中国の拘束記者数は3年連続で世界最多

2022/01/15
更新: 2022/01/15

報道の自由を擁護する非政府組織(NGO)2団体が最近発表した報告書によると、拘束記者数が世界で最多を記録しているのが中国である。 

国境なき記者団(RSF)がまとめた年次報告書では、2021年12月1日時点で中国が拘束した記者数は127人で世界で最悪の数である。

12月14日に報告書を発表した国境なき記者団は、中国の拘束記者数は2019年、2020年を含め3年連続で世界最多になったことを指摘している。 

同組織が発表したところでは、世界で拘束下にある記者数は2021年に過去最高の488人を記録している。 

ジャーナリスト保護委員会(CPJ)が12月9日に発表した報告書でも、2021年に拘束記者数が世界最多であった国として中国が挙げられており、世界で拘束されている報道関係者数は6年連続で過去最多を記録していることが示されている。 

両報告書によると、2021年の拘束記者数が昨年比約20%増となった理由には、主にベラルーシ、香港、ビルマにおける政府の報道弾圧がその背景にあり、 特に中国の場合は、香港で施行された国家安全法(香港国家安全維持法)による取り締まりのために香港での拘束者数が増加したと考えられている。

国境なき記者団による関連報告書は、同法を名目として少なくとも12人の記者(ジャーナリスト)と報道の自由の擁護者が弾圧されたと指摘している。これには、廃刊に追い込まれた蘋果日報を創業したメディア王の黎智英代表も含まれる。黎代表者は実刑判決を受け、今後終身刑に処せられる可能性もある。

国境なき記者団の報告書によると、2021年2月1日の軍事クーデター後に取り締まりが強化されたビルマの拘束記者数は53人で、2番目に拘束者の多い国として同国が浮上した。3番目は拘束記者数25人のエジプトである。

ジャーナリスト保護委員会が報告書で指摘したところでは、多くの報道機関が懲罰の対象となる可能性を恐れて自社のフリーランサーや情報発信者、また非所属の記者を特定することを警戒していることから、実際にビルマで拘束されている記者数は調査結果よりも多い可能性がある。 

同組織の報告書では、世界の拘束記者数は293人となっている。数値が国境なき記者団の報告書と異なるのは、前者の報告書には市民記者や報道の補佐的役割を担う人員が含まれていないためである。 

同組織は2021年に24人の記者が死亡し、そのうち19人が取材活動に対する報復として殺害されたと発表している。国境なき記者団が発表した死者数は合計で48人である。 国境なき記者団が2021年12月7日に発表した別の報告書には、中国で拘束された127人の記者のうち71人がウイグル人であると記されている。

 専門家等の見解によると、同調査結果により中国の記者拘束は報道の自由の抑圧を目的とした独裁的措置であるだけでなく、大量拘禁や強制労働、また他の人権侵害を通じてウイグル族や他のイスラム教徒少数派を弾圧する計画の一端でもあることが暗に考えられる。 

国境なき記者団が以前に発表した「The Great Leap Backwards of Journalism in China(仮訳:中国におけるジャーナリズムの大後退)」と題する報告書には、近年、中国政権がジャーナリズムと情報開示権に対して世界で異例の抑圧対策を展開している事実が記されている。

 中国で多数の記者が拘束されているという現状は、2月に開催される北京2022年冬季オリンピックに世界各国から集まる報道関係者も拘束の危険に曝されることになり、同大会の好ましい宣伝要素にはなり得ないと、専門家等は主張している。 

国境なき記者団の報告書によると、中国は中華人民共和国国家安全法を名目として分離主義、政治的な転覆、外国勢力との結託、テロといった曖昧な規定に基づき報道関係者を拘束することができる。 

同報告書には、「『微妙』な事象や話題を調査する、または検閲対象の情報を公開するといった単純な行為に従事しただけで何年も投獄される可能性があり、不衛生な刑務所での虐待により死に至る場合もある」と記されている。2020年、中国は中華人民共和国国家安全法と同様の国家安全法を香港でも施行した。 

また、中国では外国人報道関係者は歓迎されないと指摘した同報告書には、「監視や記者証の取り消しといった外国人記者への威嚇により、2020年には18人の報道関係者が中国からの出国を余儀なくされた。桂民海氏、楊恒均氏、成蕾氏という3人の中国系外国人ジャーナリストは現在、スパイ容疑で拘束されている」と記されている。

 国境なき記者団の2021年度「世界報道自由度ランキング」では、中国は180ヵ国中第177位に位置付けられた。この2つ下には最下位から2番目の北朝鮮が顔を揃えている。20年前に第18位の評価を受けた香港は第80位に下落した。