中国共産党は、国内での新型コロナ感染拡大のなかでも少数民族や信仰ある者への弾圧を強めている。米首都ワシントンで1月31日と2月1日に「国際宗教自由サミット(IRF)2023」が開かれ、参加者は中国共産党のおぞましい迫害実態を暴露し、良心の囚人の解放を訴えた。
その参加者の一人サイモン・ジャン氏の母、季雲芝さんは北京冬季オリンピック開会式の3日前に逮捕され、昨年3月に獄中死した。
季雲芝さんは鉄の足枷と手錠で病院のベッドに縛り付けられ、鼻にゴムチューブを挿入されて人生最後の一カ月を過ごした。不当に収容されていた牢獄では、数時間にわたり電気棒で感電させられるなど数々の拷問を受けていた。遺体を確認した家族によれば、食道は切り開かれ、顔や肩が血まみれになっていたという。迫害はただ、法輪功を信仰しているという理由からだった。
当局に季雲芝さんの死について説明を求めた家族も、アパートを監視されるなどの嫌がらせを受けた。拷問の証拠隠滅を図りたい警察は、季さんの夫に遺体の火葬を認めない限り甥を公務員の職から解雇すると脅したという。
さらに、現在ニューヨークで建築家として働く息子のジャン氏の様子を映した写真をちらつかせ、「私達はすべてを監視している」と迫ったという。
信教の自由への願い
「真・善・忍」という普遍的な理念に同化することを目的とし、座禅とゆっくりとした気功動作を行う法輪功は、中国共産党により23年以上も残酷な迫害を受け続けている。
ジャン氏は、19年間再会を望み続けた母親を、温厚で思いやりのある人だったと語る。「自由に法輪功を学べる米国を見てみたい」と願っていたが、信仰のためパスポートの申請が許可されなかったと肩を落とした。
中国共産党の法輪功迫害により引き裂かれた家族は数百万人にのぼる。法輪功情報サイト「明慧ネット」によれば、拷問や虐待によって死亡したケースは4900件以上記録されている。しかし、中国国内の状況を把握するのは難しいため、この件数も氷山の一角に過ぎない。
ジャン氏は臓器を生きたまま収奪する「臓器狩り」の犠牲者も数えきれないほどいると指摘し「中国共産党が私の母や法輪功に行ったことは、ジェノサイドであり、人道に対する罪だ」と非難した。
米国務省の国際刑事司法担当特命大使、ベス・シャーク氏も国際信教自由サミットで宗教弾圧にした言及した。米国や他の多くの国々が既にジェノサイドと認定している中国新疆ウイグル自治区のウイグル人弾圧のほかに「中国全土では、チベット仏教徒、法輪功学習者、キリスト教徒、その他平和的に信仰を実践しようとしている多くの人々に宗教迫害が行われている」と述べた。
超党派で取り組む人権問題
中国共産党による人権弾圧は、米議会の超党派が取り組む共通課題の一つだ。
サミットの名誉議会共同議長を務めたマイケル・マッコール下院外交委員長は、中国共産党の「信仰に対する全面的な攻撃」を非難し、「信教の自由を米国の外交政策の最前線におく」と強調した。
さらに「信教の自由を守ることは、正義を貫くことだけでなく、国家安全保障の問題でもある」とし、世界中の人権弾圧に目を向け、加害者に責任を取らせ、信仰のために迫害されている家族や友人を持つ在米移民を支援すると語った。
また、中国の抑圧的な影響力に対する懸念について問われた際には、強制的な臓器摘出や中国ハイテク監視装置の普及にも言及。「彼らは中国国内のすべての人々を追跡する生体認証システムを導入している。生きたまま強制的に臓器を摘出する臓器狩りもとても恐ろしい」
ジム・マクガバン議員は、貿易法案の作成や他国に投資する際など、あらゆる場面で「人権問題を提起する」必要があると強調。「どんな理由であれ、中国政府の国民抑圧に目をつぶることはできない」と語った。
世界でひとりぼっち
サミットでは、ニューヨークの17歳の音大生グレース・チェンさんも法輪功学習者を代表して「中国の良心の囚人を解放する運動」をテーマとした討論会に参加した。
チェンさんの両親は2020年秋、中国で信仰を理由に逮捕された。それ以来、両親との連絡が取れなくなり、2年以上音信不通になっている。
チェンさんの両親を救出するため、音楽学校の先生や同級生は中国の留置所あてに手紙を送り、釈放を求めているという。例え手紙が両親に届かなくとも「国際社会は注目していると警察に圧力をかけることができる」とチェンさんは言う。
過酷な環境下に置かれている両親にも思いを寄せた。以前、歯が全部抜けるまで父親が警察に暴行を受けたことを振り返り「それでも、あなたは決して信仰を捨てなかった。あなたは私のヒーローよ。でも今回は怪我をしていないことを祈っている」
(翻訳編集・ 徳山忠之助)
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