中国は米中戦争の橋頭堡を手に入れた

2023/02/18
更新: 2024/06/13

屋那覇島を購入した中国人

中国人女性がSNSを使って屋那覇島を購入したことを投稿したことで沖縄本島から約20km北方の無人島が突如有名になった。屋那覇島が売られていたことは事実だが、持ち主は中国人に売ることは知らなかったと主張。さらに中国人女性が屋那覇島の全てを購入したわけではない。だが屋那覇島を中国人が購入したことが知られると、日本国内のネットでは国防上の観点から危険視する発言が増える。

ネットでは危険視するが政府の反応は真逆だった。松野博一官房長官は記者会見で、“中国人女性が屋那覇島を購入したことを認識”しているが安全保障上の問題は無いと発言した。日本政府から見れば屋那覇島は安全保障上重要な施設や国境離島を対象とする土地利用規制法の対象外に該当する。だが屋那覇島の南方約20kmには沖縄本島が存在し、自衛隊とアメリカ軍の基地が存在することを無視した発言だった。

 

日本政府が理解できない軍事の基本

日本政府は屋那覇島の位置が軍事的に重要ではないと認識している。これが事実であれば中国のために働く工作員か沖縄戦から何も学んでいない。軍事作戦では軍隊に補給を行う兵站は重要。2万人規模の1個師団であれば25km後方に小規模兵站基地を置き、50km後方に中規模兵站基地を置き、100km後方に大規模兵站基地を置くのが基本。

1個師団を支援する兵站基地の置き方
小規模兵站基地:25km後方
中規模兵站基地:50km後方
大規模兵站基地:100km後方

陸戦では道路や線路を使い等間隔に兵站基地を置くことができる。だが海を隔てた渡洋作戦では島の配置に左右される。だから上陸を行う島に近い場所に泊地を置くのが基本になっている。

基地と泊地の違い

基地:戦略的地勢・戦力(兵員・装備)の休養・補給・整備・防護の機能。そのためには基地周辺に工場と技術、本国との兵站連絡施設が必要。
泊地:戦略的地勢・戦力の休養・軽整備の機能で十分。
 
平時では基地を維持するが戦時になれば作戦に応じた泊地を建設する。何故なら渡洋作戦では何処が戦場になるか判らない。だから平時に作られた基地を拠点とし、戦場に一番近い島に泊地を置いて作戦する。そうでもしなければ戦場の軍隊に安定した補給ができない。このことから屋那覇島は人民解放軍が作戦する時の泊地に使われる可能性が有る。

屋那覇島は人民解放軍が東シナ海から沖縄に上陸作戦を行う線上に存在する。さらに沖縄本島から20km離れていることから泊地として使える距離と地形を持っている。そして泊地化した屋那覇島を兵站用の泊地とすれば、上陸作戦を実行する人民解放軍を支援できる。それだけ重要であり危険な兆候なのだ。だが日本政府は国防上の危機とは見ていない。そうなると中国の工作員として世論誘導をしているか軍事の基本を理解しない典型になる。

 

沖縄戦で示された基本

日本の歴史では沖縄戦は有名。だがアメリカ軍が実行した渡洋作戦の基本に関してはあまり知られていない。アメリカ軍は沖縄に上陸する前に日本軍が使う本土と沖縄の兵站を遮断した。次に沖縄に近い島として、慶良間諸島の座間味島など数島へ第77歩兵師団を上陸させている。目的は沖縄上陸を支援するための泊地を獲得するためだ。

戦場の軍隊を本国から支援するなら兵站が置かれる。この兵站は一定の間隔で置かれ、それぞれがピストン輸送で物資が移動する。だから可能な限り戦場に近い島に泊地を置かないと戦場の軍隊を支援できない。このためアメリカ軍は沖縄上陸作戦の事前準備として慶良間諸島を選び泊地にしたのだ。

那覇市の西方約40㎞に存在する慶良間諸島は中規模兵站基地として機能した。仮に置かなければ沖縄上陸は失敗したか、成功しても長期化とアメリカ軍の損害を増加させた。それだけ兵站としての泊地は重要。だが今の日本政府は沖縄戦と軍事の基本を理解していない。

 

屋那覇島を泊地化する口実

中国は南シナ海の島々を強引に泊地に変えた前例を持っている。典型的なのは2015年から2017年にかけて強行した人工島の建設と泊地化。中国は以前から南シナ海の島々を強引に占領していたが、2015年からは短期間で浅瀬を埋め立てて施設を建設した。

南シナ海の人工島は基地ではなく泊地に該当する。だが戦略的には重要なので複数の泊地と連携することで機能する。明らかに人民解放軍が南シナ海を独占し日本とアメリカが使う海上交通路を遮断することが目的だ。だからアメリカは航行の自由作戦を継続し中国の覇権を拒否している。

中国は南シナ海の浅瀬すら人工島に変えた。では島として形成されている屋那覇島は?埋め立てる必要は無いので屋那覇島に施設を建設するだけで良い。建設名目は“観光目的”にするはずだ。観光目的で屋那覇島に施設を作り大型船が停泊できる機能を持たせるはずだ。こうすれば日本とアメリカは軍事攻撃できず完成を見守るしかできない。

これは戦前のアメリカがハワイを観光目的で基地化したことが典型例。当時のアメリカは覇権拡大を国際社会に知られたくなかった。そこで当時のアメリカはハワイを観光目的で施設建設やインフラを整備した。観光客を呼ぶのだから大型船が停泊できる機能が必要になる。表向きは正しいが、大型客船が使えるなら戦艦・大型輸送艦なども使える。これを隠す目的でハワイを観光目的で開発した。

このことを中国が知らないわけがない。今後は屋那覇島を観光目的で施設を建設することは間違いない。この観光施設は中国人限定に開放され日本人は入れない島になると推測する。では観光客として屋那覇島に入れる中国人は誰だ?それは人民解放軍だ。

さらに屋那覇島は人民解放軍を日本に派遣する口実に使える。それは“自国民保護を名目”にした人民解放軍の派遣だ。屋那覇島の所有者が中国人ならば、“身の危険を感じるから保護して欲しい”と言えば人民解放軍を屋那覇島に派遣することも有り得る。さらに中国には国防法が有るので実行すれば?この場合も人民解放軍を屋那覇島に派遣することも有り得る。その時に日本政府はどうする?日本政府は“中国と交渉して人民解放軍を撤退させる”と言うだろう。

 

屋那覇島は米中戦争の橋頭堡

中国とアメリカは偵察気球で関係が悪化している。双方が譲歩して融和する動きは無い。それどころか中国はアメリカに対して経済制裁で報復した。中国は台湾への武器を販売したことを理由にロッキード社とレイセオン社に追加制裁を公表した。アメリカに対する効果は無いに等しいが米中戦争が一歩近付いたことを示す。

こうなると屋那覇島は沖縄上陸を行うには最適な泊地。しかも東シナ海から沖縄への線上に位置するから兵站としても使える。アメリカとの関係が悪化したら台湾侵攻は無意味。それよりもアメリカと雌雄を決する戦争が大事になった。そうなると目の前に位置する沖縄か九州を攻撃してアメリカ軍に打撃を与える方が有益。中国がこう考えれば屋那覇島は米中戦争の橋頭堡になった。今の日本政府では中国の暴挙に対応できない。それどころか外交交渉を選んで自衛隊を使った反撃すら禁止することは明白。ならば中国は岸田政権の間に強行する可能性が有る。

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
戦争学研究家、1971年3月19日生まれ。愛媛県出身。九州東海大学大学院卒(情報工学専攻修士)。軍事評論家である元陸将補の松村劭(つとむ)氏に師事。これ以後、日本では珍しい戦争学の研究家となる。
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