メーデー連休に突入した中国 あふれる人出に宿もなく「公衆トイレで夜を明かす観光客」が続出

2023/05/02
更新: 2023/05/26

「あまりに長く出かけていないから、今回の連休には何が何でも旅行するぞ!」。そう心に決めている人は多いと、中国メディア「財経網」が伝えた。

5月1日の労働節メーデー)の前後は、日本のゴールデンウィークと同じく、中国でも大型連休となる。初夏の旅行シーズンを迎えた中国では、官製メディアが経済回復のシンボルとして「観光業の大繁盛」を大々的に宣伝するが、実は「経済的な事情で、旅行などとても行けない人も多い」とする指摘もある。

中国の観光地は「人山人海」

それでも、やはりこの時期は、旅行を主な目的とする人の動きは多い。著名な観光地は旅行者で溢れかえり、まさに人山人海(黒山の人だかり)である。宿泊できる場所が得られず、またこの時期は宿泊料金も高騰するため、飲食店や公衆トイレなどの「宿ではない場所」で夜を明かす観光客も少なくない。

アリババグループが運営するオンライン旅行サービスプラットフォーム「飛猪(Fliggy)」による不完全な統計によると、メーデー連休の期間の前後には全国で百を超えるコンサートや音楽祭が開催される。連休期間中、人気の高い一部の鉄道チケットや景勝地の入場チケットは早くから「完売」となった。航空券も一部路線で売り切れが発生し、景勝地周辺のホテルや民宿も「満室状態」が多いという。

公衆トイレや飲食店で寝泊まりする観光客

この期間、観光地周辺の宿は、ほとんど満室であるばかりでなく、宿泊料金も高騰する。そのため、観光地の公衆トイレや大型の飲食店内で一夜を明かす観光客も少なくないという。

古来、多くの漢詩の題材にもなり、伝説の仙境(仙人が住む世界)を彷彿とさせるような独特の景観で世界的に有名な景勝地「黄山(こうざん)」。その安徽省黄山市の景勝地管理員会によると「4月29日夜、当局の度重なる説得も聞かず、山の上にある公衆トイレ内には依然として約800人の観光客が寝泊まりしている」という。

また、有名な火鍋(ひなべ)のチェーン店「海底撈火鍋(かいていろうひなべ)」の店内で、食事をした後、そのまま寝泊まりする人も多い。店の前は「寝泊客」のトランクなどがあふれ、通常の食事で来店する客の妨げになっているという。

有名な火鍋チェーン店「海底撈火鍋」の店内で寝泊まりする食事客。(中国SNSよりスクリーンショット)

「価格吊り上げ」や「買い占め」が横行

手段を選ばずに利益を追求する宿泊業者や予約サイトによる各種の「汚いやり方」が暴かれて、ネット上で物議を醸している。

宿泊料金を吊り上げるために、すでに予約された部屋を一方的にキャンセルする悪質な宿泊業者や、一部のオンライン旅行予約サイトによる人気観光地の入場券などの買い占め問題が明らかになっている。

「財経網」の調査でわかった不条理な例として、メーデー休みの2日目にあたる4月30日の「上海ディズニーランドの入場券」がある。

公式アプリでは「売切れ」となっていた。しかし、ある予約サイトでは、チケットと「快速入場」などのVIPサービス込みの特別入場券が、通常価格の5倍にあたる3399元(約6.7万円)で売られていたことが判明した。同園のチケット区分のなかで最も高い「ピーク・ホリデー」価格でも、大人のワンデーチケットは通常665元(約1.3万円)である。

また 上海ディズニーランド・ホテル(上海迪士尼楽園酒店)の一部の客室は、公式アプリでは「満室」になっているにも関わらず、予約サイトによっては高値で取引されているという。

さらに航空券の購入も、ある予約サイトを利用した価格は、サイトを経由しない場合と比べて「チケットは買いやすいが、価格が高い」など、同じ便でも価格差が生じていることがわかった。

景色を遮る塀は「わざと見せないため」

いっぽう、観光客から少しでも多くのお金を巻き上げようとする、一部の地方政府に対する批判も広がっている。

中国第二の大瀑布である壺口瀑布(ここうばくふ)は、山西省から陝西省にかけて流れる黄河の急流部にあり、その迫力ある景色から「黄河の奇観」とも称されている。

ところが、景勝地である滝の両側に「高い塀」が築かれて、良い景色が見られなくなったという。滝の景色を見るには100元(約2千円)のチケットを購入して、鑑賞エリアに入らなければならないのだ。

この滝の両側に建てられた高い塀をめぐり、地元政府の当局者は中国メディアに対して「観光客の安全のためだ」と主張している。しかし、この不可解な説明には、納得しないネットユーザーも少なくない。

ネット上には「天から授かった自然の風景だ。それを見るのに、なぜ政府に金を払わなければならないのか」「結局のところ、地方政府は金を儲けたいだけだろう」「本当に観光客の安全のためならば、金網のフェンスで十分だろう。なぜ視線を遮る塀なんだ」といった非難が殺到している。

観光客にタダで風景を見せないために設けられた「壁」。(ネット写真)

これは「一時の繁栄」に過ぎない

メーデー前後の連休期間中、「観光業が大繁盛している」などの様子が、中国の各メディアによって大々的に宣伝されている。

そのようななか、米政府系放送局のラジオ・フリー・アジア(RFA)は「経済不況による収入減などで、とても旅行どころではない人も少なくない」と報じている。

RFAはまた、経済アナリスト・蔡慎坤氏の分析を引用して「連休経済がもたらす賑やかさは、一時の繁栄でしかない。連休が終われば、必然的に、さらに長期間にわたる不況が訪れるだろう。そのため、年に数回しかない連休だけで中国経済を判断し、楽観視するのは、まことに純粋な自己欺瞞だ」と指摘した。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。