IT大手各社が相次ぐリストラ アリババは数万人規模 専門家「中国当局の政策招いた結果」

2022/04/02
更新: 2022/04/04

中国の騰訊控股(テンセント)などIT大手各社は大規模な人員削減を進めている。中国政府によるプラットフォーム企業への締め付けが進むなか、事業再編を迫られていることが背景だ。いっぽう、政府は雇用の安定を最優先課題として掲げている。専門家は大規模なリストラが政府にとって「大打撃」になるとの見方を示した。

中国メディア「中国基金報」28日付は、ネット通販大手の京東商城(JD.com) の社員の話として、同社は複数の事業で人員削減を進めていると報じた。10~30%の社員が対象になるという。

情報筋は同月中旬、ロイター通信の取材に対し、アリババ集団とテンセントは今年、数万人規模の人員削減をそれぞれ計画していると話した。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)同月の報道では、配車大手の滴滴出行は社員2000人に退職勧告する計画だ。

3月下旬、中国SNS微博(ウェイボー)では「京東、人員削減」「アリババ、人員削減」「テンセント、人員削減」が検索ランキングの上位に入るなど、市民は高い関心を示している。

中国IT業界の就職サイト、拉勾網(lagou)によると、3月にすでに276万人の登録者のステータスが「離職」となった。昨年12月と比べて26万人増。昨年同月比では約6万人増えたという。失業者の大半は北京市、深セン市、広州市と上海市に集中している。

工場労働者の減少に歯止めをかけようとする当局

英ロンドン大学アジア・アフリカ学院の中国問題専門家、ジョージ・マグナス(George Magnus)氏は米CNNに対し、中国IT業界の大規模なリストラは、雇用の安定を優先課題に掲げた中国政府にとって「大きな打撃になる」と指摘した。

3月初め、李克強首相は北京市で開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、「社会・経済の安定を最優先する」方針を示したばかり。

中国政府はプラットフォーム企業への締め付けを強化している。2020年11月、アリババ集団傘下の金融会社、アント・グループの上海と香港両市場での新規株式上場(IPO)計画を中止に追い込んだ後、IT、金融、エンターテインメント、学習塾など各分野に対して締め付けを強化した。当局は昨年、独占禁止法に違反したとして、アリババ集団などに巨額の罰金を科した。

中国政府の公表では、パートタイム従業員も含めて約2億人の国民がIT業や通信業、ネットサービス業などで働いている。

労働人口がネットサービス業に流れている現状に政府は危機感を募らせている。中国政府の資料によると、20年に製造業の不足人口は2200万人に達し、最近の5年間、毎年150万人ペースで減少しているという。25年までに3000万人の不足が生じるという。

在米経済学者の程暁農氏は昨年8月の記事で、当局による企業への締め付けについて「米中対立を制するため、中国当局は空洞化する製造業の立て直しが不可欠だと認識し、労働人口をネット企業から製造業に誘導しようとしている」と分析した。

ただ、待遇の低さと勤務時間の長さで、若者は製造業に就職する意欲が低い。国家統計局によると、20年の工場労働者の収入はウーバーイーツの配達員の収入より2〜5割低いという。

恣意的な政策変更は外国企業の撤退にもつながる。マグヌス氏はCNNに対し、当局の政策こそ経済と雇用に不安定さをもたらした、と述べた。

(翻訳編集・張哲)