蔡英文氏は訪米 馬英九氏は訪中 2024年台湾総統選は「激戦」の予想

2023/04/01
更新: 2023/03/31

台湾の総統選挙が来年1月に控えるなか、民進党と国民党の大物政治家が同時期に外遊を行っている。蔡英文総統は中央アメリカの友好国グアテマラおよびベリーズを歴訪し、経由地である米国の著名シンクタンクで演説する予定だ。いっぽう、馬英九前総統は中国南京を訪れて「平和」のメッセージを強調した。米中対立の綱引きのなか、最前線の台湾では総統選の前哨戦が始まっているとの見方もある。

蔡英文氏は30日、ハドソン研究所からグローバルリーダー賞を授与された。翌月6日にはレーガン図書館で演説を予定しているほか、ケビン・マッカーシー下院議長との面会の可能性もある。

米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は「米国の『一つの中国』政策に変わりはない」と強調し、蔡氏の訪問は「私的で非公式」とした。いっぽう中国共産党政権に「台湾海峡周辺で攻撃的な活動を強めるための口実にすべきでない」と牽制した。

28日に中国入りした馬英九氏は「国父」と呼ばれる孫文が眠る南京・中山陵を参拝し、南京事件の資料館を訪れた。中国本土のメディアに「両岸が平和を追求し、戦争を避けることを望む」と述べた。台湾中央社によれば、談話のなかで「孫文が中華民国を樹立し、建国からすでに112年を迎えた」と言及したという。

激しい選挙戦 前哨戦はすでに開始

台湾では2024年1月13日に総統選挙が行われる予定だ。民進党は党首の賴清徳副総統が出馬する。国民党の候補者はまだ決まっていないが新北市長の侯友宜氏が有力候補とされる。

東京外国語大学の小笠原欣幸教授は28日のFacebook投稿で、民意基金会と美麗島の世論調査結果を引用した。それによれば総統候補の支持率は頼清徳氏(民進党)が35%以上となり、侯友宜氏(国民党)の25%、柯文哲(民衆党)の20%をリードする展開となった。頼清徳氏が党秩序に関わる政策で支持を固めているとしたうえで「今後米中の動向もからんで激しい選挙戦が予想される」と付け加えた。

台湾国策研究院の上級顧問であり、開南大学国家・地域発展研究センターでディレクターを務める陳文甲氏は3月29日、大紀元に対し、現在の台中間の緊張した状況を考慮して、馬英九氏はいわゆる「平和の旅」を強調して有権者へのアピールしたのではないかと述べた。また、過度な親中共姿勢は国民党にとってもマイナスになるとも付け加えた。

陳文甲氏によると、2020年以降は中国への台湾世論は大きく変化しておらず、2022年の統一地方選挙での民進党大敗でも中国共産党に対するネガティブな印象も変わっていないという。

台湾両岸関係協会が23日に発表した世論調査によると、88.9%が両岸関係の「現状維持」を支持し、中国共産党が提案する「一国二制度」には83.6%が反対した。中国共産党が長期にわたり台湾と海外諸国との国交断絶を促し、台湾の国際参加を阻止していることには84.3%が反対を示した。

振り返れば、総統選の歴史は「中国共産党マター」が選挙情勢に強い役割を果たしてきた。例えば、1995年に李登輝元総統が米国訪問すると、不満を露わにした中国共産党はミサイルを発射し、台湾危機が発生した。李登輝氏は1996年に強い抵抗を訴え指導力をアピールし、再選を果たした。

2014年に馬英九政権が中国と締結した「海峡両岸サービス貿易協定」は強い反発を招き、政権の支持率を落とす結果となった。2016年に大学教授だった蔡英文氏が勝利を納めた。2019年、中国共産党が香港国安法を可決させデモの弾圧を目撃した台湾市民は、一国二制度に反対する民進党が2020年選挙で蔡英文氏を再選に導いた。

時事評論家の李林一氏は、2024年の台湾総統選の前哨戦はすでに始まっており、国民党と民進党の様々な動きは、台湾の世論の動向を探る意図があると指摘する。

「中国共産党は主に間接的な手段を用いて、台湾内部の親中共勢力と連携し、台湾の世論に影響を与えようとしている。いっぽう、米国は中国共産党の出方に注目しつつ、台湾問題で中国共産党を牽制している。来年の台湾総統選挙では、国民党、民進党、中国共産党、米国の4者間の相互作用が選挙の最終的な結果に影響を与えるだろう」と分析した。

林岑心
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