自衛隊は「机上では優秀」、台湾軍は「ガラパゴス」…米国は集団防衛作戦を急げ

2023/03/23
更新: 2023/03/23

中国(共産党政権)による脅威は、米国、日本、台湾の間の集団防衛作戦の必要性を高めている。しかし、地政学者たちによれば、台湾と日本の軍隊は戦争のための装備に欠けていると口を揃える。米国は二か国の内部問題を解決し効果的な共同作戦を確立するために、両国を支援する必要があると指摘する。

分析ポータルであるGlobal Fire Powerによると、日本と台湾の軍隊は、世界軍事力ランキングのそれぞれ8位と23位に位置している。米国がランキングをリードしている一方で、最近共同軍事演習を強化している2つの戦略的同盟国であるロシアと中国がそれに続いている。

専門家「資金、人的資源、軍隊への敬意」が必要

グラント・ニューシャム氏は、安全保障政策センターのシニアフェローであり、戦略研究のための日本フォーラムのリサーチ・フェローだ。彼は電子メールでエポックタイムズの取材に応じた。

日本の自衛隊は「紙の上」では優れていることになっているが、戦争の準備はできていないとニューシャム氏は語った。いっぽう、台湾には「ガラパゴス」軍があり、何十年にもわたって孤立、衰退してきた。

2つの軍隊は「より多くの資金、人材、兵役への尊重」を必要としていると、ニューシャム氏は強調した。

今年になって、米国はインド太平洋における軍事同盟を強化するための措置を講じてきた。これらの措置には沖縄島への米軍の増員が含まれており、台湾有事の場合には、同盟国は必要となる対艦能力を強化することができる。

2月28日、中国に関する下院特別委員会が第1回目の公聴会を開催した。その中で、議員たちは、国務省が承認した台湾への190億ドルの武器販売が滞っていることへの懸念を表明した。

また、台湾は66機のF-16戦闘機の納入を待っている。ロッキード・マーティンによって製造され、最先端の第4世代戦闘機の機能を装備したブロック70 F-16は、2026年末までには引き渡される予定だということだ。

その一方で、台湾空軍が、攻撃性を増す中国の軍事飛行に直面しているため、戦争の脅威はますます大きくなっている。

米国はリードしなければならない

米国と日本はどちらも、中国からの攻撃に対しては台湾を守ると言っている。しかし、台湾と日本の軍隊は、直面する差し迫った内部問題にどのように対処するかを明確にしていない。これらの課題には、政策、能力、戦争準備が含まれる。

脅威が直面しているにもかかわらず、日本と台湾は抑止力を集団で強化し、共同防衛に貢献するなど、両国の防衛能力を向上させる努力を十分には行ってこなかった。地政戦略家は、米国がこの点において主導権を握らなければ、差し迫った状況を解決することはできないと主張した。

「米国は最前線で中国と戦う必要がある。米国が後ろに控えていて日本や台湾に対して戦うよう頼んでも、両国は戦わない」とワシントンに本拠を置くハドソン研究所の非居住者研究員である長尾賢博士はエポックタイムズに語った。リーダーシップが効果的であるためには、「リーダーは前線で戦わなければならない」と長尾氏は述べている。

現在の計画によれば、長尾氏は、日本は今後5年間で防衛予算を56%増やすと述べた。「しかし、中国は(予算を)それ以上に増やしてきた」と彼は語った。「他国との協力なくして、日本だけでは中国の脅威に対抗することはできないし、十分な予算を確保することもできない」。

「そのため、米国との共同作戦能力を確立することが日本にとって非常に重要である」と長尾氏は述べた。

ニューシャム氏は、「米国人が自衛隊と台湾軍と一緒に座って、論理的に、何が必要か、米国人は何をするのか、日本人と台湾人は何をするかを話し合っていかねばならない」と述べている。

台湾軍の課題

台湾は、自国が直面している脅威を認識しているが、専門家によると、解決すべき緊急の問題があるという。台湾は、出生率の低下による問題に直面している。昨年12月のCNNレポートによると、2020年には初めて人口が減少し、2022年の軍事採用者は過去10年間で最低だった。

ニューデリーに本拠を置く中国分析戦略センターの特別研究員であるアビシーク・ダービー氏はエポックタイムズに電子メールを送り、「台湾の軍事力は人民解放軍の軍事力と比較して弱い。兵役義務は短すぎて、予備軍の訓練は厳格なものではない」とダービー氏は述べている。

ニューシャム氏によれば、紙の上では台湾には100万人以上の予備軍がいるが、予備軍たちは、それを冗談のようなものだと考えている。また、文民の指導者たちは、必要な時間と資源を費やすほど重要視していないと彼は語った。

「適切な予備力は巨大な力の乗数となり、侵略者にあらゆる種類の問題を与え、場合によっては侵略者の攻撃を阻止する可能性すらある。台湾の問題の一つとして、現役軍には資金と人材不足の問題があり、予備軍に費やす時間や資源が実際にないことだ」とニューシャム氏は語った。

ニューシャム氏は、「台湾軍には人民解放軍との戦いで重要な「想像力豊かな防衛概念」を欠いている」と述べた。技術的には、台湾が長距離精密兵器、本格的な防空システム、スマート・マリン機雷、戦闘ドローン、中国本土に戦いを挑める能力を備えた「機動的かつステルス的なパワー」の必要性を意味する。

ダービー氏は、「情報化され」、「インテリジェント化された」兵器システムを使用した現代の戦争の観点から、台湾軍は軍事能力をさらに強化する必要があると述べた。

「将来の軍事作戦そして台湾の場合、AI(人工知能)とドローンが、重要な役割を果たすことだろう。そして人民解放軍は、人手をかけることなく、インテリジェント兵器を使用する。これはまた、台湾での作戦によって多くの死傷者が出るのではないか、という本土の人々の懸念を打ち消そうとする人民解放軍の支えになっている」と、ダービー氏は語った。

台湾の孤立を打破する

独立国家としての台湾の地位をめぐる外交上の曖昧さによって、共同作戦には多くの問題が生じている。専門家はこれを克服しなければならないと言っている。

ニューシャム氏は、「台湾は40年以上の孤立の結果と直面している」と語っており、米国は台湾の軍隊に対しては、有意な関与をしてこなかったと感じている。その結果、本来あるべき進展がなされてこなかった。

「なぜ米国は台湾を孤立させたのか?(彼らは)中国が文句を言うのではないかと恐れていた。このようなマインド・セットなら勝利さえ難しい。友人である台湾人の士気を挫くことにつながった」とニューシャム氏は語った。

ダービーは、「米国は戦略的曖昧さを回避すべきだ。そして台湾での人民解放軍の作戦に対する軍事介入の可能性について、戦略的明確さを採用すべきだ。また、台湾海峡での軍事的プレゼンスを高める必要がある」と述べた。

「いっぽう、日本は台湾を支援するための政策支援を必要としている」と彼は語った。日本は、台湾支援を法的に保証するために、独自の「台湾関係法」を制定しようとしているが、依然検討のままの状態が続いている。

台湾関係法は、台湾国民の人権保護に対する米国の関与を再確認した米国の法律である。

日本軍 人材および資金不足

少子高齢化により、日本軍も採用率の低さに直面している。そのため、望ましい形での軍事力の増強の実現が難しい状態である。

ニューシャム氏は「日本には、緊急の解決策を模索しなければならない他の問題がある。それは、自衛隊の人材および資金不足であり、最近まで戦闘を真の任務とは見なしていなかったことだ。軍隊というものが本来あるべき戦闘について正しく捉えていないとき、大きな心理的ギャップを生み出す」と語った。

さらに、「自衛隊での仕事は給与が低く年金も少ない。また、福利厚生が少なく、住宅事情も標準以下、軍人家族への援助もほとんどないため、日本では尊敬されていない職業だ」と彼は述べている。

ニューシャム氏は、「自衛隊は、領国軍、空軍、海軍が共同で行う作戦についても、計画的かつ組織的に実施することすらできていない」と不満を述べた。日本はまた、戦争備蓄や死傷者計画、そして戦争を戦うために必要なあらゆる兵站と支援を欠いている。

長尾氏は、「台湾と日本の軍隊の内部資源を補強し共同作戦能力を強化することは、関係国のいずれにとっても、今日の文脈では避けられないことである」と述べた。また、「特に台湾を守るためには、日本が生命線だ」と述べた。

共同作戦本部

専門家たちは、米国、日本、台湾は共同作戦本部を発足させるべきだと言っている。

ニューシャム氏は、その必要性は緊急であり、少なくとも米国と日本から始めるべきだと考えている。「(共同作戦本部が)60年以上の防衛同盟後にも存在していないことは、おぞましいことだ」と彼は語った。

しかし、長尾氏は「米国の『一つの中国』政策を考えると、三か国の間で共同作戦本部を発足させることは容易ではない」と述べた。戦略国際問題研究所(CSIS)の説明によると、米国は「中華人民共和国を中国の唯一の合法政府として受け入れつつ、台湾は中国の一部であるという中国の立場には同意しているだけだ」という。

この方針は1979年以来維持されている。しかし、台湾に対する中国の主権を認めるべきだという中国の要求に米国が屈していないため、「受け入れる」ではなく「同意」という用語を使っている。

長尾氏は次のように語っている。このような状況下では、台湾が独立国としての制度を備えていると日米両国が分かっていても、主権国家のように共同作戦本部を発足させることはできない。

それは挑戦的な目標に違いないが、依然として最良のアプローチである。たとえ共同作戦本部の実現がなしえなくても、我々は関係国との協力を拡大し解決策を生み出すべきである。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
インドと南アジアの地政学を専門とする記者。不安定なインド・パキスタン国境から報道を行なっており、インドの主流メディアに約10年にわたり寄稿してきた。主要な関心分野は地域に立脚したメディア、持続可能な開発、リーダーシップ。扱う問題は多岐にわたる。