在米 中国領事館前で抗議デモ 中国による「精神病院での弾圧」を非難

2023/03/30
更新: 2023/05/26

今月26日、米ロサンゼルスにある中国領事館前で、中国共産党による人権侵害に抗議する、在米華人を中心とした集会が行われた。

集会には在米の華人民主活動家のほか、香港人やチベット人も参加。「白紙革命は無罪だ」「呉亜楠吴亚楠)を釈放せよ」「中国共産党は精神病を名目とした迫害を即刻止めろ」などのスローガンを叫んだ。

白紙革命の抗議者へ声援

参加者は、呉亜楠(吴亚楠)氏ら中国当局によって不当に拘束されている市民の写真やスローガンが書かれた看板などを掲げて、そうした人々の「即時釈放」を求めた。

また、領事館前の路上では、呉氏が強制的に精神病院へ拉致されていく場面や、中国の精神病院の内部で行われているとされる強制摂食や薬物注射、電気棒による虐待や暴行など、迫害の実態が寸劇を通して再現された。

中国・天津にある南開大学の准教授である呉亜楠氏は、今年の「中国の自由と人権のためのオスカー賞」の受賞者に選ばれている。

この賞は、映画芸術のアカデミー賞を模倣した形で、米国在住の中国民主化活動家グループによってつくられたもので、中国の民主や自由、人権に貢献をした個人やグループに贈られる。

今回の抗議活動の発起人である中国民主党の界立建氏によると、呉亜楠氏は白紙運動に関わった学生を逮捕し迫害しようとする南開大学当局に対して異議を唱えたため、学校側によって昨年12月14日、天津にある「聖安医院」という精神病院に強制的に送られた。

以来、同病院での監禁が続いており、呉氏の生死は現在も不明だという。

異議者を「精神病院という檻」で監禁

 中共が、当局に異議をとなえる人物を「精神病院という檻(おり)で監禁する」というケースは多数に上る。

近年わかっているだけでも、楊佳の母親である王静梅氏、習近平国家主席の看板に墨汁をかけた董瑤瓊董瑶琼)氏、「鉄の鎖の女性」事件の被害者である女性(民間では李莹さんと見られている)などがいる。しかし、こうして明るみに出ている例は、氷山の一角に過ぎない。

2008年7月1日に上海市公安局の分局を単独で襲撃し、6人を殺害した楊佳(男性・当時28歳・死刑)の母親である王静梅氏は、息子の事件後に消息を絶った。後に、当局によって精神病院に監禁され、強制的な「治療」を約140日も施されていたことがわかった。

中国の民間では、楊佳は横暴な権力者に反抗する庶民の象徴とされている。そのため、楊佳の墓に密かに花を手向ける人は今も後を絶たない。

2018年に習近平国家主席の肖像が描かれた「中国の夢」の宣伝物に墨汁をかけた女性、董瑤瓊(董瑶琼)さんは、当局によって拉致され精神病院へ収容された。一年半ぶりに病院から戻ったとき、董さんは別人のように変わっていた。

当時は「お父さん」という一言を除いて、一切言葉を発さなかった。父親は「病院で何かの薬物を盛られたのではないか」と訴えていた。董さんは合計3回も当局によって精神病院へ強制収容されており、涙ながらに「死んだ方がましだ」と訴えていた。その父親も昨年9月に、獄中で死亡した。父親の遺体には、多数の拷問を受けたとみられる傷があったという。

抗議現場画像。界立建氏のツイッター(@jielijian)より

「誰の身にでも起こりうる」

集会の発起人である界立建氏は、中国共産党によって「精神病」とされ、精神病院へ拉致されて人権侵害を受けることは「誰の身にでも起こりうることだ」と訴えた。

実は、界氏自身も過去に陳情をしたために、中国当局により精神病院へ送られて迫害を受けた経験をもつ。

自身が体験した精神病院の状況について、界氏はこう語る。

「両手に手錠をかけられたまま、吊り上げられる。口の両端に鉄のワイヤーをかけられ、無理やり左右へこじ開ける。そうした拷問にかけられ、屈服するか?まだ陳情したいか?と迫られた」

そこで「屈服しない」あるいは「無回答」だと、電気ショックなどの拷問を受けるという。「思い出すだけで、今も身震いをする」と界氏は述べた。

抗議現場となった中国領事館前の路上で参加者らによって再現される中国の精神病院内での迫害光景。イベント発起者である界立建氏はかつての自身の(中国の)精神病院での体験をもとに、自らその迫害光景を演じた。画像は界立建氏のツイッター(@jielijian)より

精神病院という牢獄

スペインを拠点とする人権団体「セーフガード・ディフェンダーズ(Safeguard Defenders)」の長年にわたる報告で、判明しているだけでも、過去数十年の間に少なくとも100人以上の反体制派市民が、中国警察が運営する精神病院に強制的に送り込まれている。

精神病院内では、電気ショックや薬物の強制投与などの手段を用いて収監者に迫害を加えており、長いケースでは十年以上も病院で迫害を受け続ける人もいるという。

法輪功の情報を提供する明慧ネットによると、法輪功への弾圧が始まった1999年以降、少なくとも数千人の法輪功学習者が強制的に精神病院へ送られ、そこで薬物などによる迫害を受けている。

声援することの大切さ

集会に参加した香港出身の女性、肖雅洁さんは抗議現場につくられたレプリカの檻の中で、中共による迫害を身をもって疑似体験した。

2019年に香港の「逃亡犯条例の改正反対運動」にも参加したこともあるという肖さんは、「今最も大切なことは、このような運動を呼び掛けた人を声援することです。彼らを失望させてはいけません」と話した。

中国の著名な企業家を父に持つ肖さんだったが、父親は中国当局によって無実の罪を着せられて財産を奪われた。肖さんは、当局による迫害から逃れるために、香港から米国へ移民したという。

精神病は「最も使い勝手の良い罪名」

かつて中国本土で法律関係の仕事をしていたという曾さんも、この日抗議現場に参加者として駆け付けた。

「中国当局が、反体制派や人権活動家を『精神病患者』という名目で精神病院に強制収容して迫害するのは、既存の法律では彼らに罪名をつけられないからだ」と曽さんは指摘する。

曾さんによると、中国では親族や職場が申請すれば、本人の同意なしに、その人を強制的に精神病院へ送ることができる。「この人間は精神病患者だ」と言えば、いかなる法的根拠がなくても、また司法プロセスを踏まなくても、その人を直接精神病院送りにできるという。

その場合、被害者は自分の身を守る手段はなく、弁護士も介入できないという。

精神病院でのいわゆる「治療」とは、まともな人間の精神を崩壊させることである。実際には、治療ではなく迫害であるが、それは収監者に対して高圧の電気ショックをあたえたり、精神を異常にする薬物を注射することだという。 

そのような迫害を中国当局は「医療行為」と表現しているため、たとえ後に精神病院を出ることができても、被害者は受けた不公正を訴える術はなく、誰の責任を問うこともできないのが現状だと曾氏は訴えた。

人権侵害制裁法「マグニツキー法」の適用を

中国共産党による、このようなおぞましい人権迫害の犯罪に終止符を打つためには、「その犯罪を暴露して、制裁を与えることだ」と界立建氏は訴える。

界氏は「中国共産党の迫害手段を、より多くの国際人権組織に知ってもらい、人権侵害行為に関与した者とその家族に『マグニツキー法』を適用して入国禁止などの制裁を加えるべき」と述べた。

李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。