今も続く中国共産党による「洗脳教育」 伝統文化を破壊した、道徳なき国家の惨状

2023/06/06
更新: 2023/06/06

「世界モンゴル人連盟」のツイッターアカウントは先月30日、このごろ華人圏内で広く拡散されている「目つきの鋭い子供の動画」を転載した。

その動画では、まだ小学生とみられる男子が、まるで戦狼外交の某氏のように鋭い目つきでカメラに向かい、激しい言葉をぶつけている。

なお、ここに映っている男子児童は、周囲の大人に洗脳された結果そのような「目つき」になってしまった。本記事の主題に関係するため、動画はそのまま添付するが、この子の人権が十分に保護されるべきであることは言うまでもない。

洗脳教育の果て「ロボット化した子供」

投稿者のコメント欄には「中国反日恨み教育下の子供の目線」「目があまり動かない」「米国人が(に)尊い命を大事にしろと脅迫してる」「成長したら中国海外警察署のいい人選」(原文ママ)などと書かれている。

その首には、少年先鋒隊の象徴である赤いネッカチーフ「紅領巾」が巻かれている。動画の中でこの子は、まっすぐカメラに向かい、こう述べた。

「中国人をなめるな。どんな脅迫も効かないぞ。その人間たち(中国語:某些人、ここでは米国人を指す)はよく知っているはずだ。冷戦思考を放棄し、デマや中傷による卑怯な攻撃をやめて、再び国際社会と協力する正しい道に戻ってこそ、より多くの米国人の貴重な生命を救えるのだ」

ほとんど瞬きもせず、一気にまくし立てる男児。決められた台詞をよどみなく言うには、さぞや練習したに違いない。しかし、その姿はもはや一種の「機器」であった。

洗脳教育の成果といってもよいが、これほどのレベルに達するのは、北朝鮮の例のほかにあまり見ない。

関連動画に寄せられたコメントは「この子は終わった」「完全に(中共によって)毒された」「かわいそうに」といった声が圧倒的だった。

くり返すが、この男児を批判するのではなく、子供を使ってこんなプロパガンダを言わせるものたちこそ批判されるべきであろう。

反日教育で「党に従う子供」を作れ

中国教育部(省)は2021年8月、国内の小学校から大学院までの教育課程において「習近平氏の共産主義思想を教える国家プログラムを導入する」と発表した。

そのなかで「国内の若者の間に『マルクス主義の信念』を確立させ、党に耳を傾け、従うという決意を強固にすることが目的だ」と同省は強調している。

中国の学校教育および教科書のなかでは、特に「日中戦争(中国では抗日戦争)」が重要視されている。つまり、かつての日本軍の残虐性を強調し、反日思想を生徒に徹底して植え付けることが、主要な教育目標になっていると言ってよい。

中国政府は、こうした歴史教育は「愛国主義教育」であり「反日教育」ではないと主張している。しかし中国では、日本人を蔑称の「日本鬼子(リーベングィズ)」と呼ぶ反日教育を幼稚園から行っているのが実情だ。

周知のように、中国には「抗日」をテーマにした映画やテレビドラマがあふれている。実際に日本軍と戦ったのは主として国民党軍であるはずだが、なぜかドラマのなかでは共産党軍が見事に勝利する筋立てになっている。

学校教育の場においても、中国各所に設けられた「抗日記念館」への集団見学が行われ、その体験をテーマとする感想文や絵画のコンクール、さらには抗日の演劇発表会まであるほどだ。

(幼稚園の出し物で「日本軍」とみられる軍服を着て、熱演する園児たち。大人たちはゲラゲラ笑っている)

 

(日本兵のワラ人形にむかって「銃剣刺突」をする中国の小学生) 関連動画はこちら

日本兵のワラ人形に「銃剣刺突」するのは、まだ低学年とみられる小学生である。動画の字幕には、安土桃山時代の海賊である「倭寇」の文字もみられる。

時代錯誤も甚だしく「これが教育か?」と疑わざるを得ないが、中国の小学校では本当に行われているのだ。

独裁国家は、常に外部に敵をつくることによって、崩れそうな内部を団結させるとともに、民衆の不満を外敵に向けさせることで政権の安定を保とうとする。

中国共産党の独裁国家である中国は、まさに「反日」を最大限に利用して、とっくに滅ぶはずであった体制を今日まで延命させてきた。

ただし日本もまた、そうした中国共産党の悪魔的本質を感知できず、心情的な「日中友好」にほだされ、贖罪意識を刺激され、あるいは経済的利益に引かれてこの50年を過ごしてきたことは否めない。

なお、中国の学校教育の場で特に「反日」が大々的に推進されたのは、89年の六四天安門事件の後、江沢民が党総書記になってからである。

「醜悪・性的描写・低俗」なんでもありの教材

中国の学校教育の問題は、極端な反日教育ばかりではない。中国共産党が政権を奪ってから74年、教育の場で全面的に行ってきたのは、共産主義思想と対極にある中国の伝統文化や伝統的価値観の徹底的な破壊であった。

その結果として、今の中国が、救いようがないほどの「道徳なき国」になったのは、悲しむべきことながら必然であったかもしれない。

中国語で、日常的な範囲内でのマナー違反を「不文明」という。そうした「不文明」の自覚をもたないことが、例えば日本に来る中国人観光客のマナーが悪くて日本人の顰蹙を買ったとしても、当人たちは全く知らないことになる。中国では、それが「当たり前」だからだ。

そうした「無自覚の不文明」を招く原因の一端は、最近中国で使用されている児童むけ教材や児童書にも見られることが、保護者からの指摘によって知られている。

例えば、そうした児童むけ教材に使われた挿絵が「醜い」「性的描写がある」「低俗すぎる」。あるいは内容に関して「中国の歴史や文化を歪曲したものだ」という。さらには「入れ墨」や「集団自殺」など、児童対象とは考えられない内容が含まれるとして、複数の保護者から不安と憤慨の声が上がっている。

今年3月「中国少年児童出版社」が出版した児童向け書籍のなかにも、上記のような「下品な言葉」が多く含まれていることが保護者からの指摘で明らかになった。

「児童向け書物のなかに多くの汚い言葉が使用されている」とする話題が3月30日に中国大手検索エンジン「百度(Baidu)」の人気検索ランキングにあがったほどである。

これらの書籍を出版した「中国少年児童出版社」は、中国共産主義青年団中央委員会に直属する少年少女向けの老舗出版社(1956年設立)である。

その実例の一部を、以下に挙げる。下記の画像で、ピンクの丸のなかの言葉は「他妈的(ターマーダ)」という中国語の罵り言葉。邦訳すれば「こん畜生、ばか野郎」であるが、それに性的スラングのニュアンスも加わった極めて下品な表現である。それが児童書のなかに複数あるのだ。
 

「中国少年児童出版社」の児童向け書籍のなかに、下品な言葉が多く含まれていた。

 

また、昨年7月に出版された児童書「易中天中華經典故事」シリーズのうち「倫語‧上」と題される本のなかには、挿入されたイラストがエロティック過ぎるうえ「わしは女と酒におぼれること以外、何もできない。だからこそ漢の高祖になれたのじゃ(朕除了泡姐泡吧不会別的、所以成為漢高祖)」など、非常に下品な内容が含まれていることで注目を集めた。

これが「児童むけの図書」と聞けば、目をむくばかりである。しかし、現在の中共高官の実態を反映した書物と見れば、あるいは「その通り」なのかも知れない。先述したように、不道徳とは、そもそも道徳の自覚がないところから発するからだ。

児童書「易中天中華經典故事」シリーズ「倫語‧上」の挿入イラスト。吹き出しセリフの邦訳は「わしは女色と酒におぼれること以外、何もできない。だからこそ漢の高祖になれたのじゃ」(中国のネットより)

 

また「萬大姐姐有辦法:三個醫生」と題される児童むけ絵本のなかの「扁鵲治病(扁鵲、病を治す)」の物語のイラストも「性的過ぎて子供には不適切」と批判されている。

なお、扁鵲(へんじゃく)は、中国の紀元前、春秋時代の医者で「中国医学の祖」と呼ばれるほど尊敬を集めた人物である。歴史上の偉人に関して、子供に誤解を与えるようなイラストは、やはり適切とは言えないだろう。

「萬大姐姐有辦法:三個醫生」と題される児童むけ絵本のなかの「扁鵲治病」のイラスト。

また昨年5月には、中国の教科書出版最大手で中国教育部が管轄する「人民教育出版社」が出版し、8年近くも前から使用されてきた小学校の教科書が問題視され、話題となった。

この教科書のなかに「縄跳びをする女児の下着が見える挿絵」や入れ墨の挿絵があった。ほかにも、イラストに描かれた「人物の目つきが変」「醜い」「美的センスがない」といった批判の声がSNS上で広がった。

散文詩「毒害された中国の子供」

そして2023年の今。華人圏のSNSで、ある散文詩(?)が拡散されて、広く共感を呼んでいる。

作者ははっきりしないが「50年来、中国の子供が教わってきたもの」という内容であり、中国の現行の教育を「畸形(奇形)教育だ!」と結論づけている。原文は以下の通り。日本語訳を、その下に記す。

「五十多年来,父母教的不是道德,是圆滑。学校教的不是知识,是听话。老师教的不是常识,是功利。历史教的不是真相,是流氓。新闻教的不是公正,是猎奇。抗战片教的不是反思,是仇恨。环境教的不是博爱,是冷漠。课本教的不是独立思考,是照本宣科。这就是Tmd畸形教育!」

「50何年来、両親が教えたのは道徳ではなく、円滑であること。
 学校が教えたのは知識ではなく、服従すること。
 教師が教えたのは常識ではなく、功利主義。
 歴史が教えたのは真相ではなく、流氓(ならず者、中共を暗喩する)の所業。
 ジャーナリズムが教えたのは公正ではなく、猟奇性。
 戦争映画が教えたのは(歴史の)反省ではなく、敵への恨み。
 環境が教えたのは博愛ではなく、無関心であること。
 教科書が教えたのは独立した思考ではなく、お手本通りにやることだけ。

 これが中国の畸形教育だ!」

ここで言う「五十多年来」とは、中国共産党によって「中国伝統の価値観や道徳が破壊された期間」を指していると見てよい。

もちろん「中国共産党以前の中国」つまり1949年以前の中国が、高度な近代市民社会であったわけではない。むしろ旧時代の慣習を多分にもっていたし、そうした中国の慣習は、我われ日本人の価値観とは全く異なる思考のものであって当然だろう。

しかし、そのなかで中国の庶民は、昔からの豊かで温かい人間性を保ちながら、日々よく働き、食べることを喜び、客をもてなし、子孫繁栄を祝い、のん気に、皆で楽しく生活していた。

したがって、中共が「解放前」と呼ぶ旧時代が暗黒時代であったというのは、中共が政治的に仕組んだ、全くの欺瞞である。旧時代の地主にとって代わったのは、中国共産党という、はるかに恐るべき地主であった。

中国人は本来、まことに人間らしい、魅力的な人々であったのだ。

それを著しく変形させたのが、中国共産党とその理論となったマルキシズムであることに間違いはない。

ゆえに先に引用した「畸形(奇形)教育」とは、中国人の人間性を変形させた中共の教育を指している。

写真は「学校の運動会のときにも、習近平氏の著作を読む小学生」。まことに模範的な生徒であるらしい。

以下は、ネット上に流出している中国の教育実態を映した動画の一部である。

(軍服風の制服で「拳銃の組み立て方法」を学ぶ、中国の小学生たち)

 

(中国のある学校で「自分の青春を捧げて国に尽くします。いつでも国の召集に応じて戦います!」と大声で誓う生徒たち。長い台詞を完全に暗記しており、その語気の激しさから、中共の洗脳教育の凄まじさが伺われる)

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。