防衛省は、敵国が捏造した動画や虚偽情報を流布して有利な状況を生み出そうとする「情報戦」の拡大を受け、来年度から新しく「認知領域」を防衛領域に加える方針だ。専門家は、中国共産党の認知戦に対応するノウハウを蓄積してきた台湾との連携が有効だと指摘する。
複数の政府関係者は、防衛省が情報戦分野を強化する方針を固めたと明らかにした。産経新聞が16日付で報じた。防衛省は2023年度から予算を増強し、自国に不利となるような偽情報を収集、分析し、自国に有利な正しい情報を発信する体制を整えていくとしている。
防衛省は今年4月、「グローバル戦略情報官」を新設した。政治、経済、軍事などで横断的な情報収集、分析を行い、他国による戦略的な情報発信、フェイクニュースの拡散などに対応することが期待されている。
台湾のノウハウを生かすべき=専門家
「防衛省と自衛隊はロシアと中国の偽情報を特に注視している」と、日本大学危機管理学部の小谷賢教授はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に答えた。日本ではロシアによるウクライナ侵攻時、多くの偽情報が出回り、危機感が高まったためだ。
いっぽう、防衛省が取り組む認知領域は厳密には偽情報への対処であり、中国軍が仕掛ける認知戦とは異なるとも指摘した。
オーストリア・モナシュ大学の張耀中(チョウ・ヨウチュウ)教授によれば、認知戦とは情報の拡散によって相手の社会を分断し、政府への不信感を煽る作戦だ。社会の混乱を招く「心理戦」は、認知戦のなかで常套手段として用いられるという。
中国共産党による突発的な認知戦に対処してきた台湾は、そのノウハウを蓄積している。張耀中氏は、日本を含む多くの民主主義国にとって台湾の経験は強力な助けになるだろうと述べた。
今後は日米、米台関係の強化から間接的に日台連携を深めるほか、日台NGO間の協力などを通じて台湾の偽情報対応の経験を共有できると語った。
(翻訳編集・王天雨)
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