中国共産党は16日、第20回全国代表大会(党大会)を開幕する。最高指導部を構成する中央政治局常務委員の新人事が注目されており、また国内経済政策を担う首相職の候補者らに焦点が当てられている。
米CNBCはこのほど、最高指導部の新メンバーの顔ぶれから、党内における習近平陣営の政治的影響力の強弱を測れると指摘した。
共産党トップの習近平総書記(69)は「68歳以上なら退任」との慣例を破り、今回の党大会で3期目続投に踏み切る公算が大きい。現在、習氏は党の総書記のほかに、最高軍事指揮機関である党中央軍事委員会主席と国家主席を兼任している。党大会以降も、習氏は少なくとも「党総書記」と「中央軍事委員会主席」の2つの職は続けるとみられる。「国家主席」の座に留まり続けられるのかは、来年春の全国人民代表大会(全人代)会議で正式に決まるという。
いっぽう、現在党内序列2位の李克強・中央政治局常務委員兼首相(67)は今年3月の記者会見で、「今期限りで首相を退任する」と表明した。CNBCは、米金融大手JPモルガン・チェースのアナリストの話として、李克強氏は首相は退くが、中央政治局常務委員には留まるとの見方を示した。
中国の経済政策を決めるのは中央政治局メンバーで、過去10年間、李克強首相は経済政策の実行に努めてきた。李氏は外国企業のトップと会談し中国への投資を促しただけでなく、中共ウイルス(新型コロナ)が大流行してからは、国内企業の負担を減軽するために、法人税の減税などを主張したとCNBCは評価した。
JPモルガン・チェースの専門家は、中国の歴代首相の大半は副首相の経歴を持つと指摘し、李克強首相の後任は、現在副首相を務める韓正氏、胡春華氏、劉鶴氏と孫春蘭氏の中から選出されると推測。
シンクタンク、ブルッキングス研究所の中国問題専門家であるチェン・リ(Cheng Li)氏は今月4日、同研究所主催の討論会で「誰が首相になるにせよ、これは習近平氏の政治、政策の考えについてシグナルを送っているのだ」と話した。
リ氏は、韓正氏、胡春華氏、劉鶴氏のほかに、汪洋・現中央政治局常務委員兼全国人民政治協商会議全国委員会主席が、李克強氏の後任として首相に就任すると推測。
韓正氏は現職の中央政治局常務委員であり、政策の連続性のために韓氏が首相に任命される可能性が高い。また、共産主義青年団(共青団)出身の胡春華氏は胡錦涛前総書記と深いつながりがあり、胡氏を首相に抜てきすれば、習近平氏は指導部の「団結」をアピールできる。
1990年代に米ハーバード大学に留学した劉鶴氏は、米中貿易戦において中国代表団を率い、複数回にわたり米側と交渉を行った。バイデン現政権のイエレン財務長官とも会談を重ねてきた劉氏は、「国際的な知名度」で首相に任命される可能性がある。汪洋氏は2013~18年まで副首相を務め、市場志向で知られている。汪氏の首相就任は「抜本的な政策変更」を反映すると、リ氏は指摘した。
アジア・ソサエティ政策研究所(ASPI)の研究者は、習近平氏の側近である李強・上海市党委員会書記が首相に抜てきされるとの見解を示した。また、丁薛祥・中央政治局委員兼中央弁公庁主任、陳敏爾・中央政治局委員兼重慶市党委員会書記、黄坤明・中央政治局委員兼中央宣伝部部長も、首相候補者だとされている。
外交はどうなる…
また、外交トップである楊潔篪・中央政治局委員兼中央外事工作委員会弁公室主任(72)は党大会後に政界を退く見通しだ。
政治リスク分析を専門とするコンサルティング会社、ユーラシアグループの上級アナリスト、ニール・トマス(Neil Thomas)氏は、中国の台湾政策を担当している劉結一・国務院(内閣)台湾事務弁公室主任が、楊氏の後継者となり中国の外交トップに任命される可能性が高いとした。
64歳の劉氏は共産党中央台湾工作弁公室主任を兼任しており、中国の国連大使を務めたことがある。
トマス氏は、中国指導部が劉氏を起用すれば、「中国が今後グローバル・ガバナンスの改革と台湾独立派への抑止に外交的な焦点を当てることを示唆する」とした。
ユーラシアグループは、王毅外相も楊氏に次いで外交トップに就く可能性があるとしたが、王氏は今月69歳を迎えるため、共産党の年齢制限の対象になる。
また習近平氏自身の後継者について、米国の専門家は、指名は見送られるとの見方を示した。
(翻訳編集・張哲)
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