豪、コオロギスナックを学校に導入 日本もガイドライン策定

2022/09/29
更新: 2022/09/29

気候変動による食料不足が問題視されるなか、オーストラリアの一部の学校では、食用昆虫会社「サークルハーベスト」のコオロギパウダーをまぶしたポテトチップスが提供されている。栄養価の高いコオロギは肉の代替品として注目を集める一方、オーストラリアでは昆虫食に関する規制が設けられていないため、安全上の懸念も上がる。

シドニー西部に拠点を置くサークルハーベストによると、すでに国内の1000校にポテトチップスを提供しており、2023年半ばまでにその数を6倍に増やす予定だ。ニューサウスウェールズ州やクイーンズランド州などの4州の学校で、50万パック以上が購入されているという。

同社は、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の2021年の報告書「食用昆虫:オーストラリアの新興産業の戦略的成長のためのロードマップ」のなかでも事例研究として紹介されている。オーストラリアの昆虫産業は、今後5年間で年間1000万豪ドル規模に成長すると予想されるなか、スタートアップとして早い段階から食用昆虫に力をいれる同社には期待が寄せられている。

いっぽうで、食用昆虫市場の成長を阻む主な要因は、消費者の意識にあるとCSIROは指摘する。

こうした指摘に対して、同社の創業者であり、昆虫学者でもあるスカイ・ブラックバーン氏は、ピーナッツバターや小麦粉、オレンジジュースには、すでに少量の昆虫成分を含むことが許可されていると主張。

英デイリー・テレグラフ誌の取材では、手軽に栄養を取得できる食品だとした上で「無意識のうちに、すでに昆虫を食べている」と述べ、固定観念を取り払うよう消費者に呼びかけた。

ブラックバーン氏によると、ポテトチップスの導入に向け、老人ホームとの連携も開始したという。

昆虫食にはリスクも

いっぽうで昆虫食に関しては、安全性確保などの課題が残る。オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(FSANZ)の広報担当者は、エポックタイムズ紙の取材に対してオーストラリアには「食用昆虫に対する特別な規制」がないと指摘。「昆虫のような異物が混入すると、食用に適さない可能性がある」と述べた。

ケニヤのジョモ・ケニヤッタ農工大学の研究員が発表した2020年の報告書によると、中国で食中毒により危篤状態に陥った18%が昆虫摂取によるものだった。ラオスでは、昆虫を含んだ食品を食べた8パーセント近くにアレルギー反応が現れたという。

その他、寄生虫などのリスクも潜んでいるとし、食用昆虫の利点と安全性の問題を比較検討する必要があると結論付けた。

日本もガイドライン策定

2013年に国連食糧農業機関(FAO)が食用昆虫の適切な規格と法的枠組みの確立を推進していくことを打ち出して以来、徐々に国際的な流れは変わってきている。

日本では、今年7月に大学や研究機関でつくる「昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム(iBPF)」がコオロギ生産ガイドラインを策定し、入手経路が明瞭であるコオロギを選択することや、病害虫などの発生を抑制するため低湿度で維持するよう求める衛生面などの指針を盛り込んだ。

実際、こうした「コオロギスナック」はコンビニなどで密かに流行りつつある。食用コオロギの販売に取り組む徳島大学発ベンチャーの「グリラス」は20日よりコオロギパウダーを使った新商品「C.TRIA(シートリア)コーンスナック」を順次、徳島県内のファミリーマート約80店舗にて販売を開始した。

2020年には、無印良品が「コオロギせんべい」を販売。店頭では入荷後すぐに売り切れるなど、「コオロギスナック」の火付け役となった。 

(翻訳編集・徳山忠之助)

オーストラリアのシドニーに拠点を置き、健康と科学に関するニュースを担当するレポーター。
関連特集: 社会問題(LIFE)