「戦争の下準備」を進める中国共産党 専門家「米国は反撃の用意ができているのか」

2022/09/01
更新: 2022/08/31

米国の作家で中国専門家のゴードン・チャン氏は大紀元の取材に対し、中国共産党が戦争に向けた下準備を進めていると述べた。法改正を通して挙国体制の構築を目指すほか、欧米諸国の経済制裁への対策を講じていると指摘。「侵略の時期を見計らっている」と警鐘を鳴らした。

法整備で下地作り

チャン氏はまず、中国が2021年に施行した改正国防法に言及した。「新しい国防法では、文民で構成される国務院の軍事に関する一部の権限が奪われ、代わりに人民解放軍の指導機関である中央軍事委員会に付与された」とチャン氏。「これは軍の意思決定を一元化する狙いがあるほか、国家の動員体制に関連する部分からは、国民を戦争に駆り出そうとする中共の意思が伺える」

同法には、利益が脅かされた場合に中国共産党中央軍事委員会が軍民を総動員できるほか、共産党への忠誠を義務化する内容が盛り込まれている。

チャン氏はまた、中国共産党が党幹部の海外資産の保有を禁じることで、戦争時の国際的な制裁に備えているとも指摘した。「中国政府高官とその家族が海外資産を保有していなければ、外国はその資産を剥奪することはできない」

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国共産党は5月、経済制裁の対象になった場合「足を引っ張りかねない」ことを懸念し、党幹部の配偶者や子どもを対象に外国株や外国の不動産などの保有を禁じる通達を出している。

米海軍所有のF35B戦闘機。2018年2月撮影(Cpl. Francisco J. Diaz Jr./U.S. Marine Corps via Getty Images)
 

人民戦争を遂行する

中国軍はペロシ米下院議長の台湾訪問を受け、大規模な軍事演習を実施した。インドとは国境をめぐって緊張が続いているほか、南シナ海ではフィリピンと領有権問題で対立が続くなど、周辺国とは緊迫状態にある。

「中国は台湾のみならず、近隣諸国を脅威にさらしている」「中国は怒りから戦争を起こすのではない。隙を見てチャンスがあると判断すれば、行動に移すのだ」

チャン氏によると、地域覇権をめぐる争い以外にも、中国共産党が国際的な「人民戦争」を引き起こす脅威も存在している。

人民戦争とは、軍民の区別なく戦争に総動員する毛沢東思想の一部。チャン氏によると、現在の中国共産党指導部は人民戦争理論を海外の中国人コミュニティと融合させ、共産党の利益を促進しようとしている。「中国当局は、すべての中国人は同じ血筋を引いているため、共産党を支持する義務があるという『血のつながり』論を唱えている」

米国は準備ができているのか

中国共産党は何十年もの間、海外で支持者や代理人を育成し、現地の中国人コミュニティに浸透し続けてきた。対照的に、米国は中国共産党との戦いに全く準備が整っていないとチャン氏は指摘する。バイデン政権は未だ中国共産党を敵対勢力として認識していないのだ。

「バイデン大統領は、中国共産党が中国社会を動員していることに気づいていないような印象を与える」とチャン氏。「中国を『敵対的国家』とも呼ばないし、『敵』という言葉も使わない」

「中国が今何をしているのか、バイデン氏は米国民に伝えなければならない。そして戦争に備えなければならないことも。軍隊には、戦いの準備をするよう指示しなければならい」と述べた。

対話は長らく米中間の問題解決の有効な方法だったが、今日の中国軍は20年前と比べ物にならないほど強化されている。中国共産党は「持続可能な戦争に対処するために社会全体の準備を進めている」とチャン氏。「中国は今までに類を見ないほどに戦闘態勢を整えている」

(翻訳編集・山中蓮夏)

エポックタイムズ特派員。専門は安全保障と軍事。ノリッジ大学で軍事史の修士号を取得。