米ミシガン州南東部のワイアンドット市にあるワイアンドット警察(WPD)は今年1月13日(現地時間)、公式のフェイスブックページで「悲しむべきお知らせ。同署所属の現役警官による窃盗事件を捜査中」として容疑者を写したマグショット写真を添えて投稿した。(下の写真)
窃盗事件はその2日前に、なんと警察署内で発生。当時、バーウィグ(Ofc. Barwig)巡査は休憩室で昼食をとっていたが、急な呼び出しにより食べかけのサンドイッチをテーブルの上に置いたまま、その場を離れた。
ところが、しばらくしてバーウィグ巡査が戻ると、テーブルの上にあったはずの昼食が忽然と姿を消していたという。
そこで犯人は、唯一現場にいて、しかも事件後に現場から自分の頬をなめながら出てきたという「同僚の警官」に絞られた。この警官は以前にもゴミ箱漁り(もちろん手が届く範囲での)のほか、通りすがりの同僚の手から食べ物を強奪したことで、数々の告発を受けていたという。
このように、数々の「悪しき前歴」を持つということで、この容疑者は限りなく「クロ」に近いと見られた。
だが、困ったことに容疑者、つまり被害者の同僚である警官は、憲法修正第5条の黙秘権を行使しているという。要するに「捜査に協力的でない」のだ。
そこで、事件の捜査にゆき詰まったワイアンドット警察は、容疑者の写真を添えて「今後、本件の捜査をどのように進めていくのが良いか、フォロワーの意見を考慮する」とSNSに投稿した。
投稿後、容疑者の無実を訴える声が殺到し、大きな反響を呼んだ。
「この警官の無実を無条件で信じる」「有罪が証明されるまで無罪だ。しかも、あの顔を見れば分かる。彼はやっていない」などの、やや理性に欠ける擁護論から、「これ以上捜査や告発を進めるなら、警察署前で大規模な抗議行動を起こすぞ」という警察への脅しまで寄せられたそうだ。
ここまで一般市民から無条件に信用されている(絶大な支持を得ているというべきか)その容疑者とは誰か。現役の警察官(犬)アイス巡査(Ofc. Ice)だ。
数日後、ワイアンドット警察はこの事件の進捗状況について再度投稿した。
「アイス巡査のために無償で弁護を申し出た弁護士が何十人もいる。このまま捜査を続ければ大規模な抗議が起こりかねない。そもそも彼が有罪であることを証明する映像もなく、それに一般市民は彼の有罪など信じていない」などと説明。ついに「アイス巡査が内部規律や刑事責任に問われることはない」と報告した。
手っ取り早く言えば、怒涛のような支持者の声を前に勝訴は不可能と悟ったか、アイス巡査に対する窃盗罪の告訴は取り下げられた。ということで一件落着、いや、サンドイッチ盗難事件は「迷宮入り」となった。
さて、「濡れ衣」も晴れて無罪放免となったアイス巡査はその後どうなったのか。彼のファンだという地元の飲食店「Lunch Wyandotte」は後日、この元・容疑者に店特注のサンドイッチを差し入れたという。ついでに、アイス巡査を疑って容疑者扱いした彼の同僚(こちらは人間)たちにも、ちゃんと配られたそうだ。
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