英国政府が中国企業による英半導体受託製造最大手、ニューポート・ウエハー・ファブ(Newport Wafer Fab,NWF)の買収を「密かに承認した」という。米政治専門サイトのポリティコがこのほど報じた。
スティーブン・ラブグローブ英国家安全保障担当首相補佐官が6カ月以上にわたって調査を行い、売却を阻止するほどの国家安全上の懸念はないと結論付けた。この結論を受け、政府はこの買収に介入しないことを決めたという。
いっぽう、英政府や中国企業ネクスペリア(Nexperia)社は報道を否定した。
「目先の利益のために未来を犠牲にしてはならない」
英下院外交委員会のトマス・タジェンダット委員長は5日、「外交委員会は1年以上前からこの買収案を見守って来た」とし、懸念を表明した。
「国家安全保障投資法は施行から3カ月経過したが、一度も適用されたことはない」と指摘した。
英国では今年1月、国家安全保障を脅かす可能性のある産業等に対する出資を規制する「国家安全保障・投資法(The National Security and Investment Act)」が施行された。
タジェンダット氏は「目先の利益のために将来的な安定を犠牲にしてはならない」と訴え、「法的手段を用いてこの買収案を見直すよう」政府に要請した。
「戦略的産業の支配権を中国から奪い返さねば」
中国半導体メーカー、聞泰科技(Wingtech、ウィンテック)の100%子会社である蘭ネクスペリアは昨年、英政府の国防関連プロジェクトに関わるNWFを6300万ポンド(約95億円)で買収しようとした。
当初、クワルテング英産業戦略相は買収を承認したが、政界では先端技術を持つ英国の半導体開発生産大手が中国企業の傘下に入れば、経済および国家安全保障上に重大な問題が生じるとの懸念が強まった。
これを受けて、ジョンソン英首相は国家安全保障上の理由で、ラブグローブ卿に買収案を審査するよう指示した。
英紙デイリー・テレグラフは昨年7月、英政府はすでに買収後のNWFへの政府資金提供を停止したと報じた。
対中強硬派として知られ、中国政府の制裁対象にもなっている英保守党のイアン・ダンカンスミス(Iain Duncan Smith)元党首は「目先のことだけで我が国の重要なインフラ製造工場を売却すれば、我々は北京に依存せざるを得なくなる」とし、「我々は戦略的産業への支配権を中国から奪い返さなければならない」と指摘した。
首相官邸は国家安全保障評価についてコメントしないとした。産業資源部の関係者は「国家安全保障上の懸念がある場合、国家安全保障・投資法に基づいて介入する権利を留保する」 と述べた。
(翻訳編集・李凌)
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