今年の主要7カ国(G7)首脳会議の議長国を務める日本は、LGBT(性的少数者)権利保護をめぐり他6カ国との姿勢を統一させるため、LGBT理解増進法案の成立に向け動いている。いっぽうG7の一角を占める英国首相の最近の寄稿文は、日本の取り組みに一石を投じる可能性がある。
「どの親も自分の娘が安全で保護された環境で成長することを望んでいる」ーー。英スナク首相は24日、英紙エクスプレスへの寄稿文でこう述べた。「父親として女性、少女の権利保護は個人の責任だ。首相として国家が女性への保護の提供を確実にすることが責務だ」と語った。
娘を持つ父親でもあるスナク氏は批判を顧みず「国家には女性保護の責任あり」と強調したのだ。
英衆議院のダフィールド議員とケイツ議員は首相の論考を高評した。英国でも政治家がLGBT権利に意見を呈することはバッシングの嵐に遭う可能性があり、慎重さが求められる。にもかかわらず、女性の安全に明確な立場を示したスナク氏は「とても勇敢」と述べた。
女性議員の両氏は「過去100年以上の激しい戦いを経てようやく確立した」のが女性の権利だと強調。女性の避難所やレイプ危機センターなどの設置を提案しており、これにスナク政権も支持している。
スナク氏はLGBTへの理解を示しつつ、もたらされる課題も直視すべきとし、安全の面から女性空間を保護する必要性を説いた。特に刑務所や更衣室、スポーツ、健康に関しては「生物学的性別が非常に重要だ」と綴った。
英国ではこのほか、バデノック女性・平等担当相が2010年平等法における性別を「生物学的な性」に変更することを検討していると、英紙コスモポリタンが報じている。2月には性犯罪対策の一環として街灯・監視カメラの増設を実施した。
さらには昨年、公共機関の建物における男女別トイレの設置を制度化。女性からはプライバシー侵害や安全性への懸念といった声が届いていたという。
日本がLGBT理解増進法案を進める中、G7との姿勢一致という大義において、スナク氏の言葉や英議員らの動きはどう参照されるのか。注目される。
「G7期限ありき」の成立について、自民党からは懐疑的な声が上がっている。産経新聞によれば萩生田光一政調会長は27日、法案成立時期について「サミットで時間を切るのは筋が違うのではないか」と述べた。
25日の特命委員会でも、条文の「性自認を理由とする差別は許されない」という表現は当事者団体からも異論があがっているとして、拙速な議論は避けたいと意見が出されたという。
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