米中首脳会談、双方の公式発表に7つの相違点

2022/11/16
更新: 2023/11/17

バイデン大統領と中国共産党党首・習近平は14日、バリ島で3時間半にわたって対面式の会談を行った。台湾問題や北朝鮮問題、貿易慣行など話題は多岐にわたるものの、双方の公式発表には相違がみられた。

米中関係

中国側の声明からは、米国の指摘をかわす意図がうかがえる。習近平は「中国は現在の国際秩序を変える考えはなく、米国の内政に干渉せず、米国に取って代わるつもりはない」と述べ、米中関係が「ゼロサム競争」に陥ってはならないと主張した。

これに対しバイデン氏は中国と「激しい」競争を続けるとともに、世界中の同盟国やパートナーと協力して邁進していくと強調した。同時に、米中間の競争が衝突に発展してはならないと述べた。

台湾問題

米ホワイトハウスの発表によると、バイデン氏は台湾問題を巡り、米国の「一つの中国」政策に変わりはないと述べた。「一方的な現状変更の試み」に反対の意を示し、台湾に対する中国の「威圧的でますます攻撃的な行動」は地域の平和と安定を損ない、世界の繁栄を危うくすると強調した。

中国外交部の公式発表では米国側の警告について一切触れず、台湾問題は「中国の核心的利益の核心であり、米中関係における最大のレッドラインである」とした。台湾問題は中国の「内政」であり、米国側に「一つの中国」原則を遵守するよう求めた。

中国側はまた、バイデン氏が「台湾独立」を支持しないと繰り返し表明したと発表した。いっぽう、米国の発表では、「一つの中国」政策は変わっていないと述べるにとどめており、台湾独立に関する言及はない。

なお、米国の「一つの中国」政策は、中国共産党が台湾に対する主権を主張する「一つの中国」原則とは異なる。米国は「一つの中国」政策のなかで、台湾に対する中国共産党の主権主張を認めていない。

首脳会談後、会見に臨むバイデン大統領 (Photo by SAUL LOEB/AFP via Getty Images)

北朝鮮問題

米国の発表によると、バイデン氏は北朝鮮の挑発行為に懸念を表明し、北朝鮮に責任ある行動を促すことが国際社会のすべてのメンバーの利益になると指摘した。

会談後の記者会見でバイデン氏は「中国は北朝鮮に対し、長距離核実験を行うべきではないことを示す義務があることを習近平に明白に伝えた」と述べた。「北朝鮮が実験を継続すれば、米国はより防御的な手段を取らなければならない。直接中国に対してではないものの、北朝鮮に明白なメッセージを送ることになるだろう」。

中国の発表では北朝鮮に関する言及はなかった。

経済的デカップリング

中国側の声明では、バイデン氏が「中国とのデカップリングを求めず、中国の経済発展を阻まず、中国を封じ込める意図はない」と述べたことが紹介されている。また、習近平は会談で「貿易戦や技術戦、人為的な障壁構築、強引なデカップリングは、市場経済の原則に反しており、国際貿易の規則を破壊している」と述べた。

米国の声明によると、バイデン氏は、米国のみならず世界中の労働者とその家族に損害を与えてきた中国の経済慣行に引き続き懸念を持って注視していくと強調した。

中国の体制変化

中国の声明によると、バイデン大統領は中国の政治体制を尊重し、体制の変革を求めないと発言した。しかし、同内容はホワイトハウスの公式発表からは確認できない。

中国側はまた、「民主主義が権威主義に対抗する」ことは時代の潮流にそぐわないものであると指摘した。中国にも中国式の民主主義があるとし、米国はこの違いを認めなければならないと述べた。

米国の発表には、政治制度に関する内容がなかった。

人権問題

米国の声明によると、バイデン大統領は新疆やチベット、香港における中国共産党の行為や、より広範囲な人権事項について懸念を示した。

対する中国側は具体的事例の言及を避けた。習近平は「自由、民主主義、人権は人類共通の追求であり、中国共産党の一貫した追求である」と述べた。

ロシア・ウクライナ戦争

中国の声明によると、習近平はロシアのウクライナ侵攻について「中国は平和の側に立ち、双方が平和交渉のテーブルに戻ることを支持するとともに、欧米諸国がロシアと全面的な対話を行うことを期待する」と述べた。ロシアによる核兵器使用への反対に関する記述はなかった。

これに対し米国側は、両首脳が「核戦争は決して起こしてはならず、絶対に勝者はいないという共通認識を再確認し、ウクライナにおける核兵器の使用または核兵器による威嚇に反対する立場を強調した」と記した。

合意点も

双方は声明で、米中両国が戦略的なコミュニケーションを維持し、定期的な協議を行うべきであることに合意した。また、公衆衛生と食料安全保障に関する対話と協力を行うことで一致した。

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。