広西省政府、一人っ子政策違反の赤ちゃんを転売の疑い「社会的調整だ」

2022/07/06
更新: 2022/07/06

広西チワン族自治区の全州県で当局がこのほど、1990年代に一人っ子政策に違反したとして、地元女性住民の7人目の赤ちゃんを連れ去ったことを認め、ネット上で騒然となった。

女性住民は夫とともに最近、地元政府の幹部が「子どもの人身売買に関わった」として警察当局に捜査を行うよう陳情を行った。

中国のSNS上で5日、同県衛生健康局が作成した「陳情不受理通知書」が拡散し、炎上した。通知書は、赤ちゃんを連れ去ったのは「社会的な調整を行ったためだ」とし、問題がないとの考えを示した。

「1990年代に『人口を抑え、人口の質を向上させる』という政策を厳しく執行した」とし、「一人っ子政策に違反して出産した複数の子どもから、社会的調節の対象として1人を選んだ」と説明。「政府が県内の一人っ子政策の厳しい状況を踏まえて行った決定だ」と主張した。

「子どもの人身売買という問題は存在しない」と女性の陳情を受理しないことを決めた。

連れ去られた赤ちゃんのその後について、記録を残していないため、所在は不明だという。

赤ちゃんが他の家族に養子として引き取られたのか、それとも人身売買の犯罪グループに渡ったのかは不明だという。

当時、女性は違反取り締まりから逃げるために、旅館に身を隠していた。「5人の男女が突然、部屋に押し入り、赤ちゃんを無理やり取り上げた」という。

ネット上では、「当局が子どもをモノとして扱い、道徳に反している」「強盗行為だ」「人を騙す人身売買の犯罪者よりもひどい」「人身売買を正当化している」と批判が殺到した。

中国メディアによると、法学者らは、当時の一人っ子政策では地方政府が違反者に罰金などを徴収する権限はあったが、子どもを連れ去り「社会的調整を行う」権限はなかったとした。

同様の事件は他省でも確認されている。中国メディアの「財新」と「中国青年報」は2011年と14年、湖南省邵陽市と四川省達州市の地方政府が赤ちゃんを取り上げた事件を報道した。

中国政府は人口の増加を抑制するために、1970年代から厳格な「一人っ子政策」を導入し、1組の夫婦につき子どもを1人に制限した。

ただ、36年間続いた「一人っ子政策」は無数の悲劇を生んだ。2013年の中国衛生省の発表によると、1971年以来、中絶件数は3億3600万件、不妊手術が1億9600万件、避妊具の挿入は4億300万件にのぼる。妊娠後期の妊婦も中絶させられ、堕胎した胎児は生きている場合もあった。
 

張哲
張哲
関連特集: 中国