中国軍関連大学にサイバー攻撃?中国の批判に米専門家「違法性ない」

2022/09/07
更新: 2022/09/07

中国政府は5日、米国家安全保障局(NSA)が中国西安市の西北工業大学などに対してサイバー攻撃を行ったと批判した。米専門家らは、これが事実だとしても「違法性はない」との認識を示した。

中国国家コンピューターウイルス緊急処理センターとソフトウエア開発会社、奇虎360がそれぞれ発表した調査報告書では、米NSAが所管するサイバー戦情報収集組織TAO(Office of Tailored Access Operations)が中国国内のネットワークを標的に「悪意のあるサイバー攻撃を1万回以上行い」、「数多くのネットワーク設備をコントロールした」上、「140GBを上回る高い価値を持つデータを盗んだ」とした。

報告書は、6月に西北工業大学が海外からサイバー攻撃を受けたと明らかにした。米NSAの下部組織TAOが実施したものだという。NSAのサイバー対策部局の責任者であるロバート・ジョイス(Robert Joyce)氏がサイバー攻撃を指揮したとした。

西北工業大学は中国軍とのつながりが深く、中国工業情報省の管轄下にある。いわゆる「国防7校」の1校である。

中国は社会全体を使って情報窃盗

米政府は近年、中国政府が支持するハッカー集団による米政府機関や企業に対するサイバー攻撃、情報窃盗などの批判を強めている。これに対抗するためか、中国側も米情報機関による中国へのサイバー攻撃を主張し始めた。

米国防総省の元幹部で、現在ジョージ・ワシントン大学の講師であるトーマス・パーカー(Thomas Parker)氏は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、米中両国は互いに相手から国家安全保障に関する情報を得ようとしているとの見方を示した。

「国際関連法や慣例から、この行為自体は違法ではない」とパーカー氏は語った。

同氏は、米中双方の最大の違いは米政府が企業の知的財産権を窃取しないのに対し、中国政府は企業の技術情報を常に盗むことにあるとの見解を示した。

元情報当局者のニコラス・エフティミアデス(Nicholas Eftimiades)氏も同じ考えを示した。

「西側諸国は国家安全保障を守るために諜報活動を行っている。これに対して、中国共産党政権は、『社会全体』という手法で他国の技術情報、知的財産権、商業秘密などを盗む」

西北工業大学は無人機、自律型水中ロボット、弾道ミサイルなどの開発を行なっている。米商務省は2001年以降、安保上の懸念から同大学を禁輸措置対象リストに入れ、米企業から関連技術などの取得を制限した。

昨年9月、マサチューセッツ州ボストンの連邦地裁は、米国製のハイドロフォンを西北工業大学に不法に提供した罪に問われた中国人ビジネスマン、シューレン・チン(Shuren Qin)被告に対し、2年の禁固刑を言い渡した。

エフティミアデス氏は、自身が作成したスパイ事件の調査データベースに、西北工業大学が関与した米国での産業スパイ事件が4件あると示した。「中国の情報当局は国家権力を行使し、商業目的として情報を収集している。中国はこれらの情報を国内産業の確立に使い、最終的に産業全体を支配しようとしている」

米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は7月、中国政府の狙いは西側企業の知的財産権を「略奪」し、重要産業を支配することだと警告した。

長官は昨年、FBIの中国政府絡みの捜査案件は2000件以上に上り、「10時間」ごとに新たな事案が加わる状況にあると発言した。

NSAはVOAの取材に応じなかった。

エフティミアデス氏によると、現下の事案を公にしないのは米情報機関内部のルールだという。

「中国政府は病的な嘘つき。大声で頻繁に西側の諜報活動を批判して、西側諸国がすべての問題を引き起こしたと責任を押し付けている。一部の人はこれに騙されただろう」
 

張哲
張哲