漁夫の利を得て喜ぶ習近平と中国の子分になるプーチン大統領

2023/04/01
更新: 2024/06/13

追い詰められるプーチン大統領

プーチン大統領はウクライナに侵攻して勝利を得るはずだった。実際にウクライナに侵攻するとロシア軍は勝利を得られないし損害を増加させるだけ。さらにロシアの脅威を認識したフィンランドとスウェーデンにNATO加盟を決意させる。欧米はロシアを脅威と見なしてウクライナへの軍事支援を拡大しウクライナ軍は強化されている。

ロシア空軍はアメリカの無人偵察機を墜落させ武威を示すが逆効果になった。アメリカによるロシアに対する外交と軍事は強化されるだけ。そんな時にプーチン大統領はベラルーシに戦術核を配備することを公言した。プーチン大統領は欧米によるウクライナ支援に対する恫喝だったが状況は好転しない。アメリカはロシアの新START履行停止に対抗してロシアへの核情報提供を停止。更にフィンランドのNATO加盟が確定する。

 

戦術核と戦略核の違いとエスカレーション

ロシア軍は損害を増加させるだけで勝利を得られない。ロシア軍は戦車・歩兵戦闘車を失い骨董品のT-62戦車を近代化改修して戦場に投入。ウクライナは早くて春、遅くても夏から反攻作戦を行なうことが予想された。このためロシア軍は冬の攻勢で勝利を得ようとしたが戦線は膠着した。つまり状況を打破するための攻勢が逆に悪化させただけだった。

それに対してウクライナ軍は欧米からの支援で強化されている。3月になると欧米が保有する戦車・歩兵戦闘車などがウクライナ到着し機甲戦力でロシア軍を脅かすことは明白。するとプーチン大統領は欧米の支援に対して難癖を付けて威嚇するが、この難癖は後に新START履行停止と戦術核をベラルーシに配備することで明らかとなった。だがアメリカがエスカレーションで応えたことで逆にプーチン大統領が不利になる。

核兵器の区分
戦略核:敵国本土・核基地と市民が目標
戦域核:戦域・軍事基地が目標
戦術核:戦場・軍隊が目標

核兵器は攻撃目標で区分されており戦略核・戦域核・戦術核の3区分になっている。プーチン大統領は政治家を狙う戦略核である新START履行停止を選んだ。これで“お前をいつでも殺せるぞ”と脅したのだ。さらにベラルーシに戦術核を配備することを公言しウクライナで使う可能性を見せた。

今のロシア軍ではウクライナ軍に勝てない。さらに欧米からの戦車・歩兵戦闘車が到着すると機甲戦力でウクライナ軍が優勢になる。このためベラルーシに配備した戦術核はロシア軍が敗北した時の保険として使われることは明白。

プーチン大統領が困るのはウクライナ軍がロシア領に侵攻すること。今のロシア軍では防御すら難しい、さらに悪いことに平地では攻撃が有利。実際にロシアはモンゴル軍・フランスのナポレオン軍の侵攻を受け、第二次世界大戦ではドイツ軍に侵攻された時代が有る。現代ならばNATOまで参戦すればロシアの首都モスクワまで到達される。

そうなるとプーチン大統領は原発爆破と戦術核をウクライナで使うことになる。何故なら放射能で汚染された汚染地帯がウクライナ軍とNATOを阻止する壁になるからだ。このためにベラルーシに戦術核を配備してウクライナ全土を汚染地帯にする意思表示を見せつけるはずだった。

だがプーチン大統領は甘かった。アメリカは譲歩せずロシアへの核情報提供を停止してエスカレーションを選んだ。これは、アメリカも“私もいつでも貴方を殺せるよ”と返答したことになる。こうなるとエスカレーションは止まらずプーチン大統領は使えるカードを失う寸前だ。

戦略核は政治家を攻撃するから、プーチン大統領は自らアメリカから攻撃される可能性を高めてしまう。戦後の生命を守るはずが逆に戦略核で攻撃されるならエスカレーションを選んだことは逆効果。さらに悪いことにフィンランドのNATO加盟が確定。ロシアがフィンランドを攻撃すればNATOから反撃されるだけではなく、NATOはフィンランドからロシアに侵攻できる。しかも武器・弾薬が不足するのでプーチン大統領は中国に頼る道しか残されていない。

 

漁夫の利を得る習近平

結果論だが習近平は漁夫の利を得た。中国とロシアは隣国であり覇権拡大で共通している。このためソ連時代から国境問題で険悪になったことも有る。中国とロシアは友好関係ではなく共に主従関係を目論む国同士。そんな国が隣接するのだから、ロシアのウクライナ侵攻は習近平に漁夫の利をもたらした。

強いと思われたロシア軍は弱く損害を増加させるだけ。さらにロシアと欧米の関係が悪化して戦争の可能性まで有る。ロシアはアメリカの無人偵察機を墜落させ、新START履行停止とベラルーシへの戦術核配備で欧米との関係は悪化。さらにフィンランドのNATO加盟でプーチン大統領は半包囲されてしまう。それでもプーチン大統領は諦めないから結果的に中国は有利な立場になったのだ。

何故ならアメリカの主敵が中国からロシアに変わるならアメリカ軍の主力はロシアに派遣される。それだけアジアのアメリカ軍は減少し米中戦争をする時に有利になる。さらにロシアと欧米が核戦争を始めれば中国の敵は共倒れ。これは習近平が意図的に仕組んだことではなく結果論。だから習近平は漁夫の利を得るから喜んでいるだろう。

 

今後の米中関係

アメリカは今の状況を把握しているからアメリカからロシアと核戦争をする気は無いが、プーチン大統領のエスカレーションで引くことも出来ない。そこでウクライナへの支援と同時にプーチン大統領に譲歩させる策を続けることになる。致命的なのはプーチン大統領への逮捕状が出たことで譲歩は難しい。そうなるとロシアの戦争継続が出来ない策を選ぶはずだ。

これは中国・北朝鮮・イランなどがロシアに武器・弾薬を提供させない策になる。ロシアへの武器・弾薬の提供を完全に遮断することは出来ないが効果は有る。変な話だが、これも結果的に習近平には好都合なのだ。何故なら習近平から見れば少しでも戦争を長期化させてロシアを弱体化させたい。ロシアへの武器・弾薬の提供を加減することは戦争の長期化なのでアメリカの策は結果的に習近平を喜ばせるのだ。

これも結果論だが、習近平はプーチン大統領を子分にしてアメリカとの代理戦争をさせることに成功した。このため習近平はロシアを使いアメリカとの間接的な米中戦争を開始したのでアメリカとの外交関係は悪化することになる。

 

脳内お花畑の日本

中国とアメリカの外交関係が悪化するが習近平は困らない。何故なら日本の政治家の多くは脳内お花畑。日本周辺でロシア・北朝鮮・中国の軍事活動が行われても無警戒。国会では国防よりも無駄な時間を浪費している。これでは間接的に第三次世界大戦が始まっていても理解できないし対応もできない。ならば習近平が日本の無反応を悪用するのは明らか。
 
今後の習近平は日本に中国系移民を送り込んで国盗りをすると推測する。何故なら中国系移民が現地民よりも多くなれば移民自治を求めて選挙が行える。成功すれば中国は民主主義の選挙を悪用して日本に中国の領土を獲得できる。何故なら中国系移民が移民自治を獲得すれば祖国への帰属を求める。すると習近平は自国民保護を名目に人民解放軍を日本に派遣できる。これは実際にロシアがジョージアで移民を使った国盗りを成功させている。

つまり習近平は直接アメリカと戦争しなくても、ロシアでアメリカを拘束し日本を悪用してアメリカの覇権を侵食できるのだ。だから習近平は漁夫の利を得られて大喜びなのだが日本の政治家の多くは危機感を持っていない。国民の立場で何が出来る?選挙権を持つなら国防意識を持つ政治家を選ぶだけだ。それなら売国奴を政治家にするよりは未来を選べる。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。