最近、米空軍特殊作戦コマンド(AFSOC)が、多くの国で使用されている戦術輸送機C-130をベースに、敵の防御態勢を撹乱する画期的な方法を開発しつつある。一つはC-130の水陸両用化計画、そしてもう一つは「ラピッド・ドラゴン」と呼ばれるもので、どちらもまだ実現されてはいないが、実現すれば敵側にとって非常にやっかいなものになる可能性がある。
輸送機の水陸両用化
AFSOCは2021年9月にアメリカ空軍研究所と共同で、C-130のAFSOC仕様機、MC-130Jを水陸両用機とする計画を進行させており、MC-130Jの機体下部に装着する取り外し可能なフロート(浮舟)の開発を進めている。
このフロートシステムはMC-130J側にわずかの改造を加えるだけで使用でき、素早くフロートを取り外し、陸上機に戻すことも可能だという。National Defense MagazineによるとAFSOCのジェームズ・スライフ司令官は先月20日、デジタルエンジニアリングと波浪水槽試験を通じて、MC-130Jの水陸両用機化計画が「実行可能であることが示された」と述べている。
このMC-130Jの水陸両用化について、AFSOCの科学・システム・技術・イノベーション部門の副チーフを務めるジョシュ・トランサム空軍大佐は「(MC-130Jに)水陸両用機能が付与されることで、空軍での侵入・浸透・要員回収のための配置や、アクセス性などに関する運用の幅がより一層広がるほか、紛争などにおいて強化された兵站支援能力を現場に提供できるようになる」と述べている。
またC-130プラットフォームの使用も示唆しており、日本で配備されているC-130Hもフロートを装着し水陸両用化する可能性もある。
最近、尖閣諸島周辺の我が国領海内への侵入が常態化している。滑走路の確保が難しい南西諸島などの島しょ部地域でも活躍が期待できるだろう。
輸送機を爆撃機に変える新システム「ラピッド・ドラゴン」
「ラピッド・ドラゴン」はミサイルセルをパレットごと投下し、ミサイルを射出させるもので、輸送機に爆撃機の攻撃能力をもたせるものだ。C-130の場合、長距離巡航ミサイルJASSM-ER(AGM-158)が6発搭載されたパレットを、2パレット、計12発搭載できる。因みに米軍の爆撃機B-1Bが搭載できるミサイルは24発だ。
またJASSM-ERは925 kmという非常に長い射程を持っており、乗員を危険に晒すことなく敵対空ミサイルの射程外から目標を攻撃できる。
もともと短距離離陸が可能なC-130輸送機は滑走路を選ばない。
このような形で輸送機を改造無しに攻撃機に換装することができれば、従来の攻撃機と爆撃機はより戦略的な任務に従事することができ、空対地攻撃において圧倒的な物量を手に入れることができるだろう。
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