米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)とスタンフォード大学の中国経済・制度研究センター(SCCEI)がこのほど合同で発表した調査報告書は、エリート層を含む中国国内の多くの国民は、中国共産党政権について多様な見解を持ち、当局の政策を常に支持しているわけではないとの見方を示した。
CSISはウェブサイト上で、SCCEIとの共同調査報告書「中国世論:沈黙するリベラルな多数派か(PUBLIC OPINION IN CHINA: A LIBERAL SILENT MAJORITY?)」を公表した。
報告書は、中国では比較的裕福で、高水準の教育を受けた中国人は政治的にリベラルで、市場(経済)を支持し、愛国主義的な主張を持っていない可能性が高いと指摘した。
報告書は「これは中国が民主化に向かっていることを示すものではない」としたが、「(調査で得た)これらのデータは、中国当局が、当局と異なる自国民のイデオロギー的な見解と戦わなければならず、政策を推進する際に、たとえ静かであっても、国民の大きな反対に直面しているという状況を反映した」と示した。
調査では、中国人は個人の権利と政治的自由について、既存の政策や当局の宣伝と必ずしも一致しておらず、様々な意見を持っている。回答者の大多数は、中国当局は国民に対して、子どもを持つべきか、あるいは何人の子どもを産むべきかという問題に干渉してはならないと考えている。また、大半の回答者は、たとえ社会的な不安定につながるとしても、言論の自由を認めるべきだと示した。
アンケートに答えた参加者の多くは、より質の高い医療サービスを受けるために、高い料金を支払っても構わないと考えている。中国の医療機関の大半は国営である。回答者の多くは、国民がより良い医療ケアを受けられるように、中国当局は民間の医療サービスを許可すべきだと指摘した。報告書は、この医療サービス分野で浮き彫りにされた「不平等」の問題は、習近平政権が掲げる「共同富裕」政策に反していると批判した。
回答者らは、中国当局は国有企業への補助金を減らし、民間企業に対して減税措置を講じるべきだと主張。また、公平な競争の場を望み、公権力ではなく、市場でのパフォーマンスが企業の成功を決定すべきだとの考えを示した。
外交政策に関して、中国国内では愛国主義的感情が広まっている一方で、多くの人は戦争を望んでいないことがわかった。大半の回答者は、中国当局が南シナ海で軍事的な存在感を維持、または拡大することに賛成した。しかし、戦争を代価とする軍拡を支持する者は少ない。
「中国人は一般的に愛国主義的な主張に同意するが、実際の戦争への発展には反対することを示唆した」と報告書は指摘。
報告書は、高収入・高学歴の中国人は、低収入・低学歴の人と比べて、よりリベラルで、市場経済を支持し、ナショナリズムの主張が少ないとした。中国社会に「沈黙する過半数のリベラル派」が存在するため、習近平政権は政策の立案や実施で大きな圧力を受けていると報告書は推測した。また、中国のエリート層と中間層がリベラルであることから、米政府は対中政策を考案する際、これらの「潜在的な共感者がどう受け止めるか」を検討しなければならないと報告は提案した。
中国人政治学者の呉強氏は12日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、同報告書の見解と同じ認識を示した。同氏は、中国当局は過去10年間、「沈黙する多数派」を徹底的に排除してきたと批判した。
「当局は国内の独立系メディアを取り締まり、知識人を粛清し、SNSの微博(ウェイボー)と微信(ウィーチャット)を含むネット上で監視・検閲を強化してきた。その結果、真実を反映しない偽物の世論が形成された。今、微博などでリベラルの見解や真実を語る人はほとんどいない」
(翻訳編集・張哲)
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