西側の対中関与政策、なぜ失敗 その原因と解決策を探る(1)=アーロン・フリードバーグ氏

2022/05/06
更新: 2023/11/26

米プリンストン大学の政治・国際問題専攻のアーロン・フリードバーグ教授は米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の最近のインタビューで、過去の対中「関与」政策が失敗したのは、米国など西側先進諸国が中国を読み違えたからだと指摘した。同氏は新しい戦略で、経済分野を含めて中国との関わりを減らすべきだと助言した。

米国が長年、対中関与政策を続けた結果、中国は経済、軍事の両面で最大の脅威となり、対中政策の見直しを迫られている。トランプ前政権は関係強化を追求する「関与」から、覇権を争う「競争」に転換した。

フリードバーグ氏は、新著『中国を読み違える(Getting China Wrong)』で対中関与政策の失敗の主な原因について、米国と西側諸国が中国のマルクス・レーニン主義体制の本質を見抜けず、「中国共産党の適応力、機智、冷酷さを過小評価し、政治支配に対する固い決意と、国際社会に対する野望に気づかなかった」と指摘した。

同氏は、西側民主主義国家と中国共産党政権との間に安定的で実りある関係を築くのは難しいとみている。著書では 「中国共産党のレーニン主義的なゼロサム(一方の利益が100%相手の損失に由来すること)的な政治観、その長年の野心、欧米に対する根深い敵意、そして今では持続的成長への自信、これらすべての要素が相まって、少なくとも当分の間は真の『平和共存』は不可能だ」と分析した。

フリードバーグ氏は、中国に対してより厳しい政策をとることを提言した。「戦争のリスクを高めるどころか、むしろそのようなリスクを減らすことになる」と持論を展開した。 同氏は「今後5~10年の間の最大の懸念事項は、米国や西側諸国の対中政策が中国を怒らせることではなく、我々の取り組みが不十分なため、中国の指導者は武力で現状を変えることができると思い上がってしまうことだ」と述べた。

以下は、インタビューの抜粋である。

ーー著書のタイトルは『中国を読み違える』。 私たちは中国をどう読み違えてきたのか。

「米国や他の民主主義国の政策立案者の一番の間違い(誤解)は、中国共産党の政治権力を独り占めする強い執着心と決意を過小評価していることだ。 欧米諸国はかつて、中国との関わり特に中国との経済的な関わりは、中国の経済システム、ひいては中国の政治体制を徐々に変えることができると思い込んでいた。しかし、中国共産党政権は決してそういうふうにさせない。欧米諸国も今そのことに気づいた」

ーー中国の内政と外交が変化しているのは、権力を一元化し、長期・終身支配を目指す現指導者・習近平氏のせいであり、胡錦濤や江沢民の時代を擁護する声が増えている。このことについて、どう思うか。

「共産党政権の圧政、権力の集中、重商主義的な経済政策の拡大、より強硬な姿勢を見せる外交政策など、内政と外交は悪化している。しかし、これらの傾向はすべて習近平氏が政権を取る前、胡錦濤氏の2期目後半から現れはじめた。

こうした状況は、中国共産党の性質や当初の目標と一致するものだ。習近平氏は党創設当初の目標から大きく外れてはいない。同氏は中国の政治を党創設者の望み通りに機能させ、目標達成のために非常に努力してきたと思う」

ーー著書の中で、習近平氏を「復古主義者」と称している。 これは、最高指導者個人の問題ではなく、体制的な問題だという意味合いなのか。

「そうです。その体制は、マルクス・レーニン主義的な政治体制であることが最も重要なポイントだと思う。すべての権力を掌握し、経済、社会、政治のあらゆる領域を完全に支配し、しかも永遠に続くことを目指している。

今の習近平氏のやり方は最終的に中国を弱体化させ、望まない結果を招きかねない」

ーー中国が自由民主主義の大国にならなかった今、米国は次に何をすべきなのか。 デカップリング(切り離し)は可能か、現実的か。今後、どのような戦略をとっていくべきか。

「まず、米国をはじめとする民主主義国家は、これまでの政策の失敗を認め、少なくとも現段階では、中国の政治体制の変化にほとんど影響を与えることができなかったと認めるべきだ。実際、中国はその逆の方向に向かっている。

その次に、我々の短期的な目標は防衛目的でなければならない。我々は中国に社会と経済を開放したが、中国はそれを利用して我々を不利な立場に追い込んだ。挽回措置をとる必要がある。また、我々は軍事的な立場を強化し、同盟国や友好国と協力して、インド太平洋地域における有利なパワーバランスを維持し、軍事力を拡大する中国を抑止する必要がある…我々はここ数年、すでに行動を起こしているが、まだまだ不十分だ。

中国の外交政策は、政権の性質を反映したものであり、習近平氏であろう。ほかの誰かが政権を握るにしても、これらの政策が大きく変わるとは思えない。今後しばらくは、非常に強硬で、非常に扱いにくい中国に直面することになると思う」

(続く)

叶子静

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
叶子静
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