中国の「愛を告白する日」に結婚するカップルの数、例年より大幅減少 幸せは遠のくばかり 

2023/05/26
更新: 2023/05/25

520」というと、日本の方々からすれば、ただの数字の羅列でしかないだろう。

ところが、中国語でこの数字(ウー、アル、リン)を発音すると、ちょっと苦しいこじつけだが「我愛你(私はあなたが好きだ、ウォ・アイ・ニィ)」に似ていると言われる。そのため中国語では、なかなか縁起の良い、楽しい語呂合わせなのだ。

5月20日は「愛を告白する日」のはずだが…

恋人同士に限らず、家族や親しい人に、自分が好意をもっていることを伝えたい場合、ストレートに「愛している」や「アイラブユー」というのは、気恥しいものである。そんな時に、愛と感謝を込めて、携帯などで気軽に「520」とメッセージを送る人も多い。

このような理由から、5月20日は「愛を告白する特別な日」となっている。実際に中国では、この日に結婚をすることを選択するカップルは多い。

そこで毎年、この日になると、結婚登記所は若いカップルで賑わうのだが、今年は例年と比べると、だいぶ「落ち着いている」ようだ。

「澎湃新聞」や「時代財經」などの中国メディアは、各地が公表した今年「5月20日の結婚登記データ」について報じている。それによると、今年は(昨年と比べて)「断崖式に下落」と表現されるほどの惨状だという。今年、この日に出された婚姻届が、明らかに少ないのだ。

統計データによると、昨年と比べて、結婚登記人数の減少が顕著だった省は、湖南省でなんと74%の減少。続いて貴州省では53.8%の減少。広東省では40.4%の減少。福建省では38.28%も減少していた。確かに「断崖式の落ち込み」と言ってよい。

結婚したがらない若者たち

5月20日だけでなく、近年、中国では婚姻件数の減少に歯止めがかからない状況が続いている。若者が結婚しないことは、もはや大きな社会問題の1つになっており、人口減少に拍車をかけることから、中国政府も頭を悩ませている。

中国民政部が公表した統計データによると、中国の婚姻件数は8年連続で減少しており、2021年の件数はピークだった2013年と比べて約43%減少した。2022年の第1~第3四半期(1~9月)の婚姻件数は約540万組と、歴史的な低水準に達しているという。

中国の若者は、なぜ結婚したがらないのか。

多くのメディアや専門家は、結婚適齢期にあたる人口の総数が減少していることに加えて、結婚適齢期の若者に構造的な変化(男女の比率など)が生じていることを挙げている。端的に言うと「男性が多く、女性が少ない」のだ。

そのため、男性が結婚相手を探す上で、女性側から求められる「条件」が厳しくなる。さらには、結婚そのものにかかる費用が、近年とくに高騰していることも原因ではないかと分析している。

結婚には「大金がかかる」

実は、中国では「結婚するのは非常にお金がかかること」なのだ。結婚に関して、中国では他国にはない様々な「独自の事情」がある。

例えば、今の中国では「マイホーム購入を結婚の前提条件の1つ」とする考えが根強い。これは、とくに女性側(および女性の両親)から第一に求められる必須条件なのだ。

もちろん、党幹部などの特権階級の息子でなければ、マイホームなど簡単に買えるわけがない。庶民にはとても手が届かない不動産価格が、結婚の現実的な障壁になっていることは間違いない。

「庶民が一生働いても、大都会ではトイレすら買えない」。そんな言葉が、中国のネットではよく知られている。金持ちの家の生まれではない一般の若者には「トイレすら買えない」のだから、結婚など夢のまた夢ということになる。

マイホームや自家用車のほかに、新郎の家族が新婦の家族にお金を払う、古くからの慣習まである。この「花嫁の値段」とも言われる結納金が近年、高騰しているという事情もある。

そのため、日本以上の厳しい競争を余儀なくされる中国の若者のなかには、競争社会を忌避し、住宅購入や結婚、出産などの全てを諦めて、自分で質素に生きることだけを選択する「寝そべり族(躺平族)」になることを選ぶ人も少なくない。

結婚は激減、離婚は激増

結婚する若者が激減している一方、離婚件数は「激増」している。

ある統計によると、2020年の中国の離婚率は53%。つまり「2組に1組が離婚」ということになるが、こちらもまさに異常事態であると言ってよい。

このような状態では出生数が増えるはずもないため、かつての「一人っ子政策」など完全に忘れたかのように、中国政府は出生率を上げようと躍起になっているが、その効果は限定的のようだ。

中国共産党による不条理な政権下で、腐敗と暴力だけがはびこり、いま中国は、全ての社会的機能がもはや回復不可能なほどの麻痺状態になっている。

つまりは「人間が正しく、誠実に生きられない国」になった必然的結果として、若者たちは、自分の人生の希望まで失ってしまった。「寝そべり」は、その典型的な現象であると言えよう。

だからこそ「諸悪の根源」を完全に除去するところから始めなければ、中国の若者たちに活気が戻ることはない。いま中国の若者たちの主な関心は、ここで結婚するよりも、海外へ脱出することに向けられている。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。