏」は15日、エポックタイムスの取材に対し、「中国当局が用いる脅しや嫌がらせについて、外部がその実態を知ることは困難だ。しかし、王全璋氏一家がその過程を記録して公開することは、とても有意義な事だ」と指摘する。
「中国政府が、いかに法を踏みにじっているか。その醜い姿を世界に知らしめることができる」と高氏は述べた。
王全璋氏は、数々の冤罪や法輪功弾圧事案を手がけるなど「弱者の味方」を信条とする弁護士だった。
2015年7月、中国全土で、王氏をふくむ約300人の人権派弁護士や活動家が一斉に拘束された「709の大拘束」事件以来、王氏も1,000日以上消息が途絶えていた。3年近いその期間中、王氏は中国当局から電気ショックなどの拷問を受けていた。
王氏は、後に国家政権転覆罪に問われて4年6カ月の実刑判決を受け、昨年4月まで服役した。出所後は家族との再会を果たしたが、弁護士資格は剥奪され、いまも当局の厳しい監視下に置かれている。
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