戦狼報道官の「あの人は今」 辺境へ飛ばされた趙立堅氏が映像流出で再び話題に

2023/03/14
更新: 2023/05/26

かつて「戦狼」の代表とも呼ばれ、中国外交部(省)の報道官であった趙立堅氏の近況動画が最近SNSに投稿され、華人圏で話題になっている。

台湾の自由時報などをはじめ、多くのメディアが相次ぎ趙氏の「新職場での活躍ぶり」を取り上げて報道した。この話題はSNSなども賑わせている。

趙氏については、今年1月中旬までに異動が明らかになっていた。異動先は国境や海洋問題などを担当する外交部の国境海洋事務局である。副局長という同格ポストへの異動だが、これを事実上の「左遷」と見なす指摘は多い。

一時は「生存」まで疑われた

趙氏は昨年末以来、公の場に姿を現すことがほとんどなかった。趙氏の新型コロナ感染が香港メディアなどによって報じられた後、本人の「生存確認」がなかなか取れなかったことから、かつては中国外交部の顔役だった人物だけに「生きているのか?」と心配した人も少なくない。

そんな中、広西省東興市で国境を巡視したり、中越国境の境界の石碑(境界標識)に赤いペンキを塗り直す趙氏の「新職場での活躍ぶり」を記録した動画や写真などが中国のSNSに投稿されて、話題を呼んだ。

中国とベトナムの国境を視察する異動後の趙立堅氏。(中国SNS投稿動画よりスクリーンショット)

国境巡視動画のなかでは、趙氏は衆人の中でも「上座」に立っていた。周りにいる部下らしい要員から、職務報告を聞いているように見える。

映像の最後には、群衆と談笑するシーンもある。報道官時代の強面(こわもて)とは打って変わって、趙氏の顔には「和やかな微笑み」すら見られた。

そのような趙氏の現状を見て「相変わらず元気そうでよかった」「とりあえず生存確認できて安心した」などと安堵する声がある一方、「記者会見とは全く雰囲気が違うね」「毎日ウソつかなくて良くなったから、やっと正常な人になったようだ」との指摘も目立った。

なかでも「あなたのいない(外交部の)記者会見なんて、全然おもしろくない」という声が大きかった。

なぜ「戦狼」を舞台から下ろしたか

趙立堅氏は、外交部の報道官に就任する前から人気のあるインフルエンサーで、公式のウェイボー(微博)では今も800万以上のフォロワーを擁している。

報道官時代は、その好戦的な表情と強弁ぶりから日本でも認知度が高かった。数々の戦狼外交官のなかでも、特に趙氏は異彩を放つ人物であったため、愛国小粉紅や五毛党のような「熱心なファン」から、嫌いだけど気になってしまうという意味で、今でも注目されていることは否めない。

ただし、近年は、趙氏を筆頭とする好戦的な戦狼外交官らの「大活躍」によって、中国外交部は「外交関係破壊部」とまで揶揄されるようになり、外国との関係が悪化したことも事実である。

そうしたことから戦狼報道官・趙氏の異動(あるいは左遷)は、当局が「少し激しくやらせ過ぎた」という意味で、表舞台から下ろす判断をしたとも考えられる。

「風前の灯」になりつつある中国経済の現状は、相手を攻撃的に睨みつける強硬外交が招いた結果でもある。

中越国境の境界の石碑(境界標識)にペンキを塗り直す趙立堅氏。(写真/中国SNSより)
李凌
エポックタイムズ記者。主に中国関連報道を担当。大学では経済学を専攻。カウンセラー育成学校で心理カウンセリングも学んだ。中国の真実の姿を伝えます!
鳥飼聡
二松学舎大院博士課程修了(文学修士)。高校教師などを経て、エポックタイムズ入社。中国の文化、歴史、社会関係の記事を中心に執筆・編集しています。